目次へ戻る 平成13年(2001年)版 「化学物質と環境」
第1部 平成12年度化学物質環境調査結果の概要

[化学物質環境調査(大気系)]

  ◎印は検出された物質

 本調査は、大気中に化学物質がどの程度残留しているか把握することを目的として行っている。

 平成12年度の調査結果の概要は、次のとおりである。なお、調査地点としては、特定の排出源の直接的な影響を受けないような地点を選定している。
 本調査における試料採取は、ほとんどが9~11月に行われている。環境試料の分析は、主として調査地域を管轄する地方公共団体の公害等試験研究機関で行っており、検出限界については、化学物質環境調査(水系)と同様、各地点の検出頻度を相互に比較するため、同一化学物質に対しては一つの検出限界(統一検出限界)を設定している。
 今回の調査では、14物質群すべてが検出された(1,4-ジオキサン、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸ブチル、α-メチルスチレン、cis-β-メチルスチレン + o-メチルスチレン + p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、trans-β-メチルスチレン、2-エトキシエタノール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、ヘキサブロモベンゼン、ポリ塩化ターフェニル)。調査結果に対する評価を物質(群)別に示せば、次のとおりである。
 
[1] 1,4-ジオキサン
 
(1)
 1,4-ジオキサンは、昭和62年10月に化学物質審査法の指定化学物質に指定されており、環境省においては本報告書の中の「指定化学物質等検討調査 環境残留性調査(水質・底質)」(以下「環境残留性調査」)の報告のとおり、水質及び底質について平成元年度から調査を継続実施している。検出状況の経年的状況は、水質の検出頻度は60%台で推移しているが、底質の検出頻度は減少傾向にあり、平成11年、12年では1%となっている。
 
(2)
 今回の大気系調査の結果、1,4-ジオキサンは、12地点中9地点、34検体中22検体で検出され、検出範囲は 15~1,200 ng/m3であった。(統一検出限界値:6.8 ng/m3
 
(3)
 以上の調査結果によれば、1,4-ジオキサンは、環境残留性調査における水質に加え、本件調査における大気の検出頻度が高いことから、発生源周辺を含めた詳細な環境調査を行い、あわせてリスク評価を行う必要がある。
 
○ 1,4-ジオキサンの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
65% (22/34)
75% (9/12)
15~1,200 ng/m3
6.8 ng/m3
   
○ 1,4-ジオキサンの検出状況(指定化学物質等検討調査(環境残留性調査))
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
水質
平成11年度 68% (71/105) 71% (25/35) 0.08~ 46 μg/L 0.08 μg/L
平成12年度
61% (60/98)
67% (22/33)
0.08~160 μg/L
0.08 μg/L
底質
平成11年度 1% (1/99) 3% (1/33) 9.4 μg/kg-dry 8 μg/kg-dry
平成12年度
1% (1/90)
3% (1/30)
10 ng/g-dry
8 ng/g-dry
 
【参考 : 1,4-ジオキサン】
   
○製造方法
 1) エチレングリコールまたはポリエチレングリコールより硫酸を触媒として製造する5)
 2) エチレンオキサイドから酸性触媒により直接2量化する5)
 3) エチレンオキサイドを硫酸触媒によりポリエチレングリコールを経てジオキサンを製造する5)
 4) ビス(2-クロロエチル)エーテルをアルカリ処理1)
   
○用途
 1,4-ジオキサンはセルローズエステル及びセルローズエーテル類の溶剤、有機合成反応溶剤11)、トランジスター用、合成皮革用、塗料・医薬品用5)、塩素化有機溶剤の安定剤及び洗浄剤の調製、繊維処理・染色・印刷時の分散・潤滑剤、パルプ精製時の溶剤など1)としての用途がある。
○生産量・輸入量
 生産量:平成7年  7,000 t 11)
      平成11年 約4,500 t(推定)5)
   
