[ 特集 ]図解でわかる!環境問題小さな命の営みも、
私たちの日常につながっている
生物多様性の損失が人類の大きな課題に
「生物多様性」とは、動物や植物はもちろん、目に見えない微生物など、
多種多様な生物が関わり合いながら生きていることを表しています。
人類にとって、なぜ生物多様性が重要なのか、見ていきましょう。
ミツバチがいなくなると、食料不足になる!?

生物多様性=生物の豊かな個性とつながり
ミツバチが受粉の働きをすることはよく知られていますね。その働きは、イチゴ、りんご、メロン、玉ねぎ、キャベツなど多くの農作物に欠かせないものとなっています。世界の主要農作物の4分の3以上は、昆虫や鳥などによって花粉が運ばれることに依存しているという調査結果※もあります。つまりミツバチなどの昆虫や鳥がいなくなると、食卓にも大きな影響が出てしまうのです。このように自然界ではさまざまな生物がつながり合い、直接的・間接的に支え合って生きています。このことを「生物多様性」といいます。
※IPBES 花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関する評価報告書 政策決定者向け概要(SPM)の解説(環境省)より
「生物多様性」が、私たちの生活を支えている

世界のGDPの半分以上は自然資本に依存
動物や植物、目に見えない微生物など、地球には3,000万種もの生物がいるとされています。私たちの毎日の食事や医療、文化、産業のどれをとっても、生物多様性からの恩恵がなければ成り立ちません。生物多様性は社会経済を支える重要な資本であり、空気や水、鉱物などと合わせて「自然資本」と呼ばれています。世界経済フォーラム(2020年)※によると、世界のGDPの半分(約44兆米ドル)以上の経済的価値の創出が自然資本に依存しているといわれています。
※自然関連リスクの増大:自然を取り巻く危機がビジネスや経済にとって重要である理由(2020年、世界経済フォーラム)
生物多様性が急速に損失している
私たちに多大な恩恵をもたらしてくれる生物多様性が、
これまでにない速さで失われつつあります。
私たち人類が持続的に発展していくためにも、
生物多様性の回復が求められています。
加速する種の絶滅速度
1500年以降の絶滅

※1500年以降の脊椎動物の絶滅種の割合。爬虫類と魚類の割合は全種評価に基づくものではない。
資料:IPBESの地球規模評価報告書政策決定者向け要約より環境省作成
生物多様性の主な損失要因

※IPBES地球規模評価報告書を参照
加速する生物多様性の損失と貧困問題
人間活動の影響により、過去50年間の地球上の種の絶滅は、過去1,000万年平均の数十倍、あるいは数百倍の速度で進んでいるといわれています。そして、生物多様性の損失は貧困問題にもつながっています。もともと発展途上国では自然環境 と直接的につながる生活を営んでおり、先住民を含む16億人が森林に生計を依存しているというデータがあります。森林伐採などの開発や気候変動の影響などによって生物多様性が損なわれると、そうした人たちの暮らしそのものが脅かされてしまうのです。貧困はさらなる生物多様性の破壊につながり、悪循環が生じています。
ネイチャーポジティブが世界のミッション

生物多様性の損失を止め、回復を図る
ネイチャーポジティブ(自然再興) とは、生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道に乗せること。2050年までに人類が自然と共生する世界を実現するために、2030年までに達成することが世界目標として掲げられています。この実現のためには、生物多様性の損失を抑えて止める施策と回復を図る施策の両方を推進していくことが必要です。
私たちにできること
生活のあらゆるシーンで環境への配慮を心がけることが、
ネイチャーポジティブにつながります。
一つ一つは小さなことでも、積み重ねることで、大きな力になります。
明日から取り組める、私たちにできることの例

ネイチャーポジティブ経営を私たちがサポート
私たち生活者の選択が企業の取り組みを支える
企業の取り組みにおいて、自然保全を事業の重要課題として位置づける「ネイチャーポジティブ経営」が、重要視されています。私たち生活者も、その活動を支えることができます。生物多様性に対する企業の考え方を知ることや、生産背景、製品調達背景などにも目を向け、選択することが、ネイチャーポジティブ経営を行う企業の後押しとなり、ネイチャーポジティブの実現につながります。

人類は、人類だけでは生きていけない。
地球に存在する生物は、長い歴史の中でそれぞれの個性を認め合い、
お互いにつながり支え合って生きてきました。
私たち人類も、生物多様性の中の一つです。
生物多様性の回復は、私たち自身を守るためにも、避けては通れない課題なのです。