環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護同行日記:トップ

早くも船酔い!?

2007年12月3日(月)

 みなさん、はじめまして!環境省自然環境局自然環境計画課南極保全係の齋藤佑介と申します。さて、いきなりですが、みなさんは「南極」と聞いて何を思い浮かべますか?私は、ごくありきたりですが、水族館などでもお馴染みのコウテイペンギンとオーロラでした。というよりも、その程度の知識しか持ち合わせていなかったのです。事実、今年4月に現職に着任するまでは、南極などまったく無縁の世界だと思っていました。また、私のみならず、ほとんどの方にとって、南極は未知の世界だと思います。私は着任後、南極地域の環境の保護に関する法律の所管係として、主に南極を訪れる方に必要となる、法に基づく諸手続を行ったり、南極地域の管理の在り方について話し合う国際的な場である南極条約協議国会議に参加するなど、南極を広く、深く見つめてきました。このような経験に加え、幸運なことに、今般第49次南極地域観測隊に同行できることとなりました。このような貴重な経験を通して知る「未知なる南極」について、一人でも多くの方に御紹介できるよう、今日から来年3月末までの同行期間に見たり感じたりしたことを、できるだけ現場の雰囲気が分かるように「日記」という形で紹介していきたいと思います。来年3月末までという短い期間ではありますが、可能な限り頻繁に日記を更新していきますので、お気軽に当サイトにお立ち寄りいただければと思います。なお、外洋上では通信事情に限度があるため、容量が大きい画像をアップすることはできないので、昭和基地という我が国南極地域の観測拠点に着くまでは、文章ばかりの退屈な日記となってしまうかも知れません。通信事情の整備されている昭和基地からは、選りすぐりの写真をアップできますので、しばし御容赦いただければと思います。

出発前に鴨下大臣とパチリ!斉藤君、緊張してます。

 さて、まず私が同行している南極地域観測隊についてごく簡単に御説明したいと思います。南極地域観測は、文部科学大臣が本部長を務める「南極地域観測統合推進本部」が実施しているもので、南極地域観測隊(以下「観測隊」という。)は、気象や地学、生物などの科学観測の専門家と、彼らの生活を支える建築・土木や調理、通信などの基地運営の専門家から構成されており、その他に私のような行政官や報道記者など、観測や基地運営の専門家でない者も数名同行します。観測隊は、1956年の第1次隊を皮切りに、1963年と1964年を除く毎年1回昭和基地に派遣されており、今回でなんと49回目を数えます。ちなみに、観測隊には、出発の翌年3月に帰国する「夏隊」と、翌々年3月に帰国する「越冬隊」の2種類があり、往路は一緒に行動します。夏隊は、比較的暖かな南極の夏(日本の冬)のみ活動して帰国するのですが、越冬隊は厳しい冬(日本の夏)を乗り越えて、次隊の夏隊とともに帰国します。つまり、第49次隊の夏隊は第48次隊の越冬隊と、また、第49次隊の越冬隊は第50次隊の夏隊と復路をともにすることとなります。なお、現在、観測隊の派遣には海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」という船が使われており、海上自衛隊による人員及び物資輸送の支援を受けながら実施されています。

 さて、第49次観測隊は、11月28日に成田空港を出発、翌29日にオーストラリアの南西部にあるパース近郊の港町・フリーマントルで、先に到着していた「しらせ」に乗艦しました。その後、フリーマントルにおいて生鮮品の積み込みなどを行った後、本日午前10時、「しらせ」は南極に向けて出航しました。フリーマントルまでお見送りに来られた隊員の御家族や地元の日本人の皆様が、別れを惜しみつつ日の丸を振って見送る姿を見て、観測隊員や自衛官も、気持ちを新たにされていたようでした。私自身も、船が離岸する際には、もう後戻りはできないことや、南極においてなすべき仕事が待っていることを改めて認識し、身が引き締まる思いでした。

フリーマントルにて「しらせ」と

 しかし、そんな余韻に浸る間もないまま、「しらせ」はあっという間に外洋へ入り、陸が見えなくなる頃には、しぶきをあげて前後左右に揺れ始めました。もともと、あまり船が得意でない私にとっては、すでにかなりの揺れだと感じているのですが、これまでに「しらせ」で南極に行った経験のある観測隊員や自衛官いわく、まだまだ揺れはこんなものではないとのこと。特に南緯40度~60度は「暴風圏」と言われ、しっかりとヒモなどで固定しないと、ひどい時には勉強机がひっくり返ることもあるそうです。明日以降、どうなることやら。ちなみに今乗艦中の「しらせ」は今回の往復の航海で退艦することが決まっていて、平成21年度に南極に向け出発する第51次隊からは新艦の「しらせ」(同名)になる予定です。

 今日は、御挨拶からイントロまでということで、かなり長々として説明になってしまいました。明日以降は、「しらせ」内部の様子や隊員の生活ぶり、また、私の人となりや仕事内容なども、少しずつ御紹介してまいりますので、飽きずにお付き合いいただければと思います。