○環境への放出源11)
 1,4-ジオキサンは広く溶剤として用いられ、非常によく水に溶解するが、水中から蒸発する。土壌との吸着性は低く、非常によく水に溶けるので地下水を汚染する。大気中では光分解してアルデヒドとケトンになる。
   
○代謝
 本物質は経口、吸入経路ともに比較的早く吸収される。また、経皮経路でも中毒量が吸収される。ヒト及び動物において体内での分布・代謝も早く、ヒドロキシエトキシ酢酸として、また一部未変化体として排泄される1)
   
○急性毒性試験等結果13)
 
TCLo(ヒト、吸入) 470 ppm/3d
TCLo(ヒト、吸入) 5,500 ppm/1Month
LD50(ラット、経口) 7,120 mg/kg
LC50(ラット、吸入) 46,000 mg/(m3・2h)
LD50(ラット、腹腔内) 799 mg/kg
LD50(マウス、経口) 5,300 mg/kg
LD50(マウス、腹腔内) 790 mg/kg
LD50(ウサギ、経口) 2,000 mg/kg
   
○刺激性
 ヒト、ウサギ及びモルモットの眼に対し中程度ないし強い刺激性を有する。また、ウサギの皮膚に対し中程度の刺激性を有する13)
   
○反復投与毒性1),14),16)
 マウスに9,812 mg/(kg・d)、ラットに7,230 mg/(kg・d)を67日間経口投与した実験で、死亡、肝細胞の変性、腎臓の皮質尿細管上皮の変性、尿円柱、出血、充血がみられている。
 雄ラットに9.6、94、1,015 mg/(kg・d)、雌に19、148、1,599 mg/(kg・d)を716日間経口投与した実験で、中用量以上の群で肝細胞の変性、壊死、肝細胞腺腫、腎臓の尿細管上皮の変性、再生、高用量群で体重増加の抑制、死亡率の増加が見られている。
 ラットを111 ppmに7時間/日×5日/週で2年間吸入暴露した実験で、異常は見られていない。また、マウス、ラット、モルモットを1,000 ppmに1.5時間/回、延べ78-202時間暴露した実験で、肝臓のうっ血、腎臓の皮質尿細管上皮の変性が見られている。
 ウサギ、モルモットに本物質の80%溶液を10-11滴/週で50-100日間経皮投与した実験で、肝細胞の変性、腎臓の尿細管上皮、糸球体の障害、髄質に出血が見られている。
   
○発がん性1),14),16)
 米国NCIで実施したB6C3F1マウスの雄に720、830 mg/(kg・d)、雌に380、860 mg/(kg・d)を90日間経口投与した実験で、雌雄の投与群で肝細胞腺腫及び肝細胞癌の発生率が有意に増加している。同様に米国NCIで実施したOsborne-Mendelラットの雄に240、530 mg/(kg・d)、雌に650、643 mg/(kg・d)を110週間経口投与した実験では、雌雄の投与群で鼻甲介の扁平上皮癌の発生率が有意に増加している。
   
○変異原性1),14),16)
 in vitro(生体外,試験管内)では、復帰突然変異試験、CHO細胞を用いる染色体異常試験及び突然変異試験、BALB/3T3細胞を用いる形質転換試験で代謝活性化の有無にかかわらず陰性、また、マウスリンフォーマ細胞を用いる突然変異試験、大腸菌を用いるDNA修復試験で陰性と報告されている。in vivo(生体内)では、マウスを用いる小核試験で、陽性と陰性の両方の結果が得られている。
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会 10 36 2B
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 20 A3
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 20 73 4
IARC 2B
   
○分解性・濃縮性15)
 分解性: 0%
 濃縮性: BCF: 0.2-0.6
   
○生態影響
 
オオミジンコ(Daphnia magna
 
24 h-LC50     470 mg/L 17)
24 h-LC50    8,450 mg/L 18)
魚の一種(Menidia beryllina 96 h-LC50     670 mg/L 19)
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 96 h-LC50     108 mg/L 20)
藻類(省略)、ミジンコ、魚類に対する急性毒性値は全て100mg/L 以上であり、水生生物に対する毒性は低いといえる。
   
