環境、エネルギー問題に
つながる食品ロスの話

 本来、食べられるのに、さまざまな理由から捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」といいます。世界では年間で全生産量の3分の1にあたる約13億tもの食べ物が、そして日本でも570万tが廃棄されています。
 大量の食品ロスは"もったいない"だけでなく、廃棄には多くのコストがかかります。また、食料の生産や加工、流通においては多くのCO2を排出していることからも、食品ロスの削減は環境負荷の低減のためにも重要です。

1日に、おにぎり1個分のご飯が!

 日本の食料自給率(カロリーベース)は37%。先進国でもっとも低い数字です。私たちは外国から食料を輸入しながら、年間570t=東京ドーム約5杯分、国民一人あたり年間約45kg、一日にするとおにぎり1個分程度のご飯を廃棄していることになります。

 一方で、日本でも子どもの7人に1人が食事に困っているという状況が報告されています。たくさんの食料を輸入し、それらが捨てられている一方で、日々食べることに困っている人がいる。食品ロスは、そんな社会の問題も映し出しています。食べることは日々のこと。一人ひとりの心配りと行動で、食品ロスを減らすことはできるはずです。

食品ロスの発生量5年間の推移
2015年、家庭系289万トン、事業系357万トン、計646万トン。2016年、家庭系291万トン、事業系352万トン、計643万トン。2017年、家庭系284万トン、事業系328万トン、計612万トン。2018年、家庭系276万トン、事業系324万トン、計600万トン。2019年、家庭系261万トン、事業系309万トン、計570万トン。※端数処理により合計と内訳の計が一致しないことがあります。

食品ロスを減らすために
今すぐできる3つの行動

 食べ残す、買いすぎる、消費期限が迫っている、あるいは過ぎてしまう……。食品ロスの原因として考えられるのが、こうした行為や状況です。いずれもちょっとした気遣いと工夫次第で、廃棄を避けることは決して難しいことではありません。

 「買いすぎない」「作りすぎない」「食べ切る」。この3つの行動には、いずれも、今日、これから、できることがいろいろあります。

POINT1 買いすぎない

 お店に行くと、目につく場所に積み上げられた新商品やセール品。つい手に取りたくなりますが、保存のきかない生鮮品などをたくさん買っても、なかなか食べ切ることはできません。買い物に行く前は、重複買いを避けるためにまず、冷蔵庫をチェックすることを習慣にしましょう。

 環境省では、食品ロスダイアリーをつけることを推奨していますが、廃棄している食品や食べ残しを記録することで、食品ロスを減らす効果が認められています。

 また、買い物の際は棚の手前の商品を取る「てまえどり」をすれば、販売期限の迫った商品の廃棄削減につながります。

買いすぎ、消費期限切れによる庫内の食品廃棄を防ぐ

 全体の46%は家庭から発生している食品ロス。これには冷蔵庫の食材を使い切れなかったケースも多いと見られています。例えば冷蔵庫に何があるかを思い出せず重複買いをし、やむなく食材を捨ててしまったという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

 食材の残量を管理することで、食品ロスを減らしてくれるのが、パナソニック(株)が開発したストックマネージャー機能です。食のサービスアプリ「キッチンポケット」と「重量検知プレート」があれば、どの冷蔵庫でも使用可能です。まずはアプリに重量検知プレートを登録。その後、残量を把握したい食材を重量検知プレートに載せれば、冷蔵庫を開けなくても、庫内の食材の残量の変動が自動的に更新されます。外出先からの確認、家族での情報共有ができる上、ストック残量や利用期限を設定すれば通知も入るので、食材の残量変化のグラフ表示を楽しみながら、買い忘れや使い忘れを軽減できそうです。

 こうした機能やアプリケーションを上手に利用して、買いすぎ、消費期限切れによる廃棄を減らすのも一つの方法です。

POINT2 作りすぎない

 誰かが、自分が、せっかく作ったご飯を食べ残してしまうのは、料理を作りすぎてしまうから。食材、労力、時間、費用、廃棄に伴う環境への負荷など、作りすぎは多くのエネルギーを無駄にしています。

 食事の基本は腹八分。自分や家族の体調と健康を考えて、食べ切ることができる量を作ることを心がけましょう。作りすぎてしまった場合でも、工夫次第で新たな料理にすることは可能です。クックパッドの「消費者庁のキッチン」では食品ロスを削減するために、消費期限の近づいた非常食や残り野菜を活用したレシピを紹介しています。

