FEATURE [ 特集 ]
サッカーから環境を考える!
環境省×Jリーグの
ミライに向けた取り組み
環境省はJリーグと連携協定を結び、
気候変動問題の解決に向けた
さまざまな気候アクションに
取り組んでいます。
未来の可能性を高めるために
地域を通じてその輪は広がっています。
CONTENTS
環境省×Jリーグの
連携事業って?
2021年6月、環境省とJリーグはともに気候変動対策をはじめとした地域に根ざした取組を進めることを目指し、連携協定を締結しました。環境省は、全国に60のクラブがあり、地域に大きな影響力のあるJリーグと連携することで、さまざまな環境政策を展開。
一方、Jリーグは、地域に根ざしたSDGsの取り組みを、環境省の知見を活用しさらに強化していくという目標を掲げました。それぞれが持つ“知見・強み・特徴”を広く共有して、手を取り合って環境問題に取り組んでいます。
締結から2年、なぜJリーグが環境省とタッグを組んでいるのか、さらにどのような未来を描いているのかを、Jリーグ執行役員(サステナビリティ領域)の辻井隆行さんにお話を伺いました。
教えて! 辻井さん
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教えてくれる人 辻井隆行さん
早稲田大学大学院社会学科学研究科(地球社会論)修士課程修了。2019年パタゴニア日本支社長を退任。その後、自然と親しむ生活を送りながら、社会活動家/ソーシャルビジネスコンサルタントとして、企業やNPOのビジョン・戦略策定を手伝う。現在はJリーグで執行役員として、サステナビリティ領域を担当。
なぜJリーグが気候変動に
向き合うことが大事なの?
このまま気候変動対策を行わないと、フットボールをできる環境そのものが脅かされるというのが一番です。例えば、台風の激甚化や線状降水帯による集中豪雨などによって中止になった試合が、直近の5年間で約60試合あるんです。その前の5年間は14試合でしたからこの10年を見ても、ものすごいスピードで状況が変化しています。特にフットボールの場合、同じ地域同士のダービー戦が延期、中止に追い込まれる事態が起こっていることも象徴的です。
環境省×Jリーグが果たす
役割、可能性を教えて。
Jリーグは、日本全国をカバーしているクラブの活動を円滑に、かつより良いものになるようにするためのプラットフォームだと思っています。全国規模の組織であることを活かしてムーブメントを牽引することが大事な役割の一つです。もうひとつは、全国に散らばるクラブの強みを活かして、地域の社会システム、エコシステムを変える、そのハブになることができるといいなと思っています。環境省とJリーグが連携協定を結んでいることから、各クラブから脱炭素の取り組みについての相談や、大宮アルディージャの「デコ活」の実施などといった例のように、クラブからのオファーが一定数集まっています。環境省に後押しをいただき、環境的・社会的・経済的にプラスになるような「ロールモデル」を作り、より多くの地域の企業を巻き込みながらその輪を広げていきたいと思っています。別の言い方をすれば、地域が元気になることと環境が再生する輪が重なる部分を重視したいと考えています。
環境活動を通して
伝えていきたいことは?
Jリーグでサステナビリティ部として気候アクションにフォーカスしているのは、今のこの瞬間、ひとりひとりができるだけ幸せになる可能性が高い社会になることを望んでいるからです。フットボールはそもそもみんなが幸せになるために、良い感情を得るためにやっていることです。その本質を忘れないように、共有しながら環境活動を進めていきたいと思っています。
環境省×Jリーグで
今後やっていきたいことは?
環境省×Jリーグの取り組みはこれからもずっと続けていきたいと思っています。なかでも地方環境事務所とクラブが一緒に取り組む事例に対して、環境省×Jリーグがサポートし、両輪でもっと活性化していきたいと思いますし、そのためにできることはまだまだあると思います。しっかりとしたロードマップを作成し、環境省にアドバイスを頂きながら焦らず一歩ずつ進んでいけたらと思います。
環境省×Jリーグ
の取り組み
TOPIC!
環境省×Jリーグ
連携協定締結2周年
記念イベント
Jリーグは2023年7月31日、環境省×Jリーグ連携協定締結2周年記念イベントを東京・丸の内で開催し、NTTグループ・明治安田生命保険相互会社・丸紅新電力株式会社と、気候アクションに特化した「Jリーグ気候アクションパートナー」契約の締結を発表しました。2023シーズン全公式戦カーボンオフセットをはじめとしたJリーグ・Jクラブが行う気候アクションの推進や、気候変動対策への興味関心の喚起・増加、行動変容への寄与を目指しています。
また、各クラブではカーボンニュートラルの社会に向け
脱炭素につながるイベントを開催し、地域のみなさんとともに環境について考えるきっかけづくりを行っています。
事例を少しみてみましょう!
CASE STUDY
気候アクションに向けた
「デコ活 AtoZ
キックオフデー」を開催!
〈 Jリーグ公式戦 〉
大宮アルディージャ VS.