○規制・基準
[化排管]
 第2条第1種指定化学物質5)
[化 審]
 第2条告示指定化学物質5)
 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律第2条第4項の規制に基づく指定化学物質
[消 防]
 第2条危険物第4類第1石油類水溶性液体(400 L)5)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 
施行令別表6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)5)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)5)
 第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 第28条3項に基づき指針を公表した化学物質(発がん性の疑い)5)
 労働安全衛生法施行令23)
 有機溶剤中毒予防規則23)
 労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく労働大臣が定める化学物質23)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(D類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規制]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体(H-上・下/上等級2)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体(G-等級2)5)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域そ の他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[労働基準]
 労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定23)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則第39条の2第2項に規定する国  税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合23)
 
[2] 酢酸イソブチル
 
(1)
今回の調査の結果、酢酸イソブチルは、15地点中12地点、44検体中29検体で検出された。検出範囲は73~710 ng/m3であった。(統一検出限界値:70 ng/m3
 
(2)
以上の調査結果によれば、酢酸イソブチルは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、発生源及び毒性等についての情報収集にも努めることが必要である。
   
○ 酢酸イソブチルの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
66% (29/44)
80% (12/15)
73~710 ng/m3
70 ng/m3
  【参考 : 酢酸イソブチル】
   
○製造方法
 1) イソブチルアルコールと酢酸を直接エステル化する5),1)
 2) メチルイソブチルケトンから製造する1)
   
○用途
 ニトロセルロースラッカーの溶剤のほか多くの樹脂の良溶剤として使われる。また、合成皮革、合成繊維、合成樹脂の製造溶媒、油脂、医薬の抽出溶剤、香水や合成香料の一成分として使われる11)3)
一般的な香料にバナナ、パイナップル、ラズベリー、ペアーなど。また、花香のデリケートなトップノートにも用いられることがある5)
○生産量・輸入量
 生産量:平成 11年 1 t 5)
   
○環境への放出源1)
 ニトロセルローズの製造、溶剤として工程中より放出。また、各種溶剤などとの使用により廃棄され放出。
   
○急性毒性試験等結果13)
 
LD50(ラット、経口) 13,400 mg/kg
LD50(ラット、経口) 4,783 mg/kg
LD50(ラット、経口) >17,400 mg/kg
   
○刺激性
 ウサギの眼及び皮膚に中程度の刺激性を有する13)
   
○反復投与毒性:未詳
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性:未詳
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 150
短時間暴露限界
ドイツ(MAK)
IARC
   
○分解性・濃縮性:未詳
   
○生態影響
 
セネデスムス(Scenedesmus quadricaud, 緑藻) 7-d NR(増殖)    80 mg/L 24)
ブラインシュリンプ(Artemia salina 24 h-LC50     120 mg/L 25)
オオミジンコ (Daphnia magna
24 h-LC50     250 mg/L 17)
24 h-LC50     342 mg/L 18)
藻類、ミジンコの急性毒性値で判断する限り、水生生物に対する毒性は低いものと思われる。
   
○規制・基準
[消 防]
 第2条危険物第4類第1石油類非水溶性液体(200 L)23)
 第2条危険物第4類第2石油類非水溶性液体(1,000 L)23)
 消防法24)
 危険物の規制に関する政令24)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)23)
 施行令別表第6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)23)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)23)
 施行令18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕23)
 労働安全衛生法施行令24)             
 作業環境測定基準24)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(C類)(酢酸ブチル)23)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令24)
 船舶からの有害液体物質の排出に係る事前処理の方法等に関する命令
 附則第2項第2号の規定に基づく環境庁長官及び運輸大臣が指定する有害液体物質24)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(H-上・下/上等級2)23)
[航 空]
 施行規則第194条危険物濃告示別表第3引火性液体(G-等級2)23)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)23)
 港則法施行規則の危険物の種類を定める告示24)
[外 為]
 輸出貿易管理令24)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域そ の他貨物の輸入について必要な事項の公表24)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示24)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物24)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則24) 
 第39条の2第2項に規定する国税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合24)
 
