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第1節 

8 砂漠化の防止

(1) 問題の概要
 砂漠化とは、UNEPが1990年2月に改めて採択した定義によると、「乾燥地域、半乾燥地域及び乾燥した半湿潤地域において人間活動による悪影響に起因する土地の質の低下」であり、質の低下とは、降雨による土壌の流出や河床への堆積、長期間をかけた自然植生の多様性の減少等、土地に作用する一または複数のプロセスによる潜在的資源の減少をいう。
 砂漠化の原因としては、草地の再生能力を超えた家畜の放牧や休耕期間の短縮等による地力の低下、薪炭材の過剰な採取、不適切な灌漑に起因する農地の塩分濃度の上昇等がその主要な原因と考えられる。その背景には、開発途上国の地域住民の貧困と人口増加のような社会的、経済的要因があり、砂漠化の問題をより複雑にしている。
 砂漠化に関する取組としては、1968年に始まったアフリカのサハラ南縁サヘル地帯の干ばつを契機として、1977年に国連環境計画(UNEP)が中心となり、国連砂漠化防止会議(UNCOD)が開催された。さらに1984年の国連の調査結果では、毎年600万ヘクタール(九州と四国の合計の面積に相当)の割合で砂漠化が進行していることなど、その世界的な状況が明らかにされた。
 また、1991年のUNEPの砂漠化の現状等に関する調査によれば、新しい定義での砂漠化が進行しつつある地域は、乾燥地域の約70%、約36億ヘクタールに達する。
(2) 対策
 我が国では、主として植林や乾燥地農業の観点から取り組みが行われている。政府レベルでは、西アフリカのニジェール河流域における砂漠化に対処するための水資源開発等の調査や中国タクラマカン砂漠周辺における砂漠化機構の解明に関する国際共同研究、森林による復旧技術に関する調査、黒河流域の地表と大気の相互作用に関する日中共同研究等が継続して行われている。さらに土壌改良のための保水剤の開発がエジプトにおいて進められている。
 民間レベルでは、サヘルの会などのNGOがアフリカで植林協力を実施している。

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