前のページ 次のページ

第1節 

7 廃棄物

 廃棄物は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では、し尿、ごみなど主として国民の日常生活に伴って生じる一般廃棄物(家庭ごみ)と事業活動に伴い排出される汚泥等の産業廃棄物に分けられる。ここでは、この両者と、現在地球環境問題として取組が緊急に求められる有害廃棄物の越境移動を取り上げる。
(1) 家庭ごみ
 一般廃棄物のうち人の日常生活に伴って生じるごみの排出量は、平成元年度で4,997.3万トンであり、同じく一人当たりのごみ排出量は、406.6?になり、ともに前年を上回っている。過去の傾向を見ても昭和60年以来一貫して排出量は増加し、その種類も生活の多様化に伴い増加しており、廃大型家庭用品等処理の困難な一般廃棄物の扱いが問題となっている。廃棄物の処理については、その処分場、特に最終処分場の確保が大きな問題となっている。一般廃棄物最終処分場の残余容量は急速に減少しており、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の首都圏における残余容量は昭和63年度であと4年と見積もられている。
 日本は諸外国に比べ特に一人当りの排出量が多いというわけではないが、最近の昭和60年から平成元年にかけての5年間の増加率をみると、最も増加率の高い国の部類に入る。処理処分の用地に恵まれない我が国としては、廃棄物の増加を抑えることが課題であると言えよう。
 し尿の処分量としては水洗化人口の増加等により数年来減少傾向にあり、平成元年度では3,687万キロリットル(昭和63年度3,751万キロリットル)となっている。減少の原因は、水洗トイレの普及があげられるが、これにより下水汚泥や浄化槽汚泥が増加している(第1-1-30図)。


(2) 産業廃棄物
 昭和60年度における産業廃棄物の排出量は3億1,227万トンであり、家庭ごみ排出量の7倍となっている。その内訳は、汚泥(36.1%)、家畜糞尿(20.0%)、建設廃材(15.7%)、鉱さい(13.3%)の順となっている。産業廃棄物の全国の排出量は、5年に1回、厚生省によって調査されているが、昭和50年度以降の内訳の推移をみると、汚泥の増加が目立つ(第1-1-11表)。
 我が国の産業廃棄物のうち中間処理による減量や再利用に回るものを除く全体の28.9%、9,033万トンが最終処分場に回され、産業廃棄物の最終処分場の確保が大きな問題となっている。平成2年2月末における産業廃棄物最終処分場の残存容量は1億5,667万m
3
であり、特に首都圏の1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)における残存容量は昭和61年度の2,017万m
3
から平成元年度には714万m
3
に急減しており、産業廃棄物が都道府県域を越えて広域的に移動している。また、最終処分場の不足は不法投棄等の不適正な処理の増大につながるおされがあるなど大きな問題となっている。
 また、質的に見ても処理に特別の配慮を要する廃棄物の適正な処理の確保が課題となっている。
 OECD加盟各国の産業廃棄物の排出量については、ほとんどの国で正確に把握していなかったり、各国毎に産業廃棄物の定義が異なるため、その正確な把握、相互比較は困難だが、OECD諸国全体で1980年代前半が年間約10億トン、中期が13億トン、1990年で15億トンと見積もられている(第1-1-12表)。


(3) 有害廃棄物の越境移動
 有害廃棄物は、処分費用の高い国から安い国へ、また規制の厳しい国から緩い国へと移動されやすく、そのため、有害廃棄物の受け入れ国で適正な処理がなされない場合には、その国の生活環境に影響を及ぼすおそれがある。
 この問題の代表的な例としては、例えば、イタリアのセベソの農薬工場の爆発事故(1976年)により生じたダイオキシンに汚染された土壌が1982年に行方不明となり翌年フランスの小村で発見されたセベソ汚染土壌搬出事件や、イタリアやノルウェーなどを発生地とするPCBを含む廃トランスなどがナイジェリアに投棄されたココ事件(1988年)などが有名である。
 こうした事件を契機としてUNEP(国連環境計画)において国際的なルール作りが検討され、1989年3月、スイスのバーゼルにおいて、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が締結された。
 バーゼル条約は、加盟国数が1992年2月上旬に発効要件である20か国に達したことから1992年5月5日に発効することとなり、我が国もこのような国際的な動向に適切に対処し、有害廃棄物の越境移動による国境を越えた環境汚染を未然に防止するため、現在条約に早期に加入するべく、鋭意体制整備を進めているところである。

前のページ 次のページ