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第1節 

1 基本戦略の確立と施策の総合的推進

 地球環境問題に対する国の基本的認識及び当面の基本方針は、平成元年6月30日に開かれた第1回「地球環境保全に関する関係閣僚会議」の申合せに明らかにされている(前章第1節1の(2)参照)。国が推進すべき地球環境保全のための施策は、ここで申し合わされた6項目を出発点として、今後さらに具体化し発展させるとともに、我が国の21世紀に向けた長期的な内政・外交上の重要課題の一つとして、明確に位置づけていく必要があろう。特に、地球温暖化対策、遺伝子資源の保護(野生生物の多様性の維持)問題等いまだ国際的な枠組みが固まっていず、我が国のリーダーシップが要求されるような事項については、早急に我が国としての長期的、総合的な対応戦略を確立する必要がある。
 次に、上記6項目の各分野における具体策推進のためには、計画を作成すること等により、その着実、適切な実施を図る必要がある。
 現に、上記申し合せの第2項目と第3項目、つまり調査研究、観測・監視及び技術開発の推進については、平成元年10月31日付け第2回関係閣僚会議での申合せにより、関係閣僚会議は、各年度当初に、当該年度において推進する調査研究・観測・監視及び技術開発についての総合推進計画を定めるとともに、毎年度、総合推進計画の実施状況及びその結果に関する報告を受けることとなった。今後は、政府関係省庁が緊密な連携をとりつつ、総合的な推進計画を策定するとともに、その計画に基づく各種の科学調査研究やモニタリング、技術開発等を継続して実施していくことが期待される。
 その他の申合せ事項についても、それぞれの分野別に、あるいはそれらをさらに総合して、明確な目標と具体性のある施策の体系を示した計画を策定し、それに従って政府関係省庁、地方公共団体、民間企業その他すべての関係者が一丸となって推進、協力していくことが重要である。
 この点では、オランダ政府が1989年5月に作成、公表した「国家環境政策計画」(NEPP)が参考になる。同計画は、地球環境問題を含めオランダ内外のあらゆる環境問題に対する同国政府の政策を揚げたものであるが、2010年までの長期を見通しつつ、計画期間を1994年までとして政策理念と目標を明らかにするとともに、その達成のための各種規制強化、研究・技術開発、財政投融資、税制改正、国民に対する普及・啓発等各般にわたる詳細な施策の実施計画を定めている。同計画は国会に提出され大きな国民的論議を呼んだが、その後内閣総辞職、総選挙を経て国会の承認するところとなり、これに基づいた諸政策がすでに動き出している。

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