3 野生生物の保護
絶滅のおそれのある野生生物については、イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ、タンチョウ、アホウドリ、シマフクロウ、ニッポンバラタナゴ等について給餌や保護増殖事業を実施している。これらの種は、未だ絶滅の危機を脱したとは言えないが、タンチョウは昭和27年の33羽が63年は485羽に、アホウドリは30年の19羽が63年には228羽に増加するなど個体数が着実に増加しているものも見られる。現在我が国では2羽だけとなったトキについては、飼育下で中国から借り受けた個体との交配による増殖を目指したが成功に至らず、今後は地球上のトキの種の保全、すなわち中国に残るトキの個体群の保護の観点から日本のトキを中国に送り、日中両国共同で人工増殖を進めることとしている。このような事業のほか、「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」及び「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡等の規制に関する法律」により、譲渡等の規制を行っている。絶滅のおそれのある種の保護を図るためには、生息地の保全を基本としつつ、捕獲・採取規制や上記の譲渡等の規制、保護・増殖、あるいは開発に際しての配慮の徹底等の総合的な対策が必要であり、今後より体系的な保護施策を推進することが求められている。
以上の絶滅のおそれのある種の保護という観点に加えて、さらに野生生物の保護としては、?渡り鳥の保護、?鳥獣の捕獲の制限と生息環境の保護、?狩猟の管理、?鳥獣による農林業被害の防止等の観点からの対応も必要である。このため、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に基づき全国で国設52箇所、県設3,339箇所の鳥獣保護区を設定し、鳥獣の保護・繁殖を図るとともに、狩猟の適正化やカモシカの保護及び被害防止策等を実施している。