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第5節 

3 地方公共団体、民間ベースの環境協力

(1) 地方公共団体
 これまで我が国の公害防止、環境保全行政の第一線に立って問題に取り組み、これを一つひとつ解決してきたのはそれぞれの地方公共団体であり、そこには地域レベルの実際の政策運営、措置、制度、技術開発等の面でノウハウと人材が蓄積されている。こうした地方公共団体が培ってきた能力は、もちろん政府が中心となって推進する様々のODA事業を通じて発揮される場合が多い。現に多くの地方公共団体職員または元職員が開発途上国で技術協力に携わったり、地方公共団体が国際協力事業団(JICA)の依頼に応えて開発途上国からの研修性を受け入れているが、地方の国際化も急速に進展する中で、地方公共団体が直接に諸外国の地方政府や都市との間で国際環境協力を行なうケースも増えてきた。例えば、東京都、神奈川県、大阪府、大阪市等数多くの地方公共団体が中国、インド、インドネシアといった開発途上国の地方政府や都市と技術協力のための取り決めを結び、技術者を派遣したり、途上国側から研修生を受け入れたりしている。
 また、多くの地方公共団体が環境問題に関する国際会議を主催するばかりでなく、名古屋市、横浜市はそれぞれ、「国際地域開発センター」(UNCRD)、「国際熱帯木材機関」(ITTO)といった環境保全に関連する国際機関を積極的に誘致してきた。滋賀県は自ら「(財)国際湖沼環境委員会」(ILEC)を設立し、UNEP等の国際環境の参加・協力の下に、世界の湖沼環境保全のため活発な調査研究、技術協力活動を展開している。平成元年10月には、JICAの「九州国際センター」が北九州市に設立されたが、同センターが開発途上国から受け入れる研修員に対し産業技術、環境保全に係る研修を実施するに当たり、地元の市民、企業、そして市当局による自主的な協力体制が整備されている点が注目される。
(2) 民間ベースの環境協力と技術移転
 同様のことは、民間企業の取組についても言える。すでに様々な業種においてこうした国際環境協力が行われており、技術者の交流、研修生の受け入れなどが行なわれている。開発途上国では、環境保全対策の面から、民間企業が有している公害防止や省エネルギー技術・装置の開発・選択能力及び運転管理に関するノウハウ、その他省資源・省エネルギーに徹した企業経営のあり方といった技術移転を必要としている。これらはもちろん、ODA事業への民間企業の参加という形でも行なわれるが、民間企業自らが直接投資、合弁会社の設立、あるいは相手国の民間企業との資本・技術提携と、いろいろな形での直接協力を進めていくことが効果的である。
(3) 草の根の環境協力
 さらに、第4節で見たように、地球環境保全や開発途上国の持続的開発を目的として国際的に活動する民間団体や市民グループ(NGOs)、そしてそれらの活動を資金的に支援する民間企業や公益法人が我が国にも次第に形成されつつある。熱帯林の保全や砂漠の緑化など地球環境保全を本来の目的とする環境NGOsもあれば、途上国への開発援助に携わる中でやはり現地の環境問題との取り組みが不可欠であることを学んでいった数多くの民間の援助団体も環境面で活発な活動を展開している。
 また、平成元年度より、外務省のODA予算の一環として、こうした我が国内外のNGOsが開発途上国で行う援助事業に対して国が補助する制度が認められるようになった。今後は、我が国のNGOsがその独自性を失うことなく、こうした制度も利用しながら途上国における環境保全と持続的開発のための草の根の協力を拡大していくことが望まれる。

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