環境省自然環境・生物多様性国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会

第1回「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会」の概要


1.日時

平成18年10月31日
13:30~16:30
環境省共用第1会議室

2.出席委員

磯崎委員、海津委員、梶委員、北村委員、九里委員、熊谷委員、小泉委員、櫻井委員、高橋委員、竹田委員、原委員、羽山委員、速水委員、森田委員、横張委員、吉田委員、渡部委員

3.会議の概要

 事務局より資料1から資料4を用いて検討会の位置づけ、国立・国定公園の指定及び管理運営に関する課題と論点、今後のスケジュール等について説明を行った。委員からの意見とそれに対する事務局回答の概要は下記の通りであった。

【公園指定と生態系・生物多様性保全】

従来の自然風景で守られてきた自然公園と生物多様性の保全上重要な場所にはギャップがある。手薄だった部分のギャップを埋めることが重要。特に海洋・海岸と照葉樹林が不十分である。

国立公園のゾーニング方法を見直すべき。IUCNカテゴリーⅡとⅤの区別で公園別に分けるという考え方もあるが、オーストラリアでは一つの公園の中に生物多様性保全のゾーンとレクリエーションのゾーンを設定している。

国立公園を結んでいくコリドー作りが重要。林野庁でもやっているが国有林の中だけ。コリドー作りに地域制自然公園の特色を活かせないか。

国立公園地域とホットスポットのずれについてデータを用いて評価してほしい。

→(事務局)生物多様性国家戦略の見直しでの話題だと思うが、この検討会でもできる部分は検討してみたい。

トキ、コウノトリ、ヤンバルクイナなど希少種の再導入を計画しているところはいずれも保護地域になっていない。そういった地域を自然公園に入れられないか検討して欲しい。

生物多様性や里地里山の良いところを国立公園に入れようとすると国土のほとんどを国立公園にすることになってしまう。国立公園は優れた自然の風景地であるという原点は忘れないでほしい。国立公園にした上で、生物多様性保全という付加価値をつけていくべき。

原生的な自然環境と人の手が入っているところは分けて検討すべき。

経験的に言って、地形が特殊なところは生物多様性もすぐれているが、データの裏付けはない。地形=基盤環境と生物多様性の関わりを明らかにして、マスコミに報道してもらうなどしてはどうか。

【公園内における二次的自然の管理】

阿蘇の草原は生物多様性保全上重要なところは公園外にある。二次的自然の管理を考える際、公園の周辺部との連携や地元への配慮が必要となる。

里地里山の課題は、担い手の存在が需要。生物多様性保全上優れたところと管理の担い手がいるところをレイヤーで重ね合わせれば、生物多様性保全上重要であり、管理可能な場所が分かるのではないか。担い手からみたゾーニングを検討することが重要。

国立公園内の私有の人工林は、公園外の人工林と管理水準がかわらない。公園内の人工林をバッファーゾーンとしてどのような管理をすれば意味があるのか議論されていない。その必要性について指摘して欲しい。

里地里山は農林業と人の営みで一定の価値を有してきた。公園内の里地里山を保全するためには、国立公園行政が区域内の産業そのもの(農林水産業)を支えていくようにならなければならない。

里地里山は人の方からみて管理運営できる人がいるのかどうかという点から考えていかなければならない。主体を分けて分類して検討していくべき。

【公園内での野生動物管理】

日本の国立公園では、国が野生動物管理を主体的に実施していない。国立公園内でも有害鳥獣については都道府県が許可している。環境省自ら野生動物の保護管理を担うべき。

【公園利用・広報】

エコツアーガイドの中でも、国立公園のイメージが原生自然保護から国民が自由に使える場というものまで様々。規制のある中での利用は付加価値をあげる。しかし、国立公園の規制はハード規制に関するものばかりであり、利用のルールを決めていない。国立公園ではどう振る舞えばよいのかを示さないと、エコツー利用者が親しみのもてるものになっていない。

国立公園の良い景観を見る展望地が実は公園外にあって荒れていることもある。そういった場所の管理も公園利用の観点から重要。

国立公園が話題にならなくなったのは、世界遺産のせいである。マスコミは世界遺産ばかり取り上げ、国立公園の印象が薄くなったが、世界遺産を保障しているのは国立公園である。もっと国立公園をPRすべき。

山に行くと人が集中する場所、集中する時間が決まっている。「利用者多様性」という言葉を提案したい。国立公園は、人々のニーズに答えていくだけでなく、人々の行動、労働に対する考え方、休日や旅に関する考え方を変化させていくテコになるのではないか。キーワードは平準化である。利用の平準化を図るには、労働環境などを変えていかなければならない。

国立公園は世界遺産におされている。PRが上手ではないので、日本の自然のすばらしさを出していくべき。

十和田湖に訪れるお客さんは、国立公園とは何かと捉えるのではなく、自然がすばらしいと捉えている。

自然保護や観光の意識を地元で向上させるには教育が重要になる。

【検討会・分科会の体制】

この管理運営の検討と指定の検討は不可分のところがある。是非とも双方が一緒に議論できるよう要請したい。

→(事務局)分科会の資料や議事要旨については、もう一方の分科会の委員にもお送りし、情報共有を図りたい。

【制度・管理体制】

4年前の改正で盛り込まれた事項の進捗状況と上手くいっていないのであれば、その理由を教えて欲しい。

→(事務局)きちんと分析はしていないが、風景地保護協定と公園管理団体制度については、公園管理団体になることに余りメリットがないこと、利用調整地区については地元や土地所有者の理解を得るのが容易ではないことが理由ではないか。

生物多様性をしっかりやろうとしても環境省の現体制ではできない。原因は財源の問題。そろそろ入園料、利用料をとって、生物多様性を守る、特に生態系のプロセスを守っていくという仕組みを検討してもらいたい。

大企業は社会貢献活動も戦略的に進めるようになってきている。1万人以上の上場企業が国立公園の管理運営にどう関与できるかが大きな論点。

ページのトップへ