4 地球環境問題と世代間の利害調整
我々は、現在発言する機会を持っていない将来の世代の利益をいかに反映していくかという困難な課題も、解決していかなければならない。
第二次世界大戦後、世界経済は飛躍を遂げている。我々の世代は、その成果を享受している。この経済の発展は、多くの森林などの再生可能な自然資源や化石燃料、鉱物などの非再生可能資源を多量に使うことにより行われている。その結果、本来、再生可能資源であるはずの森林の減少を招き、また、これらの資源から莫大な量の排ガス、廃水、廃棄物を排出して地球環境に影響を与え、ひいては、大気の組成にも変化が生じようとしている。
現在の人々の生活を無視しては環境保全対策を講じることのできないことは、世代間の利害調整を考える際にも同じである。現在の経済発展を表す指標であるGNPは単年度の金銭的な経済活動のフローを表わす指標であり、次の世代の開発の可能性を考慮していないため、持続可能な開発の観点から経済政策を評価するには必ずしも十分でない。後の世代の人々が持続的な開発ができるように、地球にストックされている富を計量していく方法について、OECD等で検討が開始されている。将来の世代の利益を確保することは、資源の温存ということにとどまらない。既に開始されている地球温暖化の速度の緩和につながる行動は次の世代の人々に選択の幅と時間的余裕を与えるものである。