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「コウテイペンギン」登場!

2008年2月18日(月)

一面の定着氷と「しらせ」

 昭和基地離岸から4日目になりますが、今年は例年になく海氷上の積雪が多く、3万馬力を誇る「しらせ」も航行に苦戦を強いられています。また、昨日は吹雪により視程(見通し)が50mほどしかなく、目の前の障害物すら確認できない状況であったことから、安全を期すため、終日停滞を余儀なくされました。しかし、今日は風も収まり、海上自衛官の巧みな運航により、ようやく定着氷(岸に凍結・固着して動かない海氷)域を抜け、大きな海氷が断続的に続く流氷域に入りました。早ければ明日流氷域も抜け、およそ2ヶ月ぶりに青く広がる海洋を見ることが出来そうです。

 さて、いよいよ南極らしい光景ともお別れの時が近づいてきているのですが、今日は「しらせ」から珍しい動物を見ることが出来ました。コウテイペンギン(エンペラーペンギン)です。日本でも水族館などでお馴染みのコウテイペンギンですが、昭和基地周辺ではほとんど確認されることがなく、復路の「しらせ」から見られたことはラッキーでした。

コウテイペンギン

 ペンギンの中で最も体の大きなコウテイペンギンは、成鳥で体長100cm~130cm(アデリーペンギンで70cmほど)にもなり、首のあたりに鮮やかな黄色の光沢が見られるのが特徴です。コウテイペンギンは、南極が真冬となる3~6月にかけて、定着氷氷の上に集まってルッカリー(営巣地)を作り、各つがい(夫婦)が卵を1個産みます。同じ南極で営巣するペンギンでも、南極が真夏となる11月~1月にかけて、露岩域の雪氷の無い場所で通常2個産卵するアデリーペンギンとは異なります。

 コウテイペンギンと言えば、巣を作らず、両足の上で抱卵する様子を思い浮かべる方もいると思いますが、実は抱卵はオスの仕事です。産卵を終えたメスが、オスに卵を託した後、魚やイカといったエサを求めて海に戻っている2ヶ月もの期間、オスは何も食べることなく卵を温め続けます。今の時期にはコウテイペンギンの雛はすべて巣立ちをしており、姿を見ることは出来ないのですが、わずか数ヶ月前に夫婦の命を懸けた連携プレーによって育まれた新たな命があることに、新たな感動を覚えました。