砂漠化する地球 -その現状と日本の役割-
日本のNGOによる取り組み事例
日本のNGO、企業も砂漠化に苦しむ村々に入り、長期的に草の根の活動を展開しています。
ブルキナファソにおける小学校の緑化、生活林づくりの支援
ブルキナファソの中央北部州バム県の中央部にあるバム湖はかつて深い森林に囲まれていましたが、1970年代に起きた大干ばつによってその多くが失われ、土地の乾燥化と荒廃が進んでしまいました。こうした状況の中、地域住民による恒常的に安定した生活の実現を目指し、様々な支援を行っています。
活動は、①住民生活の基盤作りと向上(生活用水の確保、食糧の増産、収入の向上等)、②環境の回復と保全(土壌侵食の防止、植林の実施、植生の保護等)を基本としていますが、2021年現在は新型コロナウイルスの蔓延を受けて規模を縮小し、以下を中心に活動しています。
●小学校緑化:各校の生徒や教師、保護者と協力し、校庭の緑化を進めています。直射日光や熱風を遮ることで学習環境を改善するとともに、子供たちに植林を実体験させることによって環境意識を育みます。
●村落植林:生活林づくりを希望する村々に対して、植林に関する技術の移転、また苗木や用具の供与を行っています。成長した木々は、薪として利用されるとともに、用材として販売され家計の一助になります。
中国東北部における現地住民との緑化活動で在来植生を復活させ、更なる効率的利用を目指す
中国東北部ホルチン砂漠で、従来の草原植生の回復・保全と適切な利用の両立を目指すプロジェクトを実施しています。ここは、かつてホルチン草原と呼ばれる緑豊かな土地でしたが、1980年代から過放牧や過開墾など人間の生産・経済活動によって植生が減少・消滅しました。そこで、現地住民とともにまずは防風・防砂のための緑化活動を展開しています。20年間の実績は、2,818ha(東京ドーム約600個分)、7,281,225本(活着率64.0%)です。治砂により生産性が回復した緑地からは、在来植生の自然回復のほか、きのこなど林産物、ウサギやキジなど鳥獣類も見られ、生態系が回復しつつあります。
持続可能な開発という観点から、土地の生産性を重視し、回復した草原資源を有効に利用し、住民の収入増につなげることで、砂漠化の原因となった無計画な収奪的土地利用からの脱却と、将来的には住民に活動を担ってもらうことを目指しています。そのために、日常的な育林作業への住民参加を促し、体験を通じて緑化への理解深化やノウハウ習熟、住民会議での周知や近隣村落への普及活動、飼料木の植栽や牧草播種など有限な土地の更なる効率的利用法の探究に取り組んでいます。
[写真提供:緑化ネットワーク]
モンゴル北部における火災で失われた森の再生
【上:植林風景】【下:大きく成長したアカマツ】[写真提供:GNC Japan)]
ロシアとの国境地帯、モンゴルの永久凍土地帯に横たわる豊かなアカマツの森林地帯で有名であったセレンゲ県のトジンナルス付近一帯では、1985~1996年の大火災で約70%(32,000ha)が被害にあいました。
この地で、2004年よりモンゴル森林局や森林・動物センターの元所長、地域住民と協力し、日本の多くの企業に支援を頂き、森づくりのプロジェクトを進めています。
2020年までに約164万本、630haの地に植林をしました。植え方を工夫して活着率の改善にも取組みました。毎年5月に植林をし、10月に調査と確認をしながら植林をした森を管理しています。 育苗も行っており、自ら育てた苗を植林に使用しています。その他、街路樹の植林や農作物の収穫、レクチャー、ワークショップなどを通じて環境教育も行っています。
私たちは、「共存(人と人、自然と人、過去・現在・未来の共存)への貢献」の一端を担うことを目的とし、本当に役立つ国際協力とは何か?を、日々考え、サスティナブルな地域づくり、国づくりを実現するために行動しています。
コラム:砂漠化対処における住民、NGOの役割
砂漠化は、地域住民の農業活動、生活等と深く関わっているため、砂漠化に効果的に対処するためには、住民参加型の取り組みである「ボトムアップ・アプローチ」が重要であるといわれています。
NGOの中には、植樹などの「緑化」に限らず、地域住民の生活改善、薪炭材の効率的な使用、また貧困撲滅を目的とした「持続可能なコミュニティづくり」を重視した支援を行っている団体もあります。一方で、人材や資金の確保の面で、現地での活動を続けることに困難をきたしている団体もあります。最前線で砂漠化に取り組むNGOの活動をいかに支援するかが課題となっています。