2 政府ベースの今後の環境協力の進め方
以上のような状況を踏まえ、我が国としては地球環境の保全と開発途上国の「持続可能な開発」を目指して今後とも一層積極的な国際協力を展開していく必要がある。特に、地球環境保全に当たってのODAの役割という観点からみると、開発援助に際しての環境配慮の実施と環境援助の拡充は、「地球環境保全関係閣僚会議」の平成元年6月30日付け申合せのそれぞれ第4項目及び第5項目にもなっている重要な政策目標であり、本章第1節202/sb1.4.1>でも述べたように、これらの施策も他の内政・外交政策と相まって、総合的、計画的に推進されなければならない。
その具体的な内容としては、既に各種の国際的計画や宣言において合意された事項や我が国自らが表明した方針に沿って拡充を図る必要があるが、地球環境保全の観点から、今後のODAのあり方について特に重要と思われる点を挙げれば、次の通りである。
(1) 地球環境の保全に焦点を当てた援助内容の拡充
今後は、水質・大気管理、熱帯林の保全・造成、国立公園の設定・管理、野生生物の保護、砂漠化防止や土壌保全を含めた土地資源の管理、都市計画、環境政策基盤強化のための組織・人材の育成等の分野及びノールトヴェイク宣言に言及されているような気候変動に関する具体的な項目にも力を注いでいくことが重要である。
(2) 開発途上国のニーズに合った適正な技術の開発・移転と人材開発の重視
オゾン層の保護のためのフロン代替技術の開発・普及、地球温暖化防止のための省エネルギー・代替エネルギー技術、世界的規模での植林活動など持続可能な開発のための国際協力に当たっては、開発途上国自身が自国の自然的・社会的条件や経済発展段階にふさわしい適正な技術を身に付け、あるいは自らそうした技術を開発する能力を獲得することが重要であって、我が国の進んだ技術の押しつけでは成功しない。
その意味で、我が国自身がそうした途上国のニーズや条件を深く認識し、共に学んでいくという姿勢を貫くとともに、開発途上国が自国に最も適した技術を選択・導入し、あるいは自力開発するだけの能力を備えた人材の開発、教育・訓練に力を注ぐ必要がある。そのためには、例えば既に我が国がタイ国で協力を行っている研究研修センター、中国政府との間でも合意している環境保全センターの建設、運営に対する援助プロジェクトなどが、極めて効果的と言えよう。
(3) 政府対話の継続・拡充と開発途上国の参加の確保
地球環境の保全のための国際的協議や国際協力にすべての国々が参画することが不可欠であり、我が国もその地位に応じた貢献を図るべきである。それには今後とも環境援助案件発掘のための調査ミッション等を積極的に派遣するとともに、開発途上国の政府関係者や現地のNGOsとの対話を継続的に行っていく必要がある。また、我が国自身が開発途上国向けの地球環境問題に関するシンポジウムやセミナーを数多く開いたりしていくことも重要であろう。
(4) 我が国における環境協力体制の整備
まず、援助する側の我が国の専門家を数多く養成し、今後ますます増加する開発途上国からの環境援助要請に即応できるような体制を築いていく必要がある。まて、そのような専門家の訓練を行い、現地に即した調査研究能力や技術開発能力を高めていくためにも、できるだけ現地に訓練、測定、調査研究のためのフィールドを持つとともに、援助国、非援助国双方の援助に携わる人が互いの知識経験を交流できる場や機会を多く持つことが重要である。このことは、我が国内にそのような環境の存在しない熱帯林地域における植林や砂漠化防止のための援助を展開していく上で、特に重要な点であろう。