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今月のキーワード PFAS
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近年、PFAS(ピーファス)や有機フッ素化合物と呼ばれる化学物質が関心を集めています。国内の環境中からも見つかっており、人や動植物への影響を調べるなど、安全・安心のためのさまざまな取り組みが行われています。分かっていることと分かっていないこと、現在行われている対策など、PFASについてまずは理解することが大切です。
1. PFAS(ピーファス)とは?
PFASとは、主に炭素(C)とフッ素(F)からなるペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物の総称です。PFASと呼ばれる物質は1万種類以上あるとされ、強く安定した炭素・フッ素結合を持つのが特徴です。撥水・撥油性(はっすい・はつゆせい)※1、熱・化学的安定性※2といった特性があることから、PFASのうち一部の物質は、界面活性剤、プラスチックなどの表面処理剤、潤滑剤(じゅんかつざい)※3、泡消火薬剤(あわしょうかやくざい)※4といったさまざまな用途に使用されてきました。古いものでは半世紀以上前から使われてきたものもあります。
※1 水や油を弾く性質のこと。
※2 熱やほかの物質から影響を受けにくい性質のこと。
※3 物体間の摩擦を低減し、動きをスムーズにするための物質。
※4 主に油火災が発生した際、水のみで消火するのが難しい場合などに用いられる薬剤。
PFASのうち、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、2000年代はじめ頃まで幅広い用途で使用されてきました※5。また、両物質の代替品として、同様の性質を持つPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)も使われてきました。しかし2009年以降、これらの3物質は環境中での残留性や人への有害性への懸念などから、国際的に規制が進み、今では日本を含む多くの国で製造・輸入などが原則禁止されています。
※5 PFOSは半導体用反射防止剤・レジスト(電子回路基板を製造する際に表面に塗る薬剤)や泡消火薬剤など、PFOAはフッ素ポリマー加工助剤(ほかのフッ素化合物を製造する際に、化学反応を促進させるために添加する薬剤)や界面活性剤など。
現在では、日本国内で新たにPFOSやPFOAが作られたり、輸入されたりすることはありません。ただし、分解されにくい性質があるため、製造・輸入が原則禁止される前に、PFOSやPFOAが含まれていた製品を使用したり、PFOSやPFOAを使用していた工場から排水されたりと、さまざまな形で排出されたものが、川や地下水などから検出されています。
環境中のPFOSやPFOAは、主に飲み水や食事から摂取される恐れがあると考えられています。このため、2020年には水道水に含まれる量の暫定目標値(両物質を合わせて1リットルあたり50ナノグラム※6)が定められ、水道水からの検出状況に応じて市町村などの各水道事業者などにおいて対策が進められてきました。また、全国の川や地下水などに含まれるPFOSとPFOAについても、水道水の暫定目標値と同じ濃度の指針値※7が定められ、都道府県などの自治体がモニタリングを実施してきました。全国の調査結果については、環境省が年に一度公表しています。
※6 ナノグラムは10億分の1グラム。当時の科学的知見に基づき、体重50キログラムの人が水を一生涯にわたって毎日2リットル飲んだとしても、健康に悪影響が生じないと考えられる水準を基に設定されたもの。この値を超えた濃度の水を飲んでも、直ちに健康被害につながるものではありません。
※7 2025年6月以前は「指針値(暫定)」。
環境省が同じ場所で継続的に測定している環境中の水質・底質・大気・生物(魚類)の結果では、減少傾向がみられていますが、水道水の暫定目標値や、河川や地下水の指針値を上回る事例も確認されており、対策が求められています。
2. どんな対策が取られている?
環境省では、地域の方々の不安の声などを真摯に受け止め、科学的知見を踏まえた対応を関係省庁や関係自治体と連携して着実に進めています。これまで、水道水に含まれるPFOSとPFOAの量が暫定目標値を上回った場合は、安全な水道水源への切替え、浄化処理の強化などの対応を行い、暫定目標値以下に改善しています。さらに2026年4月からは、暫定目標値から水道水質基準※8に引き上げられます。これにより、水道事業者などに対して水質の検査及び基準の遵守が義務付けられます。
※8 出生児への影響などについての動物試験の結果から、不確実係数(一般的に、種の違いや、大人と子どもなどの影響の受けやすさの個人差を見込んで安全性を確保するもの)を考慮して、耐容一日摂取量(人が一生涯にわたって毎日摂り続けても健康への悪影響がないと考えられる量。略称TDI)が、内閣府食品安全委員会により設定されました。これを踏まえて水道水の基準などを定めています。
また、食べ物についても、さまざまな調査や研究が行われています。通常の食生活により摂取されると考えられるPFOSやPFOAの平均的な量は、一生涯にわたって毎日摂り続けても健康への悪影響がないとされる量を下回るという報告があります。
河川や地下水についても、指針値を超過した場合の対応の参考となるよう環境省が手引き※9を作成しており、自治体ではこれを踏まえて、調査を実施したり、井戸水を飲まないように周知したりするなどの対応が行われています。
※9 PFOS及びPFOAに関する対応の手引き(第2版)。
一方で、環境中のPFOSやPFOAの濃度を低減させるための対策技術については、国内での事例がまだ限られています。効果的な技術についての知見を充実させるため、環境省では公募で選定した9件の技術の実証事業を実施しています。
3. 今後の取り組み
PFASについて考える上で覚えておきたいのは、まだ解明されていない点が多いということです。健康影響については、国際機関や各国政府機関などがさまざまな評価を行っていますが、各機関が採用しているエンドポイント(コレステロール値の上昇、発がん、免疫系など、有害な影響を評価する指標)やどの程度の量で影響が生じるかについて、国際的に整合性のとれた評価が確立されていません。そのため、現在も幅広い調査や研究が進められています。
今後も、知見が増えるにしたがって、安全性の評価や対策の内容も変化していく可能性があります。そうした中で、私たち一人ひとりがPFASの現状や最新の状況について関心を持ち、理解することが、安全・安心な未来への第一歩になります。環境省では、関係省庁や関係自治体とも連携して、リスクを低減するための取り組みや正確で分かりやすい情報発信に努めていきます。
原稿/久保寺潤子
イラスト/丹下京子