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第6節 

2 化学物質環境安全性総点検調査について

(1) 一般環境調査及び精密環境調査
 昭和63年度には、一般環境調査として、環境残留性が高いと予想される18の化学物質について、水質および底質を、また、うち5物質については、加えて魚類を対象に全国24〜25地区で調査を行った。その結果3物質が底質から検出されたが、水質、魚類からは検出されなかった。検出された物質のうちアントラキノンについては、その残留状況等から平成元年度にさらに詳しい調査を行う必要があると判断された。更に、62年度の精密環境調査で湖沼の魚類で比較的高い濃度で検出され、引き続き調査することとされたメラミンについては、湖沼2地区の魚類について調査を行った。その結果1地区で検出されたものの問題となる結果ではなかった。
 また、精密環境調査として、魚介類中の分析法の開発に使用した少数の検体中に高い濃度で検出されたとの報告のあったトリフェニルスズ化合物及び前年度の一般環境調査結果からさらに詳しい調査を行う必要があると判断された6物質の計7物質について、水質、底質及び魚介類を対象に全国50地区で調査を行った。その結果、トリフェニルスズ化合物を除く6物質については、今回一般環境中で検出された濃度はいずれも問題となるようなものではなかった。トリフェニルスズ化合物については、中央公害対策審議会化学物質専門委員会において、以下のように評価された。
?本化合物による環境汚染は、その検出状況からみて広域的なものであると考えられる。また、その検出濃度の高いものと考えられる。
?本化合物による環境汚染の状況からみれば、現時点で直ちにヒトの健康に問題を生ずるとは考えられないが、現在の汚染の程度が長期にわたって継続するならば、将来、影響を及ぼす可能性がある。
?したがって、関係各方面の緊密な協力のもとに、すみやかに必要な調査等を実施するとともに、所要の対策を講じる必要がある。また、今後とも本化合物の環境中濃度の推移を監視していくことが必要である(第1-6-3表)。


(2) 水質・底質のGC/MSモニタリングの概要
 ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)を用いた水質・底質モニタリングは、化学物質環境調査の一環として61年度から新たに開始された。この調査は、多種類の化学物質を同時に感度良く分析できるという特徴をもったGC/MSを用いて、環境調査に結果等により水質および底質中に残留していることが確認されている化学物質について、その残留状況の長期的推移を把握することにより環境汚染の経年監視を行うとともに、環境中に存在する未知物質の検索についても検討していくことを目的としている。
 63年度においては、全国22地区において19物質を対象に調査を実施した。その結果、水質からはP−ジクロロベンゼン等9物質が検出され、底質からは19物質すべてが検出された(第1-6-4表)。
 これまでの3年間のデータから見て、特別の傾向が示唆されている物質はない。


(3) 生物モニタリング(生物指標環境汚染測定調査)の概要
 生物モニタリングは、化学物質審査規制法に基づく第1種特定化学物質及び精密環境調査結果等から当該化学物質による環境汚染の進行を未然に防止する上で注意深く監視を行う必要があると考えられる物質について、全国17地域で生物(魚、貝、鳥)を対象に環境汚染の経年監視を行うものである。
 63年度においては、31物質について生物中の残留濃度を調査した。その結果クロルデン類(5物質)については、検出最高濃度は、魚介類は前年度と同レベルであったが、貝類については62年度より低かった。トリブチルスズ化合物の汚染状況は依然として概ね横ばいであった。また、ディルドリンは、なお10地域から検出された。以上の調査結果から、今後ともこれらの物質を中心に環境中における残留状況を注意深く監視していく必要があると判断された。

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