[3] 酢酸エチル
 
(1)
 酢酸エチルは平成7年度の一般環境調査の結果、6地点中6地点、18検体中18検体から検出された。(統一検出限界値:2 ng/m3
 
(2)
 今回の調査の結果、酢酸エチルは、15地点中15地点、45検体中44検体で検出された。 検出範囲は 170~ 160,000 ng/m3であった。(統一検出限界値:40 ng/m3
 
(3)
 以上の調査結果によれば、酢酸エチルは、検出頻度が高く、前回調査(平成7年度)より一部の地点の検出値が増大している。今後、検出値が増大した背景を含めた環境調査を行い、その推移を監視するとともに、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ 酢酸エチルの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成7年度
100% (18/18)
100% (6/6)
99~11,800 ng/m3
2 ng/m3
平成12年度
98% (44/45)
100% (15/15)
170~160,000 ng/m3
40 ng/m3
  【参考 : 酢酸エチル】
   
○製造方法5)
 アセトアルデヒドをアルミニウムアルコレート存在下で、低温で縮合させる。
   
○用途
 多くの樹脂の良溶剤なので、印刷インキ、接着剤、ラッカーの溶剤として広く使われる。塗料溶剤のほかにニトロセルロース類の溶剤として合成皮革、インキ、接着剤、フィルム、床材などの製造に使用される。その他、菓子の艶出し、洗浄剤、香料、防腐剤、酒精ワニスなどの一成分として使われる。抽出剤としてカンファー、油脂、抗生物質などの抽出、希釈水溶剤からの酢酸の抽出に使われる。
○生産量・輸入量5)
 生産量:平成11年 228,776 t 
 輸入量:平成11年 6,997 t 
 輸出量:平成11年 44,093 t
   
○環境への放出源1)
 各種溶剤として使用されているので、廃棄物として環境に放出され、大気中では光分解し、乾燥した土壌から大気中に蒸発する。また、製造工程時にも放出される可能性がある。
   
○代謝
 エステル類の一般的な性質により体内では速やかに加水分解されて酢酸とエタノールになり、両者はさらに代謝を受けて炭酸ガスと水にまで分解される26)
   
○急性毒性試験等結果13)
 
TCLo(ヒト、吸入) 400 ppm
LD50(ラット、経口) 5,620 mg/kg
LC50(ラット、吸入) 200,000 mg/m3
LD50(マウス、経口) 4,100 mg/kg
LD50(マウス、腹腔内) 709 mg/kg
LD50(ウサギ、経口) 4,935 mg/kg
   
○刺激性
  ヒトで眼に刺激性を有することが知られている13)
   
○変異原性
 CHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある27)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会 200 720
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 400
短時間暴露限界
ドイツ(MAK)
IARC
   
○分解性・濃縮性 : 未詳
   
○生態影響
 
セネデスムス(Scenedesmus quadricaud、緑藻) 7 d-EC50 (増殖)  330 mg/L 28)
セレナストルム(Selenastrum, 緑藻) 96 h-EC50      250 mg/L 29)
ミズムシ(Asellus aquaticus, 甲殻類) 48 h-LC50     160 mg/L 30)
ミジンコの一種(Daphnia cucullata 48 h-LC50     154 mg/L 31)
オオミジンコ(Daphnia magna 21 d-NOEC (繁殖) 2.4 mg/L 32)
ナマズの一種(Heteropneustes fossilis


