環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

スカーレン

2013年1月18日(金)

 スカルブスネスから戻り、1月15日にはさらに南方、昭和基地からおよそ70キロメートルのところにあるスカーレンという場所に行きました。スカーレンには居住用のカブース(そりのついた小屋のようなもの)があり、そこからは氷瀑(アイスフォール)が目の前に見られます。

スカーレン氷瀑写真拡大

 スカーレンでは地圏・測地チーム及び陸上生物チームの調査に同行しました。地圏・測地チームはインフラサウンド計の設置作業、潮汐調査等に来ています。陸上生物チームは藻類、コケ及び微生物の調査に来ており、サンプル採取をしていました。私は主にインフラサウンド計の設置など地圏・測地チームのお手伝いをするとともに、法令の遵守状況の確認や過去の担当者が撮影した定点(南極の環境構成要素が典型的にわかる場所や調査等の人為を加えた場所)の撮影をしました。

 私が設置のお手伝いをしたインフラサウンド計について若干説明します。インフラサウンドという可聴音以下の低周波音波は、地震や噴火等の様々な自然現象によって発生するものです。インフラサウンド計の設置及び調査は、氷河が割れたり動くことにより発生するインフラサウンドを計測することで、地球温暖化の指標とすることができるのではないか、との考えから進められているものです。

 私たちがインフラサウンド計を設置した後、徒歩で1時間程度のところにあるスカーレン氷河の末端が見える氷河の対岸まで歩きました。本当に偶然のタイミングですが、目の前で氷河末端が崩れ落ちました。直前まで氷がきしんで崩れそうな音がしていましたが、まさか自分たちが氷河を見ているときに、まさにその場所で轟音とともに氷河末端が崩れるとは思いもしません。氷は海中に落ち、発生した波が岸にぶつかり数メートルくらいの高さまでしぶきがあがりました。動画でご紹介できないのが残念です。

崩落後の氷河末端(中央の青い三角の周辺が崩落箇所)写真拡大

 その迫力に驚いたのはもちろんですが、自分たちが設置したインフラサウンド計が、一連の氷河末端の崩落から発生したインフラサウンドを早速記録してくれたのではないでしょうか。現在はデータを蓄積している途中ですが、今から調査の進展に期待してしまいます。

 その他、生物関係ではアザラシがミイラ状になって海岸に打ち上げられているのを確認しました。南極に来てから今まで何匹かのミイラ状のアザラシの死骸を見てきましたが、今回の個体はその中でも大きく、2m程度の体長がありました。南極では、低温環境により、生物の死骸は腐敗がゆっくりと進行します。今回確認したアザラシのミイラはそれでも骨が所々出ており、死後、相当な時間が経っていたと考えられます。南極では夏には日が落ちない等、時間の経過の感じ方が日本にいる場合とは異なりますが、アザラシのミイラからも日本との時間の経過の違いを感じました。

 次は南極大陸の内陸調査の拠点となるS16と呼ばれる場所に向かいます。南極の滞在も半分を過ぎていますが、見渡す限り雪原という場所は初めてです。雄大な景観やそこでの実施調査等についてご紹介したいと思います。

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