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今月のキーワード 絶滅危惧種

絶滅危惧種

ポイント!

人間の活動の影響によって生き物の絶滅のスピードは急上昇しており、1500年以降、世界中で少なくとも680種の脊椎動物が絶滅しています(※)。種の絶滅を防ぎ、大切な生態系を守っていくために何ができるのか、何をしてはいけないのか、さまざまな施設に足を運んで知識を深めていってください。
※出典:環境省「 IPBES生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書政策決定者向け要約(p.26)」より
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/ipbes/deliverables/files/spm%20jp.pdf

絶滅とは、その種の生き物が一匹も残らず死んでしまうこと。他の種との争いや環境の変化など、絶滅には様々な原因がありますが、近年では人間が最も大きな絶滅の原因になっています。乱獲、土地開発による生息域の縮小、地球温暖化による環境の変化など、人間はさまざまな形で生き物に影響を及ぼしています。
現在、地球上の種の絶滅速度は過去1,000 万年間の平均の少なくとも数10倍から数100倍で、さらに加速していると言われています。(※)
※出典:環境省「 IPBES生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書政策決定者向け要約(p.26)」より
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/ipbes/deliverables/files/spm%20jp.pdf

1500年以降の絶滅

出典:IPBES生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書政策決定者向け要約(p.28)を元に改変

絶滅の危機に瀕した生き物を掲載したリストがレッドリストです。国内の生き物を対象としたレッドリストは環境省の他、地方公共団体やNGOなどが作成しています。日本国内では、年々絶滅危惧種は増えており、2024年4月現在では3,772種が絶滅のおそれがあるとされています。日本においては、絶滅のおそれがない種を含め、レッドリストに掲載するかどうか評価対象となる生き物は約7万種おり、だいたい100種のうち5種は絶滅危惧種ということになります。(※)
※出典:環境省「まもろう日本のいきものたち ~私たちにできること~」より
https://www.env.go.jp/content/900491887.pdf

レッドリスト

個別に見ていくと、淡水域や淡水と海水が混ざり合う汽水域にすむ魚類は4割以上、両生類では半分以上もの種が絶滅危惧種となっています。水辺に生息する生き物においては、ダム開発や河川、水路の整備、水田の減少など人間の活動によって生息場所が失われたり、生息環境が大きく変化したりしたことが大きな減少原因となっています。
かつては身近な存在で、子どもたちにも愛されてきたタガメなどの昆虫やメダカなどの魚も絶滅危惧種に選定されており、生き物とのふれあいの機会が失われつつあります。また、地域のシンボルでもある沖縄県のヤンバルクイナや長崎県対馬のツシマヤマネコなども絶滅危惧種となっており、地域で保全の取組が進められています。
一度絶滅した種は自然に復活することはありません。人工的に個体が飼育・繁殖されていれば人の手で復活させられる可能性はありますが、一種復活させるだけでも莫大な労力と時間がかかります。また、生き物が絶滅すると、その種に直接関わりのある生き物が増減し、さらにそこから別の生き物へ影響が広がっていきます。多様な種がお互いに関わり合いながら保たれている生態系のバランスが崩れるため、生き物が絶滅するということは、今は当たり前に触れている自然や、私たちが自然から受けていた恩恵も得られなくなるなど、人間の暮らしとも無関係ではありません。

ヤンバルクイナやツシマヤマネコ

例えば、トキは、その羽の美しさから乱獲されたことや、農薬の普及により水田などにいた餌となる生き物が減ってしまったことなどが原因で生息数が減少しました。1981年には新潟県佐渡島に残った5羽全てを人工飼育・繁殖のために捕獲したことで、野生下では絶滅してしまいました。その後、中国から提供を受けた個体による人工飼育下での繁殖が成功し、絶滅から27年後に佐渡島で放鳥され、ようやく再生の一歩を踏み出しました。佐渡では、餌となる水生生物を増やすために農薬の使用を減らしたり、環境整備を進めたりするなど、地域の農家さんをはじめとした方達の協力を得て、今では徐々に野生下のトキが増えています。

トキ

ですが、トキのように注目され、復活への取り組みが行われる、又は行うことができる生き物は多くはありません。大切なことは、絶滅のおそれのある種を含め、すべての種に一つ一つ手をかけて守っていくということではなく、生態系を保全し、多様な生き物が暮らしていくことができる環境を守り、増やしていくことです。

日本は南北に細長く、四季がはっきりしていて生き物にとって過ごしやすい気候の影響で、本来、豊かで独特な自然に恵まれた地域です。哺乳類全体の4割、爬虫類では6割、両生類は8割もの種が日本の固有種と言われており、日本の自然環境を守っていくことは、日本だけでなく世界の生物多様性の保全にも大きく貢献します。

私たち一人ひとりにも絶滅危惧種の保全のためにできることはいろいろあります。
例えば、絶滅に瀕した生き物を守るための基金に寄付したり、生き物を守る取り組みを支援する製品・特産品を購入したりすることで保全活動を応援できます。生き物についての正しい知識や情報に触れることも大事です。環境省では、動植物園や昆虫館などの施設と協力して保全活動に取り組んでおり、野生生物保護センター等では、その地域の野生生物の状況や活動の様子などを展示するなどしていますので、各地の施設へ足を運んでみてください。
また、「生き物を野外に放すことは、生き物を守り、自然にやさしいこと」と思っていませんか? 環境省では、一度野外で捕獲した生き物を別の場所へ放したり、飼育しているペットを野外へ放したりしないようご協力をお願いしています。逃げ出したり捨てられたりした外来種が度々ニュースなどで取り上げられますが、在来種であっても絶滅危惧種を含む周辺の生態系に大きな影響を与えかねません。詳しくは環境省発行のパンフレットをご参照ください。できることから少しずつ行動していきましょう。

まもろう日本のいきものたち ~私たちにできること~ 環境省HP
https://www.env.go.jp/content/900491887.pdf

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