 
24 h-LC50     312 mg/L 33)
48 h-LC50     275 mg/L 33)
72 h-LC50     225 mg/L 33)
96 h-LC50     212 mg/L 33)
ニジマス(Oncorhynchus mykiss)  48 h-LC50     260 mg/L 34)
メダカ(Oryzias latipes 48 h-LC50     125 mg/L 34)
 ミジンコの繁殖影響のNOECとして、2.4 mg/L と云う値があるが、藻類、甲殻類、魚類の急性毒性値はいずれも 100 mg/L 以上である。また、サンショウウオや数種無脊椎動物(蚊、カゲロウ、イトトンボ、ユスリカの幼虫、巻貝など)への急性毒性値も100 mg/L 以上であり、水生生物に対する毒性は低いと云える。4日間の試験期間中、魚(ナマズ)に対する急性毒性値の変化が少ないことから、慢性的な毒性も顕著ではないと考えられる。
   
○規制・基準
[消 防]
 第2条危険物第4類第1石油類非水溶性液体(200 L)5)
 消防法23)
 危険物の規制に関する政令23)
[毒 劇]
 第2条別表第2劇物5)
 毒物及び劇物取締法施行令23)
 毒物及び劇物指定令23)
 毒物及び劇物取締法施行規則23)
[悪 臭]
 施行令第1条特定悪臭物質5)
 悪臭防止法施行令23)
 悪臭防止法施行規則23)
 特定悪臭物質の測定の方法23)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)
 第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 施行令別表第6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)5)
 労働安全衛生法施行令23)
 作業環境評価基準23)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(D類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規制]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(H-上・下/上等級)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体(G-等級2)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)5)
 港則法施行規則の危険物の種類を定める告示23)
[アル専]
 アルコール売捌規則23)
[外 為]
 輸出貿易管理令
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[品 表]
 雑貨工業品品質表示規程23)
[環 境]
 水質汚濁に係る環境基準について23)
[高 圧]
 コンビナート等保全規則23)
[食 品]
 食品衛生法施行規則23)
 食品、添加物等の規格基準23)
[水 質]
 環境庁長官が定める排水基準に係る検定方法23)
[船 舶]
 危険物船舶運送及び貯蔵規則23)
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則 
 第39条の2第2項に規定する国税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合23)
[地方税]
 地方税法施行規則23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[薬 事]
  化粧品原料基準23)
[家庭用品]
  有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則23)
[労働基準]
  労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物質等労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定23)
 
 
[4] 酢酸ビニル
 
(1)
 酢酸ビニルは平成7年度の一般環境調査の結果、6地点中2地点、18検体中4検体から検出された。(統一検出限界値:50 ng/m3
 
(2)
 今回の調査の結果、酢酸ビニルは、14地点中5地点、42検体中8検体で検出された。検出範囲は 120~ 5,500 ng/m3であった。(統一検出限界値:120 ng/m3
 
(3)
 以上の調査結果によれば、酢酸ビニルは、検出頻度は低いが、前回調査(平成7年度)とほぼ同様の傾向を示しており生産量(約60万トン)も多いことから、一定期間をおいて環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ 酢酸ビニルの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成7年度
22% (4/18)
33% (2/6)
120~5,000 ng/m3
50 ng/m3
平成12年度
19% (8/42)
36% (5/14)
120~5,500 ng/m3
120 ng/m3
  【参考 : 酢酸ビニル】
   
○製造方法
 1) エチレン、酢酸、酸素の混合ガスを気相でパラジウム金属触媒を用いて製造する5)
 2) 酢酸パラジウム触媒を用いて合成5)
 3) アセチレンと酢酸、酸素を気相で反応させる1)
   
○用途
 酢酸ビニルは酢酸、ビニル樹脂原料モノマー、エチレン、スチレン、アクリレート、メタアクリレート等との共重合用モノマー、ポリビニルアルコール、接着剤、エチレン・酢ビコポリマー、合成繊維、ガムベース5)、水系ペイント、紙のコート、皮革の艶出し1),3)としての用途がある。
○生産量・輸入量5)
 生産量:平成11年 593,882 t   輸入量:平成11年  28,989 t  輸出量:平成11年  54,672 t。
   