最後までおいしく食べ切るための冷凍保存の技

 「作りすぎたおかずの冷凍保存の基本は、作ったその日のうちに冷凍すること。乾燥や鮮度が落ちる前に冷凍します」とは、料理研究家で食品ロス削減アドバイザーの島本美由紀さん。保存にはラップと冷凍用の保存袋の2つを使いますが、保存袋は厚みがある破れにくい物を選びましょう。

 手順と保存のコツについて島本さんは、「まず粗熱を取ってから冷凍用の保存袋に入れ、空気を抜き、薄く平らに整えます。こうすると冷凍・解凍も早く、省スペースで収納できます。さらに“立てる収納”が基本!冷蔵庫内に何があるか、ひと目で確認できますよ。またハンバーグは1個ずつ、唐揚げは食べる量ごとにラップしてから冷凍用保存袋に入れると水分がキープされ、おいしく解凍できます」とのこと。食べやすい量ごとにおかずを分けて冷凍し、食べたい分だけ取り出して解凍すればおいしくいただけます。

 さて、カレーやミートソースは保存袋に入れて冷凍してもよいのですが、島本さんのおすすめは牛乳パックを利用した保存方法。四隅に切り込みを入れて内側に折るようにフタをすれば、色移りや匂いを気にすることもありません。

 冷凍したものは、1カ月を目安に食べ切りましょう。保存袋に日付と名前を書いておくと、使い忘れを防ぐことができます。

POINT3 食べ切る

 家でも外でも、料理は食べられる分だけ食卓に載せることが食品ロスを減らす基本。とはいえ、外食時など、食べたい、食べられるだろうと注文した料理を残してしまうことはあるものです。そんなときは料理を持ち帰ることができるか、お店の人に聞いてみましょう。

 環境省では、消費者と飲食店の相互理解のもとで、飲食店等における食べ残しの持ち帰りをより身近な文化として広めることを目的として2020年10月にNewドギーバッグアイデアコンテストを開催し、飲食店での食べ残しの持ち帰り行為の新たな名称として「mottECO(モッテコ)」を選定しました。またmottECOを導入する自治体や事業者、消費者への啓発活動を始めています。マイ箸持参に続く、外食時のmottECO、持ち帰りという新たな習慣で、“食べ切る”を実践しませんか。

食べ残しは「持って帰ります」を標準に

 食べ残した料理を自分の責任で持ち帰る文化を日本でも定着させたいとの考えから、(株)セブン&アイ・フードシステムズが経営する「デニーズ」とロイヤルホールディングス(株)の「ロイヤルホスト」のファミリーレストランの大手2社は、2021年5月から関東・関西圏の60店舗で「mottECO」をスタートしました。

 持ち帰り希望者は、実施店が提供するmottECO専用容器に、残したものを自分でパッキング。専用容器はプラスチックではなく環境に配慮した紙資源(*1)を採用しています。本来は競合関係にある2社が共同で行うことで、より強力な発信力によって普及促進につなげたいというのが狙いでしたが、mottECO実施前から持ち帰りに応じていたデニーズでは、実施後の10月以降利用者は約1.5倍に増え、「官民挙げた取り組みが社会習慣の変化につながる」(セブン&アイ・フードシステムズ広報担当)と期待しています。

 また、「飲食店には1人前の量や食材管理の仕組みを見直す勇気が、お客様には『持って帰ります』と言っていただく勇気が大切」(ロイヤルホールディングスCSR担当)との認識も新たにしました。食材も料理もすべてが廃棄されることのないよう、飲食店と消費者が同じ思いで行動する一歩がスタートしています。

*1 森林会議協議会が認証している植物由来、環境に配慮したFSC認証材

食品ロスを、他人事ではなく自分事として考える

 食べることは私たちの暮らしに欠かせないこと。食品ロスは決して他人事ではありません。「食べ物をムダにしない」習慣を身につけることは、エネルギーの無駄遣いを減らすことだけではなく、旬の食材を大切に感じたり、料理を作ってくれた方に思いを寄せたり、私たちに豊かな食生活をもたらしてくれるのではないでしょうか。

 2021年度に環境省が実施した「食品ロス削減環境大臣表彰」では、競合する企業がタッグを組んで食べ残しのお持ち帰りを推奨したり、行政と企業が協働で、家庭で余っているまだ食べられる食品を集めて福祉団体などへ提供するフードドライブを実施したりする取り組みなどが表彰されました。

 食品ロスの削減へ向けて、社会全体が何をできるか考える時が「今」です。一人ひとりができることを考えてみましょう。

イラスト/ナカオテッペイ
写真/PIXTA(2-1上、2-2上)

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