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いよいよ暴風圏に突入しました!

2007年12月5日(水)

 昨日の日記で、南緯40度から60度は、船乗りが「吠える40度(roaring forties)、狂う50度(furious fifties)、絶叫する60度(shrieking sixties)」と呼ぶ暴風圏だと書きましたが、ついに今朝4時、南緯40度線を超えました。

 「百聞は一見にしかず」とはよく言ったもので、これまでとは明かに異なるレベルの動揺(船の揺れ)に襲われています。大波に打たれると、まるで空き巣にでも入られたかのように物が落下・散乱し、気分のすぐれない観測隊員も少しずつ増えてきました。また、甲板でランニングなどの運動をすることを「艦上体育」と言うのですが、今日は艦上体育をしている人もほとんど見られませんでした。それもそのはず、高さ4mもの波で「しらせ」が左右に20°以上動揺し、まるでシーソーのように、船首と船尾、右舷(船の右側)と左舷(船の左側)がランダムに上がったり下がったりしているのです。そのような中では、走るどころか、艦内を普通に歩くのも一苦労です。よく、遊園地に船の形をした乗り物が前後に揺らされるアトラクションがありますが、それに左右の動きがプラスされたようなものです。あの、「内蔵がフワッと浮く」感覚が、止まることなく、しかも次の動きが予想できない状況で続くのですから、その系の乗り物に弱い方にはかなり厳しいと思います。

 しかし、そんな中でも私はむしろ上がり調子で、フリーマントルを出発してからの日課としている甲板ランニングもこなせました。(丈夫な体をくれた両親に感謝です!)ただし、甲板の端まで走ると、潮をかぶるだけでなく、動揺で振り落とされそうになるので、甲板の中央を往復する程度しかできませんでした。いずれにせよ、運動不足を避ける意味でも、明日以降もできるだけ艦上体育は続けたいと思います。

「吠える40度」のアホウドリ(※)

 さて、船の揺れの話ばかりでは申し訳ないので、今日のちょっといい話をお伝えします。今朝、海洋観測隊員を中心に、一時停泊して海水やプランクトンの採取が行われたのですが、その際、どこからか2~3種類のアホウドリ(※)とみられる鳥類が3時間ほどの間に全部で40~50羽ほど現れ、「しらせ」の周りを飛び回っていました。おそらく、水揚げされる魚を横取りしてやろうと思っていたのでしょうが、観測隊の目的は魚ではないので、どうやら期待を裏切ってしまったようです。いずれにせよ、左右合わせて2mにも及ぶ翼を広げて大空を自由に飛び回る姿は、船酔いに悩む隊員にとって良いやすらぎになったようです。加えて、少し遠くて同定(生物の種類を特定すること)は困難だったのですが、イルカらしき群れも見られ、かなりラッキーでした。

 「しらせ」は、本日18時現在で南緯41度・東経109度あたりを引き続き南下中です。明日は低気圧地帯に入っていくようなので、今日以上の動揺が起きそうです。船酔いしないように、健康的な生活をして暴風圏を乗り越えていきたいと思います。

※ キバナアホウドリ(Diomedea chlororhynchos)と思われる。