○環境への放出源
  製造時の排気ガス。各種用途の廃棄物として排出される11)
   
○代謝
 酢酸ビニルは体内で速やかに加水分解される。ラットに本物質を吸入させると呼気中にアセトアルデヒドが検出される13)。放射能をラベルにした本物質を経口または経気道的にラットに投与すると、いずれの場合も2時間以内に投与放射能の大部分が炭酸ガスの形で呼気中に検出されており、投与96時間後にも尿・糞および体内に少量の放射能が検出されている37)
   
○急性毒性試験等結果13)
 
LD50(ラット、経口) 2,920 mg/kg
LD50(ラット、経口) 11,400 mg/(m3・4h)
LD50(ラット、経口) 1,613 mg/kg
LD50(ラット、経口) 1,550 ppm/4h
   
○刺激性
  ウサギの眼に対し軽度の刺激性を有する13)
   
○反復投与毒性
 ラットに本物質0、200、1,000、2,000 ppmの濃度で飲水投与した実験では、2,000 ppm群で軽度の体重増加抑制を認めた他に異常所見はない37)。マウスまたはラットを本物質の蒸気に6時間/日×5日/週で4週間暴露した実験で、マウスでは150ppm、ラットでは500ppmで気道の刺激作用が認められ、1,000ppmに3ヶ月反復暴露するとマウス、ラットともに体重増加抑制が認められたが、その他の異常は見られていない38)。マウス及びラットを本物質の蒸気に0、50、200、600 ppm×6時間/日×5日/週で104週間反復暴露した実験で、600ppmでは肺の重量増加、鼻粘膜の萎縮や再生等の変化が認められている39)
   
○発がん性
 SDラット及びSwiss系マウスを本物質の蒸気に0、50、200、600 ppm×6時間/日×5日/週で104週間反復暴露した実験で、雄ラット600 ppm群の鼻腔に癌3例を含む腫瘍7例、200 ppm群では良性腫瘍1例、雌ラット600 ppm群に癌4例を認めた。対照群には腫瘍の発生はない。マウスでは投与に由来する腫瘍の発生は認められない39)。F344ラットに本物質を0、1,000、2,000 mg/L添加した飲料水を100週間経口投与した実験で、投与量に対応して雌雄ともに肝臓の腫瘍、子宮癌及びポリープ、甲状腺癌及び腺腫の発生を認めている40)
   
○変異原性
 Ames試験(TA100,1530)で陰性41)であるが、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験と姉妹染色分体交換試験及びCHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験ではいずれも陽性と報告されている42),43),44)。また、小核試験は陽性と報告されている45),46)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 10 A3
短時間暴露限界 15
ドイツ(MAK) 10 36 3B
IARC 2B
   
○分解性・濃縮性15):分解性: 82-98%
   
○生態影響
 
緑藻の一種(Scenedesmus quadricaud 7d-NR(増殖) 370 mg/L 24)
ブラインシュリンプ(Artemia salina 24 h-LC50    45 mg/L 25)
オオミジンコ(Daphnia magna 24 h-LC50   330 mg/L 17)
ブルーギル(Lepomis macrochirus

 
24 h-LC50   18.5 mg/L 47)
48 h-LC50   18.0 mg/L 47)
96 h-LC50   18.0 mg/L 47)
グッピー(Poecillia reticulata 96 h-LC50   31.0 mg/L 47)
全ての急性毒性値は 10mg/L 以上であり、水生生物に対する毒性は比較的低い。
   
