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第1節 

6 生物の汚染

 汚染物質の中には大気、水質、底質、土壌といった様々な環境の要素間にまたがってその存在が確認されているものがある。こうした環境要素に依存して生息している生物も汚染の例外ではない。さらに、生物は、特定の化学物質を濃縮、蓄積し、水質、大気などの環境試料中の濃度に比べて、高いレベルを示すことが知られており、また、生物の測定値は、ある期間の積分値であって安定していることから、化学物質による生物の汚染レベルを測定すれば、人の健康や生態系に対して問題があると考えられる物質の環境中での挙動や汚染レベルの推移の把握など、多くの点で有効なデータが得られる。
 このため、化学物質環境安全性総点検調査では、特定の排出源の影響を直接受けない水域(河川、湖沼、海域)の魚類中における化学物質の残留状況を把握することを目的に、毎年、異なる物質について調査を実施している。平成2年度は調査した21物質中5物質が魚類から検出されたが、今後一定期間をおいて環境の調査を行い、その推移を監視する必要がある物質はあるものの、直ちに問題を示唆するものではないと考えられる。
 さらに環境に残留することが確認されている化学物質については、環境汚染の経年監視を目的に魚類、貝類及び鳥類を指標生物とする生物モニタリングを行っており、PCB及びクロルデン類等が魚類から検出されている。(第1-1-9表)。またダイオキシン類等の非意図的生成有害物質についても生物中の残留状況を調査しており、魚類から検出されているため、今後ともモニタリングを継続していくこととしている(第1-1-10表)。環境中のダイオキシン類の汚染状況は、現時点では、人の健康に被害を及ぼすとは考えられないが、引続き監視を続けるとともに、汚染機構の解明等を行う必要がある。

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