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子どもの頃から
エコな暮らしを続けてきた
タレント・LiLiCoが訴える
感じながら生きることの
大切さ

環境問題に対する取り組みが盛んな
スウェーデンで子ども時代を過ごしてきた、
タレント・映画コメンテーターのLiLiCoさん。
現在でも、ごみの量を減らす、
物を捨てずに繰り返し使う、
資源として再利用するなど、
地球にやさしい行動を自然体で行っています。
そんなLiLiCoさんの、日常から注目している
世の中の動き、昔の思い出まで、
たっぷりとお聞きしました。

誰もが当たり前のこととして環境に配慮する
スウェーデン人のライフスタイル

 LiLiCoさんにとって、リサイクルは日常の一部。生まれてから18歳まで過ごしたスウェーデンでは、資源を活用する仕組みが整っており、市民は当たり前のこととしてごみを分別し、再生可能なごみはリサイクルに回していたと言います。

「スーパーマーケットにはアルミ缶の回収機が設置されていて、空き缶を投入するとお金が出てきました」という思い出も。
 これは「パント」と呼ばれるリサイクルシステムで、アルミ缶やガラス瓶、ペットボトルに入った飲料を購入する際、商品代金のほかにデポジット代金を支払い、回収時に返金されるというもの。容器にデポジットマークがついた製品が対象です。

「戻ってきたお金をお小遣いとして子どもに与える家庭も多くて、子どもたちは積極的にお手伝いしていました。最近は現金ではなく、スーパーで使えるクーポン券になっているようです」

 街のいたるところにリサイクルステーションがあり、紙類やプラスチック類なども回収しています。古着を扱うショップもたくさんあったと言います。

「スウェーデンでは着なくなった服は捨てるのではなく、売るのが一般的です。生ごみの処理のためにコンポストを使う家も多かったですね。子どもながらに、家庭から出るごみが本当に少なかったと記憶しています」

 大人になり、東京で暮らし始めたLiLiCoさんが特に驚いたのは、スーパーの店頭に並んでいる野菜や果物が包装されて売られていたことです。

「スウェーデンでは、ほとんどの野菜や果物は売り場に山積みで置かれているんです。だからバナナが一房ごとに包装されているのを見て、なぜ?と思いました。バナナは皮をむいて食べるのだから、そのまま売られていてもいいのに、と。スウェーデンのスーパーは、基本的に量り売りです。必要な量だけを買えるので、そうした売り方はフードロスの削減にもつながっているんですよね」

ひとつひとつの日常の行動が
環境を守ることにつながる

 子ども時代を過ごしたスウェーデンでの経験から、LiLiCoさんの行動の根底には「ごみを増やさない」「無駄を減らす」といった思考があります。

「お店で買い物をした時は、なるべくそのままの状態で受け取るようにしています。お店の人が袋に入れようとしたら『このままで大丈夫ですよ』と言うんです。普段、出かける時はエコバッグを携帯していますが、忘れてしまった時は、買ったお弁当をそのままバッグに入れることもあります。ぜんぜん気にしませんよ」

 日本でも、かつては豆腐屋に行く時に家から鍋を持っていき、それに豆腐を入れて持ち帰るという習慣がありました。

「とても良い日本の文化ですよね。使い捨て容器の使用を軽減できます。お惣菜を買う時も、家から保存容器を持参するような世の中の流れになるといいですよね」

 仕事でも極力、資源の無駄を省いています。例えば、台本。

「ナビゲーターを担当している4時間半のラジオ番組では、以前まで紙の台本だったんです。すごい枚数の紙を毎回使用するのがもったいなくて、今はiPadに替えました」

 テレビに出演する際の衣装にも工夫があります。

「過去に自分に課していた、毎回違う服を着るというルールをやめて、同じ衣装を着回すようにしています。どの服も自分に似合うと思って買ったものですから、ベルトやアクセサリーを変えたり、何かを羽織ったりなど工夫して着こなしを変えればいいですよね。服もアクセサリーも、大切に使い続けています」

 また、“料理は買い物から始まる”と言い、食材を無駄にしないように心掛けているそうです。

「普段から冷蔵庫はいっぱいにせず、使い切れる量だけ買って料理しています。主人の帰宅が遅く晩ごはんがいらない日もあるので、作り過ぎて余らせないように、お互いにちゃんと連絡を取るようにしていますよ」

再生ガラスを使ったボトルと漁網から作るTシャツ
リサイクルから始まった新たな取り組み

 最近、LiLiCoさんが注目している新たな取り組みのひとつが、大好きなシャンパーニュに関するもの。

「ロゼシャンパーニュって、ほんのりとしたピンク色をしているので、その色を目でも楽しめるよう無色のガラスびんに入っていますよね。だけど、あるメーカーは環境に配慮して、再生ガラスを使用した、色付きのボトルを採用しているんです」

