2 民間の役割
(1) 企業の役割
公害防止装置を始めとする環境保全技術の多くは、政府の規制・指導、国民の意識の高まり等に対応して民間企業によって開発されてきたものであり、技術移転においては、途上国への直接投資等、民間企業も大きな役割を果たしている。海外進出企業の4割余りが人材派遣等により技術移転に努めているとし、半数近くが環境対策に関する情報を進出先の地域に提供している(環境庁調査)とされるが、地球サミットにおいて技術移転が求められ、また、我が国の貢献への期待がますます強まる中、民間による環境保全技術移転をさらに促進することが課題になっている。
(2) 民間団体の役割
途上国との協力の推進や、国際協力の重要性の普及啓発において、民間団体の果たしている役割も大きい。平成3年(1991年)度に各界の横断的な組織として設立された地球環境日本委員会においては、開発途上国等との国際交流が任務の一つとして挙げられている。また、(財)国際環境技術移転研究センター、(財)国際湖沼環境委員会、(社)海外環境協力センター、(財)オイスカ産業開発協力団等の公益法人や、日本国際ボランティアセンター、曹洞宗ボランティア会等の任意団体では、政府レベルから草の根レベルまでの環境保全プロジェクトの実施、環境協力に係るシンポジウム、講演会、セミナーの開催等により、国際環境協力の推進に取り組んでいる。そのほかにも多数の団体が、国際環境協力に精力的に貢献している。これらの活動は、外務省のNGO補助金、郵政省の「国際ボランティア貯金」等による民間団体への支援が行われていることや国民の関心の高まりにつれ、ますます活発となってきている。
(3) 自然保護債務スワップ
自然保護債務スワップ(DNS)は、回収が難しくなっている開発途上国の債権を民間環境団体(国際的NGO)が買い取った上、債務国と交渉し、債務返済を求める代わりにその政府に自国通貨で熱帯林の保全などの自然保護対策を実行してもらうというものである。DNSは、ここ2、3年先進国首脳会議等の国際会議においても大きく注目されるようになり、地球サミットで合意されたアジェンダ21においても、革新的資金調達手段のひとつとして位置付けられている。
我が国においては(株)東京銀行の米国現地法人と(株)第一勧業銀行がフィリピンやガラパゴス諸島の自然保護のためのDNSを決定し、さらにDNSの円滑な推進等を目的として、自然保護債務スワップ情報ネットワークが(社)海外環境協力センターにより整備された。
こうした一連の動きを受けて、4年度には我が国の経済団体、民間企業、銀行、国内環境NGOの中でDNSに具体的に取り組む動きがさらに進展した。