
第3次評価報告書(Third Assessment Report: Climate Change 2001)は、過去2回の評価報告書を踏まえたうえで、それ以降に得られた地球温暖化問題全般に関する世界の最新の科学的知見を集大成し、2001年に発表された。
同報告書では特に、地域別の評価および途上国や産業界などからのインプットが重視された。また、第2次までの「3つの作業部会毎の報告書」の他に、主要なテーマについて各作業部会報告の内容を横断的にとりまとめた「統合報告書(SYR: Synthesis Report)」が新たに独自の報告書として作成され、より政策決定者を意識した構成となった。
同報告書では、「過去50年間に観測された温暖化のほとんどが人間活動によるものであるという、新たな、かつより強力な証拠が得られた」と報告し、第2次評価報告書における「人間活動の影響による地球温暖化が既に起こりつつあることが確認された」という記述からさらに一歩踏み込んだものとなっており、様々な分野で既にあらわれている影響等が報告された。また、予測に関しても、「(同報告書で)予測された気温上昇率は少なくとも過去10,000年の間にも観測されたことがないほどの大きさである可能性が高い」などの報告を行っている。一方で、温暖化防止のための技術的対策に進展がみられることも報告され、緩和対策の重要性がより一層強調された。
なお、同報告書は、2001年のUNFCCC COP7に提出された。
構成
- 第1作業部会報告: 科学的根拠 (The Scientific Basis)(政策決定者向け要約) 日本語訳:(気象庁訳)(PDF形式:635.60KB)
- 第2作業部会報告: 影響・適応・脆弱性 (Impacts, Adaptation and Vulnerability)(政策決定者向け要約) 日本語訳:(環境省訳)(PDF形式:1.13MB)
- 第3作業部会報告: 緩和 (Mitigation)(政策決定者向け要約) 日本語訳:(経済産業省訳)(PDF形式:170.11KB)
- 統合報告書 (Synthesis Report) 日本語訳:(文部科学省、経済産業省、気象庁、環境省訳)(PDF形式246.05KB)
注:日本語訳は、IPCC HP '非UN言語への翻訳' サイト掲載版~SPM(政策決定者向け要約)のみ
主な内容
- 過去50年間に観測された温暖化のほとんどが人間活動によるものであるという、新たな、かつより強力な証拠が得られた。
- 過去100年間に、全球平均地上気温は0.6±0.2℃(0.4~0.8℃)上昇(第2次評価報告書では0.3~0.6℃)し、海面は 0.1~0.2m上昇(第2次評価報告書では10~25cm)した。
- 21世紀末までに、全球平均地上気温は約1.4~5.8℃の上昇が予測される。(35のSRESシナリオによる全予測の範囲の幅であり、6通りあるIS92シナリオに基づいた第2次評価報告書での約0.9~3.5℃の上昇予測を上方修正)
- 21世紀末までに、全球平均海面水位は0.09~0.88mの上昇が予測される。(この値は、35のSRESシナリオによる全予測の範囲の幅であり、6通りあるIS92シナリオに基づいた第2次評価報告書では15~95cmの上昇を予測)
- 数々の証拠により、近年の地域的な気温の変化が多くの物理・生物システムに対して影響を及ぼしている高い確信がある。
- 技術的対策に大きな進展がみられ、緩和対策には大きなポテンシャルがあることが明らかになった。
- 緩和方策を成功裡に実施するには、さらに多くの技術上や社会経済等の障害を克服する必要があり、総合的な対策の推進が効果的である。