 再生ガラスを使用すると、元の色の影響を受けてさまざまな色合いのワインボトルが製造されます。しかし、規格外の色のボトルは、通常は選別され廃棄されてしまいます。この過程で多くの資源やエネルギーが無駄になってしまうので、このメーカーでは、ロゼシャンパーニュを含めたすべての商品で、できあがったボトルを無駄なく採用するという方針に転換したと言います。

「すごくいい試みですよね。見つけたら、絶対に買おうと思っています」

 もうひとつは、海洋プラスチックごみの原因となる漁網に関することです。

「あるイベントで、廃棄予定の漁網を回収してリサイクルし、その素材でTシャツを作っている方と知り合いました。興味が湧いて詳しく話を聞いたら、協力してもらえる港が少なくて漁網がなかなか集まらないという課題があると言うんです。私は『伊豆稲取キンメマラソン』のアンバサダーを2016年から務めているので、稲取にはたくさん知り合いがいます。稲取は漁業が盛んですから、すぐに連絡をとって紹介しました。漁網がTシャツに生まれ変わって、それが、例えば『伊豆稲取キンメマラソン』の記念Tシャツになったら最高だと思いませんか。ワクワクしますよね」

 最近では漁網をTシャツやレインコート、トートバッグ、スクールリュックなどさまざまなものに再生利用する動きが広がっています。こうした取り組みが進むことで、海洋ごみの削減につながります。

子どもたちが環境について学ぶことで
地球の未来は大きく変わる

 LiLiCoさんの現在のライフスタイルは、子どもの頃のスウェーデンでの経験が大きく影響しています。そして、日本の子どもたちの環境への関心を高めるためにも「教育が大事」と言います。子どもたちにどんなことを伝えたいと考えているのでしょうか。

「以前、鼻にストローが刺さったウミガメの映像が話題になりましたよね。あの時、プラスチック製品は良くないという意見が出ました。だけど本当に良くないのは、それを海に捨てること。だから、ごみが海に流出しないよう不要になったら回収して、リサイクルすることが大切だと思います。子どもたちには、まずは身近なことから教えてあげたいですね」

 街の清掃ボランティアに積極的に参加している、LiLiCoさんならではの視点です。

街の清掃ボランティア集合写真
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SSFF & ASIA

アンバサダーを務める「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」では、映画監督やプロデューサーたちと、毎年、表参道〜原宿の清掃活動を行っています。

 また、子どもの頃に毎年参加していたサマーキャンプでは、印象に残っているイベントがあったそうです。

「みんなで森に入って、野うさぎやシカ、トナカイとか、いろいろな野生動物のフンを見つけるという遊びです。子どもたちは夢中になって探すのですが、ある年に、落ちているフンが減っていることに気づいたんです。つまり、森の中にいる野生動物が減少しているということなんですよね」

 そういった発見をすること、疑問を持つことが環境問題への関心につながります。さらに、身近な体験では工場見学もおすすめだと言います。

「数年前に、回収されたプラスチック製食品トレーの再生工場を見学したことがあるんです。粉々になったプラスチックが、また新しい製品に作り替えられていく過程は面白いですよね。子どもたちが参加することで、循環型社会について考えるきっかけになってほしいと思います」

 幼い年齢からさまざまな経験を積み重ねていくことで、環境問題への興味はどんどん膨らみます。好奇心が強く吸収が早い子どもたちへの教育は、未来を大きく動かすことになりそうです。
 最後にLiLiCoさんが考える“エコジン(エコロジー+人)”とは、どのような人かを聞いてみました。

「いつも何かを感じながら生きている人です。例えばサマーキャンプで野生動物のフンが減っていることに気づいた時も、その事実から何を感じ取るかでその後の行動が変わります。人がいない部屋の電気がつけっぱなしになっていたら、あれ?と思って消す。一人ひとりのそうした意識が、社会をより良くする力になると思っています」

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LiLiCo

タレント、映画コメンテーター。1970年スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日、1989年から芸能活動スタート。 TBS「王様のブランチ」、J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」などレギュラー番組も多数。アニメ「サウスパーク」日本語吹き替え版では声優としてカートマン役を担当、ナレーション、俳優などマルチに活躍するほか、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア、TBSドキュメンタリー映画祭のアンバサダーも務める。株式会社エフピコのリサイクル活動『トレーtoトレー』のイメージキャラクターを2022年まで担当。

写真/サカイデジュン
原稿/今泉愛子

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