ヴァンフォーレ甲府
大宮アルディージャでは、2023年10月29日にNACK5スタジアム大宮で開催された、2023明治安田生命J2リーグ「大宮アルディージャ対ヴァンフォーレ甲府戦」にて、脱炭素社会実現に向け、ファン・サポーター、パートナー企業、地域団体、行政、メディアと連携してイベントを実施。パネルディスカッションやクイズ、エコドライブ体験などを通じて、参加者の“環境に対する意識”の向上、“脱炭素社会に向けた具体的な行動”の実践につながりました。
環境省 モバイル
バッテリー回収
キャンペーンを実施!
〈 Jリーグ公式戦 〉
川崎フロンターレ VS.
京都サンガF.C.
2023年11月12日に等々力陸上競技場で開催された、2023明治安田生命J1リーグ「川崎フロンターレ対京都サンガF.C.戦」にて、リチウム蓄電池を原因とした廃棄物処理施設等での火災防止のためのイベントを開催。環境省ブースではパネル展示やモバイルバッテリーの回収のほか、チラシの配布やスタジアム内のビジョンで動画放映を行いました。
各クラブや
地方環境事務所の
取り組み
ほかにもロアッソ熊本と環境省九州地方環境事務所による、阿蘇草原再生や熱中症対策に関する連携活動が行われたり、松本山雅FCがクラブの魅力を発信するために、クラブツーリズムとタッグを組み、中部山岳国立公園の一部である乗鞍高原で旅行ツアーを実施。各クラブでの取り組みがどんどん広がっています。
(写真左)九州地方環境事務所と
ロアッソ熊本との連携活動https://kyushu.env.go.jp/topics_00090.html
(写真右)中部山岳国立公園×松本山雅
モニターツアーの様子https://www.youtube.com/watch?v=H3cRkEnoaaE
Jリーグ・各クラブの
サステナブルな
取り組み
TOPIC!
Jリーグでは、2023シーズン全公式試合を対象に、CO2排出量の可視化に取り組みました。全J60クラブの協力のもと、会計データからCO2排出量を計算。スタジアムによっては、試合日のみのデータ取得が難しいケースもあり、得られた個別データから推定値の算定にも取り組みました。
その結果、1200試合のCO2排出量は3,800tCO2前後(2023年12月末時点)と概算が出ています。そのうちの約7割が電気由来のCO2となっています。Jリーグとして、気候アクションパートナーの協力を得て、公式戦の電力を実質再生可能エネルギーとすることで、温室効果ガス排出量をゼロとすることができました。
各Jクラブでは、地域の団体や市町村、企業と協働して、さまざまなサステナブルな取り組みを行っています。今回は、全クラブの取り組みの中から3クラブの取り組みを紹介します。
ヴァンフォーレ甲府
地元NPO法人や企業と協働し、2004年からスタジアムでのドリンク販売には、繰り返し使えるリユースカップを100%使用。ドリンクを購入する際に、代金にデポジットを上乗せして支払い、カップを返却するとデポジットが払い戻しされる仕組みを、すべてのホームゲームで取り入れています。2023シーズンの途中からは、自動でリユースカップを回収しデポジットを払い戻す回収機を導入しています。
ヴァンフォーレ甲府SDGsへの取り組みhttps://www.ventforet.jp/club/sdgs.html
清水エスパルス
海洋プラスチック問題を考えるきっかけになるイベントをJAMSTEC(海洋研究開発機構)と協働で開催。マイクロプラスチックが人体や魚に及ぼす影響を体感できるような工夫をしています。
エスパルスエコチャレンジhttps://www.s-pulse.co.jp/csr/eco
横浜F・マリノス
ホームタウンである横須賀市とタッグを組み、人工芝グラウンドのごみ(人工芝片)を新たなスポーツ用品にアップサイクルする事業「SHIBA-Up」を展開し、マーカーコーンへと再生しています。
横浜F・マリノスホームタウン活動
ほかにもスタジアム内で消費される飲食容器のリサイクルや、会場周辺の清掃活動など、少しでも環境に負荷をかけないために、ひとりひとりに何ができるのかを地域の皆さんとともに考え、 持続可能な未来をつくるための取り組みをしています。
https://www.f-marinos-sportsclub.com/f-marinos-sports-club-report-2022/
まとめ
ともに考え、地域一帯で
持続可能なミライを
つくりましょう!
- ▶ 脱炭素社会(カーボンニュートラル)、循環経済(サーキュラーエコノミー)、分散型社会への移行を進めるための知見の共有や普及活動、行動変容を促すうえで環境省とJリーグがともに協力しあっている。
- ▶ 環境省×Jリーグの力で、Jリーグのホームタウンの地域資源を最大限に生かした地産地消の取り組みを推進していく。
- ▶ 各クラブが、地元の企業や自治体・サポーターなど地域一帯で連携し、脱炭素社会の実現を目指してアクションを展開している。