前のページ 次のページ

第4節 

2 民間の役割

(1) 企業等の役割
 公害防止装置をはじめとする環境保全技術の多くは、政府の規制・指導、国民の意識の高まり等に対応して民間企業によって開発されてきたものであり、技術移転においては、途上国への直接投資等、民間企業も大きな役割を果たしている。そのため、我が国の貢献への期待がますます強まる中、いかにして民間による環境保全技術移転を進めるかが課題になっている。
(2) 民間団体の役割
 途上国との協力の推進や、国際協力の重要性の普及啓発において、民間団体の果たしている役割も大きい。平成3年度に各界の横断的な組織として設立された地球環境日本委員会においては、開発途上国等との国際交流が任務の一つとしてあげられている。また、(財)国際環境技術移転センター、(財)国際湖沼環境委員会、(社)海外環境協力センター、(財)オイスカ産業開発協力団等の公益法人や、日本国際ボランティアセンター、曹洞宗ボランティア会等の任意団体では、政府レベルから草の根レベルまでの環境保全プロジェクトの実施、環境協力に係るシンポジウム、講演会、セミナーの開催等により、国際環境協力の推進に取り組んでいる。そのほかにも多数の団体が、国際環境協力に精力的に貢献している。これらの活動は、国民の地球環境問題への関心の高まりにつれ、ますます活発となってきている。
(3) 自然保護債務スワップ
 自然保護債務スワップ(DNS)は、回収が難しくなっている開発途上国の債権を民間環境団体(国際的NGO)が買い取った上、債務国と交渉し、債務返済を求める代わりにその政府に自国通貨で熱帯林の保全などの自然保護対策を実行してもらうという方法である。民間主導による地球環境保全のための財源調達とプロジェクト推進の手段であり、我が国においても国際環境協力の有力な方法の一つであるといえる。この方法は、ここ2、3年国際会議においても大きく注目されるようになり、先進国首脳会議等の重要な国際会議においてもDNSの推進についてうたわれているところである。
 環境庁は、平成3年6月DNSに関する報告書をとりまとめ、国際的な環境NGOのこれまでの取り組みを研究し、我が国としてDNSに取り組んでいく際の課題等を提示した。これとほぼ同時期、同年7月、(株)東京銀行の米国現地法人が世界自然保護基金米国委員会と100万米ドル相当のDNS契約を結び、我が国としてDNS第1号を実施している。また、4年3月には?第一勧業銀行が100万米ドルの債権を世界自然保護基金日本委員会(WWF-J)に寄附し、ガラパゴス諸島の自然保護プロジェクトなどに充てることを決定した。これは、日本めNGOとして初めてのスワップヘの参画となる。
 さらに10月、DNSの我が国における円滑な推進等を目的として、自然環境債務スワップ情報ネットワークが(社)海外環境協力センターにより整備されることとなった。
 これ以降、我が国の経済団体、民間企業、銀行、国内環境NGOの中でDNSに大変関心が高まり、具体的に取り組んでみようとする気運がみられる。

前のページ 次のページ