海洋生物多様性保全戦略


環境省保全戦略トップ海洋生物多様性保全戦略目次第4章 海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本的視点  > 1.海洋生物多様性の重要性の認識

第4章 海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本的視点

 生物多様性国家戦略2010においては、生物多様性の保全及び持続可能な利用を目的とした施策を展開する上で不可欠な共通の基本的視点として、[1]科学的認識と予防的順応的態度、[2]地域重視と広域的な認識、[3]連携と協働、[4]社会経済的な仕組みの考慮、[5]統合的な考え方と長期的な視点の5つを挙げている。これらの視点は当然ながら全て海洋の生物多様性に関する施策の展開においても重要である。これらに加えて、特に海洋の生物多様性を考えた場合に認識されるべき基本的視点として、以下の5つを挙げる。

1.海洋生物多様性の重要性の認識

 その広大さとアクセスの困難さにより、日常生活の中で海洋の生物多様性を認識することは容易ではないが、その生態系は多様性に富んでいる。深海探査の発展は、太陽光の届かない深い海に、太陽エネルギーに頼らない独立した生態系(化学合成生態系)が存在することを明らかにした。

 また、海洋の生物多様性は、食料としての魚介類や薬などに活用される遺伝資源等の直接利用できる資源を供給するだけではなく、気候調整や水質の浄化等の人類の生存を支えるシステムを支えていることを認識する事が重要である。例えば、藻場、干潟及びサンゴ礁は、多くの海洋生物に生活空間を提供するとともに、藻場や干潟は陸上から流入する水を浄化し、サンゴ礁は外洋から打ち寄せる激しい波を食い止め島に住む人間や生物を守る機能がある。
生物多様性条約の目的である生物多様性の保全、持続可能な利用及び遺伝資源から得られる利益の公正かつ衡平な配分は、それぞれ自然、経済及び社会のあり方をどのように持続可能なものにしていくかという目的であると言い換えることもできる。

 生態系サービスの利用に当たっては、国民が生態系から長期的かつ継続的に得られる利益を考え、健全な生態系を維持管理していく視点を持つことが重要である。その保全と持続可能な利用を継続的に進めていくためには、海洋の生物多様性の重要性が、経済活動や社会生活の中で適切に評価され、その保全が価値あるものとして位置づけられることが不可欠である。


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