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第2節 

3 消費活動から発生する環境負荷への生産活動の影響

 これまで、生産活動から直接に発生する環境負荷について見てきたが、次に、消費活動から発生する負荷と生産活動との関係を考えてみる。第1節では、生産、流通段階からの環境負荷も消費活動により誘発されている面があること、したがって、消費者は生産等の段階で発生する負荷についても配慮する必要があることを説明した。しかし、視点を変えれば、逆に、消費生活から発生する環境負荷は、生産活動のあり方に強く影響されている。
 消費活動からは、様々な製品やサービスの消費に伴い、直接に多様な環境負荷が発生しているが、その製品等を消費するか否か、また、どの製品等を選択するかの最終的な決定権を握っていると言われているのは消費者である。しかし、こうした製品等の選択の幅は、市場に出回っているものの範囲内に限られており、その上、消費の意志決定は生産者側から広告等により与えられる情報にも影響されている。この意味で、直接には消費活動から排出される負荷についても、生産活動は密接に関連している。
 例えば、消費者からごみとして出される各種の家電製品などは、大きく、処理困難なことから問題となっているが、これは、分解やリサイクルがされにくいような形で生産されていることが原因の一つとなっている。また、消費者が自動車に乗ることで窒素酸化物や二酸化炭素などの大気環境への負荷が発生しているが、例えば、二酸化炭素の発生量は燃費などの自動車の性質により決まる部分が小さくなく、さらに、消費者がどのような性質の自動車を購入するかは、品揃えや広告にも影響されている。この他、例えば、プラスチックなどの処理が困難な素材による使い捨ての容器・包装材、ラミネート紙などリサイクルしにくい複合素材の製品、バージンパルプ製品など再生資源ではなく処女資源を使用した製品など、環境への負荷がより小さい代替品がある場合でも負荷の大きな製品が広く消費されている場合がある。この原因としては、便利さや清潔感など、環境とは関係のない利点を重視して消費者が選択していることもあるが、また、そうした製品が広く生産され、消費者の目につく形で販売されていることも無関係ではない。
 このように、直接的には消費活動から排出される負荷についても、生産活動は密接な関連を持っている。こうした問題についても、生産者が責任と役割を適切に分担して、消費者から円滑な協力を得つつ環境負荷の低減に努めることが求められている。

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