海洋生物多様性保全戦略


環境省保全戦略トップ海洋生物多様性保全戦略目次第3章 海洋の生物多様性及び生態系サービス  > 1.生物多様性及び生態系サービスとは何か

第3章 海洋の生物多様性及び生態系サービス

本章では、海洋の生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本的な視点等をまとめる上で、前提となる海洋の機能や地球規模及び我が国周辺の海洋の生物多様性の現状を把握し、整理する。

1.生物多様性及び生態系サービスとは何か

 原始生命体の誕生以来、地球の様々な環境の変化とともに、生命は適応と進化、あるいは絶滅を繰り返し、現在の3,000万種ともいわれる多様さとそのつながりを創り上げてきた。「生物多様性」とは、長い進化の歴史を経て形づくられてきた生命の「個性」と「つながり」であるといえる。ヒトも生物多様性を構成する生物種のひとつであり、生物多様性は、人間が生存のために依存している基盤でもある。

 生物多様性条約において、「生物多様性」はすべての生物の間に違いがあることと定義され、そのなかには多様な動植物種が存在しているという「種間(種)の多様性」だけではなく、同じ種であっても地域等によって違いが生じる「種内(遺伝子)の多様性」や、多様な動植物のつながりによって形成される森林や河川、干潟、サンゴ礁などの「生態系の多様性」も含まれる。
また、このような多様な生物が関わりあう生態系から人類が得ることのできる恵みを「生態系サービス(ecosystem service)」といい、魚介類等の食料や薬品などに使われる遺伝資源等の資源の「供給サービス」、気候の安定や水質の浄化などの「調整サービス」、海水浴等のレクリエーションや精神的な恩恵を与えるなどの「文化的サービス」及び栄養塩の循環や光合成などの「基盤サービス」が挙げられる5

 生物多様性条約の目標である生物多様性の保全と持続可能な利用を進めていくためには、生物多様性に前述のような幅広いレベルがあること、どれかひとつのレベルだけを考えるのではなく全てのレベルを念頭におくことが重要である。


5Millennium Ecosystem Assessment(2005)Ecosystem and Human Well-being Vol.1.
BACK INDEX NEXT