2 省エネルギー・省資源対策の抜本的強化
第3章202/sb1.3>でも見てきたように、省エネルギー対策の推進は、窒素酸化物等による大気汚染、酸性雨、都市のヒートアイランド現象、そして地球温暖化の抑制・防止策として有効であるのみならず、エネルギーの安定供給に資するものであり、また、中にはエネルギー源の多様化、経費の節減等に資するものもある。我が国でも、1973年の第一次石油危機以来、省エネルギー法の制定をはじめとする数々の施策が協力に進められてきた結果、GDP一単位当たりのエネルギー消費量(エネルギーのGDP原単位)は、世界の先進工業国の中でも最も少ない部類に入るところまで改善されてきた。しかし、1980年代後半に入ってからの石油価格の下落・低迷や円高の進行、内需拡大による景気の浮揚等を背景として、我が国のエネルギー需要は再び急増し始め、GDP弾性値も1を超える勢いを見せている。
国内では、大都市地域を中心として改善の兆しが見られない窒素酸化物による大気汚染対策に貢献するとともに、地球温暖化の危機に我が国が率先して取り組むためには、各般の省エネルギー対策を協力に推進していく必要がある。そしてそのためには、産業、運輸、業務、民生等のエネルギーの消費部門のみならず、熱や電力等のエネルギーの供給・転換部門でも、現在は排熱として捨てられている膨大な量のエネルギーを有効利用するなど、あらゆる効率化、高度利用の可能性を探るとともに、環境保全の観点に立ってそれらの省エネルギー対策を進めていくことが重要であろう。
資源の有効利用とリサイクルを促進することもまた廃棄物の発生を少なくし、地域の環境への負荷を小さくするとともに、海外からの資源輸入の必要性を減らすことを通じて地球環境の保全につながっている。また、これらの資源を原料として物を生産したり、製品を消費・使用する際のエネルギーの節約にもなる。すでに指摘したように、我が国においては、個々の製品・製品の製造段階における資源効率や消費・廃棄段階における回収・再生利用率は諸外国に比べてかなり高いと言えるが、一方では使い捨て製品の販売、リサイクル可能な容器から使い捨て容器への移行等資源の有効利用とリサイクルの推進に逆行する側面もある。製造業者が製品の開発・製造段階から環境への配慮を徹底し、資源・エネルギーの有効利用や省資源型で耐久力のある製品の開発・普及に努めるとともに、販売業者、消費者側でも商品の過剰消費や使い捨てを抑制し、自ら進んで廃棄物の減量化、回収・再生利用に協力していくような社会システムを築いていく必要があろう。
さらに、より広く長期的な視野から我が国の社会自体を省エネルギー・省資源型のものに切り替え、環境にやさしいまちづくり、地域づくりを進めていくため、環境保全に資する技術開発や環境倫理の確立に向けて国自身が一層の努力を払うべきことはもちろんであるが、我が国の経済構造、都市の構造、交通システムのありかた等についても見直しを図っていくことも必要であろう。