環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護同行日記:トップ

宇宙から見えるペイント?

2008年1月16日(水)

 1月14日(月)から16日(水)にかけて、往復ヘリコプターで「明るい岬」というところに行ってきました。「明るい岬」は、昭和基地の北東約90kmに位置している露岩域で、これまで私が訪れた「スカルブスネス」、「ルンドボークスヘッタ」、「スカーレン」とは、昭和基地を挟んで反対の方角になります。ここも、氷河が側に見える大変美しい場所であり、アデリーペンギンも多く生息しています。

 さて、この「明るい岬」には、「スカルブスネス」などのノルウェー語ではなく、日本語の地名が付けられています。実は、ノルウェーの調査隊が航空機から命名したのは、主たる露岩域や島などに限られており、全ての場所を網羅的に命名したわけではありません。このため、ノルウェー語の地名が無いものの、我が国の観測隊が調査を行うために場所を特定する必要がある場合には、我が国が独自に命名を行っており、この「明るい岬」もそのような場所の一つなのです。

上空から見た「対空標識」(写真中央)

 「明るい岬」で私は、測地グループの活動に同行しました。測地グループの主たる目的は「対空標識」の設置です。「対空標識」と聞いてもピンと来ないかと思いますが、上空から見たときに目標となる物のことを言います。今回の測地グループの活動は、宇宙を飛んでいる衛星の画像に写る大きさの「対空標識」を地上に置き、この「対空標識」の写った衛星画像を分析することにより、「明るい岬」周辺の既存の地図の精度を検証したうえで、地図に必要な修正を行うことを目的としています。「明るい岬」周辺の既存の地図は、これまで十分な調査が行われてこなかったことから、必ずしも精度が十分とは言えず、より精度の高い地図を作ろうとしているのです。

余った塗料は密封して日本に持ち帰る

 今回設置した「対空標識」は、幅3m×長さ6mの巨大な線3本を、基準点から放射線状に白色塗料でペイントしたものです。岩肌に直接ペイントするのは、少し乱暴なようにも思えますが、はるか上空を飛ぶ衛星の画像に写すには、最低でもこの規模が必要となってしまいます。また、降雪や着雪の極めて少ない高台であり、周辺に動植物がいない場所を設置場所に選ぶこと等により、塗料の飛散や流出などによる環境への影響を最小限に抑えています。

 今回設置した「対空標識」により、「明るい岬」周辺の地図の精度が格段に上がれば、今後の各種観測活動にも多大な貢献がなされるものと期待されます。