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第1節 

2 自然環境保全施策の展開

 自然環境の保全は、原生的な自然や優れた風景地等の自然、農林地域を含めた二次的自然、都市地域の自然等自然の質に応じて体系的に進めるとともに、自然とのふれあいを求める国民のニーズに対応する必要がある。また、近時、全国各地で良好な自然条件を利用した大規模なリゾート開発が構想されるなど、自然環境への利用圧、開発圧が高まっていることから、各種の制度を活用する等により、こうした自然環境の保全を図るよう適切に対処する必要がある。
 国立公園等の自然公園については、「自然公園法」に基づき逐次指定され、保護・利用が図られてきたが、今後も、国民の自然とのふれあいのニーズの高まりに対応して、保護との調和のとれた利用を推進していく必要がある。特に、日光国立公園尾瀬地区は、近年、交通網の整備や余暇の増大等により利用者の増大がみられ、良好な自然環境の保全に支障が生じている。そのため、関係行政機関からなる協議会を設置し、排水処理対策をはじめとする保全対策について協議を行うほか、利用動態、排水処理方法、旅行業者等の実態把握調査を実施している。
 また、「自然環境保全法」に基づく原生自然環境保全地域等の指定、自然環境保全基礎調査等の施策が実施されており、全国の自然環境の現況と推移を把握する自然環境保全基礎調査(「緑の国勢調査」)については、昭和63年度より第4回の調査が本格的に開始された。
 一方、野生生物については、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に基づく鳥獣保護区の設定、狩猟の適正化等のほか、「自然環境保全法」、「自然公園法」、「文化財保護法」等により保護が図られている。昭和63年11月には、東京湾奥部に残された数少ない干潟の一つである谷津干潟を、シギ、チドリ等の渡り鳥の集団渡来地として保護するため、国設鳥獣保護区に設定した。また、平成元年度からは、飼養許可を受けている鳥類の個体識別による適正管理を行うこととした。
 国際協力の分野では、昭和62年12月により「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律」を施行し、過度の国際取引による絶滅のおそれのある野生動植物の国内取引についても規制を行っている。さらに、63年12月にはソ連との間で渡り鳥等保護条約を発効させ、渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類の保護のための国際協力を一層推進した。
 また、国民一人ひとりが自然に親しみ、自然とのふれあいを高めるための条件整備が今日重要な課題となっており、各種施設の整備、自然に親しむ運動等の推進を図ってきたところである。特に、平成元年より4月29日が「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心はぐくむ」「みどりの日」として国民の祝日とされたことにかんがみ、環境庁では、毎年4月29日に「自然に親しむみどりの日の集い」を全国に展開することとしている。

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