[ 特集 ]図解でわかる!環境問題地球を見守る人工衛星!
日本が誇る最新技術GOSAT!
温室効果ガスってなに?
最近よく耳にする「温室効果ガス」。地球温暖化の原因とされていますが、
どんなメカニズムによって温室効果をもたらしているのでしょう。
温室効果ガスがないと地球は凍る?
温室効果ガスによる地球温暖化の仕組み

温室効果ガスが赤外線を吸収し地球を温める
太陽から放射された熱エネルギーは、地球の表面を温めます。そして、温められた地表面から熱が赤外線として放出されます。二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの温室効果ガスはこの赤外線を吸収する性質を持っており、熱が宇宙に逃れることを防ぎ大気を温めているのです。現在の地球の平均気温は約14℃ですが、温室効果ガスがなければ約-19℃になるといわれています。近年は温室効果ガスが大量に排出された結果、大気中で吸収される熱が増加し、地球温暖化につながっていると考えられています。
温室効果ガスの種類は?
人為起源温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量(2019年)

※IPCC第6次評価報告書 WG3 Figure SPM.1-a「人為起源GHG排出量の推移」より(2019年の割合)
各項目の構成比を%で表示しています。端数処理の都合上、合計が100%になりません
二酸化炭素とメタンが多くを占める温室効果ガス
化石燃料の燃焼や廃棄物の焼却、天然ガスの漏出など人類の活動によって増加した主な温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン類等があります。気体の種類によって温室効果の程度は異なりますが、二酸化炭素とメタンが大きな影響を与えています。
※CO2換算とは、温室効果ガスがおよぼす地球温暖化の影響についてCO2を基準に計算した数値。
例えば、メタンにはCO2の25倍の温室効果があるので、1tのメタンが排出されたとすると25tのCO2が排出された計算になります。
地球を丸ごと測るGOSATプロジェクト
温室効果ガスの実態を把握するために、環境省と国立環境研究所(NIES)、
JAXAが共同で実施しているGOSAT(温室効果ガス観測技術衛星)プロジェクト。
宇宙から地球を丸ごと測ります。
日本の先端技術が、
気候変動に関する科学の発展に貢献
3者が共同で実施するGOSATプロジェクト

温室効果ガスの状況を把握するGOSATプロジェクト
地球温暖化のリスクを予測する上で、地球全体の温室効果ガスの状況を把握することはとても重要。GOSATプロジェクトでは、2009年に温室効果ガス観測を専門とする世界初の衛星「GOSAT」を、2018年には「GOSAT-2」を打ち上げ、二酸化炭素とメタンの濃度を観測し続けています。地球全体としての傾向を準リアルタイムに把握することができ、気候変動に関する科学の発展や政策検討に貢献しています。2025年度前半には、さらに精度を高めたGOSAT-GWの打ち上げが予定されています。
GOSAT/GOSAT-2の軌道イメージ

地表付近の二酸化炭素濃度とメタン濃度の分布

©Bascule/Tellus/MOE
original data provided by JAXA/NIES/MOE
GOSATプロジェクトにより地球全体を観測
GOSATとGOSAT-2は北極南極上空を通る軌道を約100分で一周。地球が自転するため、それぞれ3日(GOSAT)、6日 (GOSAT-2)で地球全体を観測できます。こういった地球全体の観測結果と補助データから求めた地表付近(高度約340m)の二酸化炭素とメタンの濃度分布をみると、地球全体の濃度の濃淡が確認できます。
二酸化炭素濃度とメタン濃度の推移

※最新データは「国立環境研究所ホームページ(https://www.gosat.nies.go.jp/index.html)」で公開
*それぞれ気体の濃度を表す単位で、ppmはParts Per Millionの略で100万分の1を、ppbはParts Per Billionの略で10億分の1を示す
Original data provided by JAXA/NIES/MOE
GOSATプロジェクトが温室効果ガスの実態を明らかに
GOSATとGOSAT-2で地球全体の観測を継続して行うことにより、二酸化炭素とメタンがともに増加し続けていることが結果として明らかになりました。この一貫性のある観測結果は、各国が取り組むべき二酸化炭素やメタンの排出削減の進捗状況の把握に役立つとともに、温室効果ガスの影響の予測や地球温暖化に対する適応策の検討に当たっても大きな意義があります。
格段に精度が向上するGOSAT-GW
地域や企業の環境対策にも貢献可能
これまでのGOSATとGOSAT-GWの観測地点の違い

地域や企業の環境対策にも貢献可能
GOSATプロジェクトでは、精度が大幅に向上するGOSAT-GWを2025年度前半に打ち上げ予定。国レベルでの活用が可能なGOSAT、GOSAT-2に対し、GOSAT-GWではより狭い範囲の観測が可能になります。例えば地域や企業において活用することで、排出削減の取り組みの進捗状況を客観的データで把握可能になることが期待されます。
広がる、GOSATプロジェクトの可能性
日本の最新技術で大気中の温室効果ガスを観測するGOSATプロジェクト。
正確で公正な観測データには、どのような価値や可能性があるのでしょう。
パリ協定の推進を国際的な連携でサポート

信頼性の高い正確な測定で国際的に貢献
2015年に合意された「パリ協定」では、先進国・途上国を問わずに温室効果ガス排出の削減目標を掲げ、実施状況を報告することが求められています。一方で目に見えない温室効果ガスの吸収量/排出量を、正確に測定し信頼ある形で報告することは簡単ではありません。GOSATプロジェクトは国際的な連携を図り、世界が一丸となって「パリ協定」の実施に向けた取り組みを行える、正確で信頼性の高い体制づくりをサポートしています。NASAとは協定を締結し、日米間の衛星で取得した温室効果ガス観測データの相互比較・利用を通してデータ精度の向上や地球規模での温室効果ガス分布変化の把握に貢献してきました。
GOSATプロジェクトの
排出量推計技術をスタンダードに

モンゴルとインドはGOSATデータを公式利用
モンゴルとインドでは自国の排出量の正確性を、GOSATの排出量推計技術を活用して検証し、その結果を国連に公式報告しています。今後はこのような活用事例を、まずは中央アジアの国々に広げ、さらには国際的なスタンダードとすることを目指しています。
日本の技術が、世界の意識を変えていく
GOSATのデータは国立環境研究所のサイト
(無料のユーザー登録で誰でも利用可能)から公開されており、
国はもちろん自治体や民間企業なども活用できます。
正確な観測が身近になれば、
世界の温室効果ガス排出に対する意識が高まるのではないでしょうか。
それは、地球温暖化対策への力になるはずです。