環境省
VOLUME.67
2018年10・11月号

エコジンインタビュー/食品を余らせない秘訣は、レシピをたくさん覚えて引き出すこと。/平野レミ

平野レミ

「私の料理はシェフじゃなくてシュフの料理」と、長年、時短・節約レシピを考えてきた料理愛好家の平野レミさん。

テレビの料理番組などでおなじみだが、実は料理教室に通ったことはなく、家族のために作っていた料理がいつの間にか、多くの人から支持を得るようになった。

そんなレミさんが伝授する、食品を無駄なく使うコツとは?

 「好きなことにまっしぐら」。レミさんの人となりを例えるなら、まずそんな言葉が思い浮かぶ。「一緒に映画を見に行くぞ」と小学校からレミさんを連れ出すような父・仏文学者だった威馬雄(いまお)さんから「好きなことをやればいい」と言われたことが、強く影響しているのだという。
 だから彼女が作る料理も徹底したレミ流を貫き、誰のマネでもなく独創的なものが多い。
「私の性格が不精で気短だから、コトコト長く煮込んだりするのが面倒なの。パパッと早くできなきゃ嫌なんだよね。だけどこんな私の料理が長年ウケてるってことは、世の中の多くの人も不精で気短だってことね」と笑う。

 時間とお金をかけて作る“店の味”ではなく、家事・育児・仕事に忙しい人が作る“家の味”だからこそ、レシピは調理時間が短くお金もあまりかけないというのがレミさんの信条だ。食材もとことん使い切る。最強のお助け節約レシピは『残り野菜カレー』。残ったくず野菜が、絶品のカレーに変わる。トマトやニンジン、ナス、ホウレンソウなど、カレーと相性が良さそうな野菜だけでなく、サトイモやゴボウなど「これ、カレーに入れてもいいの?」と思うような野菜を入れても大丈夫。
「たっくさん野菜を入れれば入れるほど、味が良くなるのよ。ひとつよりも10種類、10よりも20。いろいろな野菜のくずを400g集めて、一緒に炒めて、最後はフードプロセッサーでペーストにしちゃうの。だから野菜同士の味がケンカすることなんてないわよ。なんてったって、カレーの味はどんなものでも美味しくごまかせちゃうんだから!」

料理に「こうしなきゃダメ」なんてない。自由に発想すればいい。

 性格同様に、料理も天真爛漫、何でもござれ。こんなことしちゃうんだ!と驚くような調理方法が飛び出てくる。既成概念に縛られていないことがレミさんの料理の強みだ。だから「食品ロス」という言葉が生まれる以前から、捨ててしまうような食材を使った料理を作っていた。大根の皮を薄くピーラーでむいてパスタに見立てたり、魚の頭や尾を焼いてカリカリにして、ミキサーで砕いてふりかけにしたり。常識に捉われない柔軟なアイデアで料理を生み出す。
「昔、料理教室なんかでは、レンコンの皮をむきなさいって教えていたと思うけど、今は皮にポリフェノールがあるから食べましょうって言うようになったでしょ。世の中で言われてることって変わるのよね。自分の感覚を信じることって大事よ」

 身近なところで生産されたものを食べる地産地消を心がけているのも、おのれの感覚が反応して、警告を鳴らすからだ。
「だってさ、南米のエクアドル産の鶏肉と、地元産の鶏肉を比べて、エクアドル産の方が安いなんておかしいでしょ? たくさんの輸送費やエネルギーをかけて日本に運ばれてくるのにどうして?って、普通に考えれば疑問に感じると思うのよ。それに野菜なんかは、その時季の旬のもので、採れたてだったりすればなおさら栄養をたっぷり含んでいるんだから、地産地消するのって、体にも良いことなのよ」

 秋のおすすめレシピは『フリーズきのこ』。旬のキノコを数種類用意して食べやすい大きさにカットしたら少しの酒と一緒に火を通し、保存袋に入れて冷凍。卵料理に混ぜて良し、味噌汁やごはんに混ぜて良しの、万能アクセントになる。
「料理を作る人はいろんなレシピを頭に入れておくことが大事。そうすれば余ったものが出ても、コレとコレを合わせれば一品になるなって思い浮かぶの。食品ロスなんて、簡単に減らせるわよ」

profile

平野レミ

シャンソン歌手としてデビュー。その後、イラストレーターでエッセイストの和田誠と結婚して主婦になるも、料理愛好家として数々の料理番組や雑誌に登場。アイデアにあふれたレシピを披露して人気となる。オリジナルのキッチングッズの開発や、地産地消を勧めるレシピを考案するなど、多彩に活躍中。

写真/千倉志野

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