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課題名 |
B-4 温室効果気体等の大気化学反応過程の解明に関する研究 |
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課題代表者名 |
鷲田 伸明 (環境庁・国立環境研究所・大気圏環境部長) |
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研究期間 |
平成2−4年度 |
合計予算額 |
73,858千円 |
研究体制 (1)温暖化関連気体の大気中での光化学反応機構の解明に関する研究(環境庁国立環境研究所) (2)温暖化関連気体の大気中での反応速度の測定に関する研究(環境庁国立環境研究所) (3)温暖化関連気体の光解離速度に関する研究(通商産業省電子技術総合研究所) |
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研究概要 大気微量成分の濃度が地球的規模で増加し続けており、それが地球の温暖化の直接原因である。しかし、これらの微量成分の大気中濃度増加の原因は明確でなく、発生源の変動による直接的寄与以外に大気中の光化学反応過程等による間接的寄与が複雑に影響し合っている。大気中の微量気体は 発生 → 反応 → 蓄積 の流れの中で大気中に蓄積される。すなわち、大気中に放出された気体は大気中の光化学反応やフリーラジカル反応により反応を起し、より安定な分子となって大気中に蓄積されているのである。以上のような観点から、本研究課題では温暖化関連気体の大気化学反応過程として重要なものについて(1)反応機構の解明、(2)反応速度係数の決定、(3)光解離過程の解明を行う。(1)では光化学反応チャンバーを用いたシミュレーション実験、(2)では光イオン化質量分析法を中心とした物理化学的反応実験、(3)では放射光を用いた温暖化関連気体の光吸収断面積の測定を行い、これらのデータが大気化学反応モデルの高精度化に貢献する。 |
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研究成果 (1)温暖化関連気体の大気中での光化学反応機構の解明に関する研究 国立環境研究所の6m3光化学チャンバーを用いてNOXの存在、非存在の両極端な条件での植物起源炭化水素(テルペン、イソプレン)の光酸化反応機構の研究を行い、特にバックグラウンド大気条件での植物起源炭化水素に起因するCOの放出量の見積りを行った。その結果、 1.α−ピネンを代表とするテルペンではNOXの存在、非存在で反応機構が大きく変わること、OHラジカル反応によるCOの放出量は炭素換算で22Tg/年で、OHラジカル反応とオゾン反応の両者によるCO放出量は炭素換算で96Tg/年であると求められた。 2.イソプレンに対しても同様の傾向が見出され、OHラジカル反応によるCOの放出量は炭素換算で133Tg/年であると求められた。その結果テルペンとイソプレンを合わせた植物起源炭化水素によるCO放出量は炭素換算で229Tg/年となり、Loganらの提案している240Tg/年とよい一致をみた。 (2)温暖化関連気体の大気中での反応速度の測定に関する研究 大気中でのラジカル反応速度を決定するためにフリーラジカルを直接検出する装置として、高感度光イオン化質量分析計を製作した。この装置は従来のものの50倍の感度を持ち精度の高いフリーラジカル反応速度の測定を可能にした。 1.CH3O2+NO→CH3O+NO2の反応速度の決定:CH3O2ラジカルの反応はメタンの酸化反応において最も重要な反応の一つである。このラジカルの直接検出法としてはこれまで感度の低い紫外吸収法しかなかった。本研究では、高感度光イオン化質量分析法でCH3O2ラジカルの直接検出され、これまでIUPACで推奨されてきた反応速度が50%近く小さい値であったことが判明した。 2.HOCOラジカルの検出とHOCO+O2→HO2+CO2の反応速度の決定:HOCOラジカルは大気中で重要な反応OH+COで生成する反応中問体である。このラジカルの存在が世界で初めて直接検出法により証明され、OH+COの反応でCOがCO2に変換される反応機構の詳細が明らかになった。 (3)温暖化関連気体の光解離速度に関する研究:シンクロトロン放射光を用いて、温暖化関連気体の光吸収断面積を測定する装置の開発が行われた。
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