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第2節 

2 自然公園及び身近な自然の保護及び適正な利用

 自然公園については、我が国を代表する自然景観を有する地域として適切に保護するとともに、国民の野外レクレーションの中心的な地域として健全な利用を図る必要がある。このような観点に立って、自然環境保全審議会自然公園部会「利用のあり方検討小委員会」の検討報告が平成元年5月に取りまとめられた。この報告では、望ましい自然公園の利用について、まず、景観や生態系等の自然資源を損なうおそれのない「持続的利用」を原則としつつ、かつその地域でしか体験できない、「代替性のない利用」を優先すべきであるとしている。また、その上で、自然公園が国民の多様な自然利用の場として機能するよう「適地適利用」の実現を図るべきこと、自然公園の自然の持つ魅力を国民に伝えるため、ソフト面のサービスを重視した体験的利用を推進すべきこと等が必要であるとした。具体的な施策としては?利用面からの地域類型区分制度の導入、?営造物的管理を行う地区の設定、?利用拠点の整備・活性化、?施設整備の充実・高度化、及び?望ましい利用の実現のためのしくみの整備等を提言している。
 保護と利用の調整が特に求められている例としては、日光国立公園尾瀬地区がある。本地区は、近年、道路、鉄道等の交通網の整備や余暇の増大等により、入山者の増加が見られ、山小屋、公衆便所等から排出されるし尿処理水や雑排水により湿原植物に影響が生じる等良好な自然環境の保全に支障が生じている。このため、63年9月、関係行政機関による協議会を設置し、保全対策について検討を行っており、平成2年度には公衆便所の建替え・浄化槽の整備等、排水対策のための施設の整備を実施することとしている。
 身近な自然の保全、活用のためには、自然観察の森の整備等が行われているほか、国民が自らの足で自然や史跡等を訪ねることのできる長距離自然歩道が全国で5歩道整備されており、平成2年度からは、東北6県にまたがる東北自然歩道(新奥の細道)の整備に着手することとしている。
 第1章第2節で述べたとおり、身近の貴重な自然は失われつつあり、その保全と適切な利用を体系的に行うための政策展開が必要である。

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