課題名

B-1 温室効果気体等の組成・濃度の時間的・空間的変動の動態解明に関する研究

課題代表者名

坂東 博 (環境庁国立環境研究所地球環境研究グループ温暖化現象解明研究チーム)

研究期間

平成2−4年度

合計予算額

155,274千円

研究体制

(1)産業活動起源の温暖化関連物質(CO2、フロン)の挙動解明に関する研究

(通商産業省 工業技術院 資源環境技術総合研究所)

(2)反応性温室効果気体(メタン、NMHC等)の動態解明に関する研究

(環境庁 国立環境研究所)

研究概要

 温室効果気体及びその関連物質の大気への放出、大気中における変換と輸送、大気からの消失過程等の動態を地球規模で明らかにするためには、それら物質の時間的・空間的変動を系統的かつ綿密に測定・解析する必要がある。本研究課題では、産業活動起源の温室効果気体である二酸化炭素・フロンの環境濃度、フラックス等の動態を明らかにすること、また反応性温室効果気体であるメタン、非メタン炭化水素、窒素酸化物等の環境濃度、その時間・空間的な変動を明らかにすること、を目的として研究を行った。この目的を達成するために、対象とする物質のサンプリング、分析手法を確立し、航空機や船舶等の移動観測プラットフォームを利用した空間分布測定を用いた。また地上観測ではそれら物質濃度の経時変動を把握するために定点観測も実施し、これら温室効果気体の時間・空間変動を明らかにすると共に、その発生量、大気と貯蔵間との交換過程の解明を目指した。

研究成果

1.二酸化炭素・フロンの高精度・連続測定手法の開発、メタン・非メタン炭化水素の高感度分析手法の確立、高感度窒素酸化物分析計の改良、自動濃縮/キャピラリー・GC/MSシステムの開発とそれを用いた大気微量有機成分の連続分析法の確立を行った。

2.二酸化炭素については、西表島周辺、つくば市を中心とした野外観測を実施し、拡散モデルを用いて、測定した濃度データから両地における二酸化炭素の交換量を明らかにした。

3.二酸化炭素の交換に及ぼす気象要素の影響についても知見を得た。特に日射量と交換量の間にはほぼ比例関係が成り立っていることが分かった。

4.つくば市の松林内での二酸化炭素吸収量は西表島の約70%程度であった。

5.航空機観測と、定点観測によりメタン、非メタン炭化水素類の太平洋上バックグラウンド地域における濃度レベルとその分布を明らかにした。また、その結果から大陸性気塊により太平洋上の大気が影響を受けている状況を把握した。

6.航空機観測を行うことにより、日本周辺海洋上の大気中窒素酸化物の分布を明らかにすると共に、流跡線解析の結果から大陸経由の移流経路別の窒素酸化物汚染状況を明らかにした。

7.亜熱帯林・温帯林におけるイソプレンの濃度とその時間変動パターンを明らかにした。イソプレンの反応生成物を同時分析することにより、イソプレンフラックスを評価する場令の補正法について明らかにした。

8.太平洋上における大気中ジメチルサルファイド(DMS)の緯度分布を求めた。

9.陸域における大気中DMSの濃度変動と土壌中のDMS濃度を測定し、土壌からのDMSの放出が大気中DMSの濃度に寄与していることが分かった。