○規制・基準
[化排管]
 第2条第1種指定化学物質5) 
[消 防]
 第2条危険物第4類第1石油類非水溶性液体(200 L)5)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 第28条3項に基づき指針を公表した化学物質(発がん性の疑い)5)
 労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく労働大臣が定める化学物質23)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(C類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規制]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(H-上・下/上等級2)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体(G-等級2)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示(安定剤入りのもの)23) 
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)5)
 港則法施行規則の危険物の種類を定める告示(安定剤入りのものを含む)23)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[品 表]
 合成樹脂加工品品質表示規程23)
[高 圧]
 コンビナート等保全規則23)
[水 道]
 給水装置の構造及び材質の基準に関する省令23)
[船 舶]
 危険物船舶運送及び貯蔵規則23)
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示(安定剤入りのものを含む)23)
[地方税]
 地方税法施行規則23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
 
 
[5] 酢酸ブチル
 
(1)
 酢酸ブチルは平成7年度の一般環境調査の結果、6地点中6地点、18検体中18検体から検出された。(統一検出限界値:2 ng/m3
 
(2)
 今回の調査の結果、酢酸ブチルは、15地点中14地点、45検体中39検体で検出された。検出範囲は 110~ 13,000 ng/m3であった。(統一検出限界値:88 ng/m3
 
(3)
 以上の調査結果によれば、酢酸ブチルは、検出頻度が高く、検出値も増大していることから、今後も環境調査を行い、その推移を監視するとともに、関連情報の収集にも努める必要がある。
   
○ 酢酸ブチルの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成7年度
100% (18/18)
100% (6/6)
 8.1~2,100 ng/m3
2 ng/m3
平成12年度
87% (39/45)
93% (14/15)
110~13,000 ng/m3
88 ng/m3
  【参考 : 酢酸ブチル】
   
○製造方法
 1) 酢酸とブタノールとを硫酸を触媒として用いてエステル化する5),1)
 2) 無水酢酸とブタノールとを直接エステル化1)
   
○用途
 ニトロセルロースラッカーの溶剤のほか多くの樹脂の良溶剤として使われる。また、合成皮革、合成繊維、、合成樹脂の製造溶媒、油脂、医薬の抽出溶剤、香水や合成香料の一成分として使われる11)
写真のフィルム、安全ガラス、靴みがき等としての用途がある3)
○生産量・輸入量1)
 生産量:平成11年 55,018 t
 輸入量:平成11年  4,233 t
 輸出量:平成11年 10,585 t
   
○環境への放出源
 酢酸ブチルはインキ、接着剤、ニトロセルローズ系のラッカー、自動車のコーティングの溶剤として使用の際に放出される。
   
○代謝
 本物質に関するデータはないが、酢酸エステル類は一般に生体内では速やかに加水分解されることが知られている。
   
○急性毒性試験等結果13)
 
TCLo(ヒト、吸入) 200 ppm
LD50(ラット、経口) 10,768 mg/kg
LC50(ラット、吸入) 2,000 ppm/4h
LD50(マウス、経口) 8,000 mg/kg
LC50(マウス、吸入) 6,000 mg/(m3・2h)
LD50(マウス、腹腔内) 1,230 mg/kg
LD50(ウサギ、経口) 3,200 mg/kg
LD50(モルモット、経口) 4,700 mg/kg
   
○刺激性:ヒトの眼に刺激性を有し、ウサギの眼及び皮膚に対し中程度の刺激性を有する13)
   
○変異原性:CHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性の報告がある48)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会 100 475
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 150
短時間暴露限界 200
ドイツ(MAK) 100 480
IARC
   
○分解性・濃縮性 : 未詳
   
○生態影響
 
ユーグレナ(Entosiphon sulcatum 72h-LC50 (増殖)  320 mg/L 24)
ブラインシュリンプ(Artemia salina 24 h-LC50     150 mg/L 25)
オオミジンコ(Daphnia magna)  24 h-LC50     205 mg/L 17)
ブルーギル(Lepomis macrochirus 96 h-LC50     100 mg/L 19)
ファットヘッドミノー(Pimephales promelas 48 h-LC50     20 mg/L 50)
藻類、甲殻類、魚類に対する急性毒性値は100 mg/L以上の値が多く、水生生物に対する毒性は低いものと思われる。
   
○規制・基準
[消 防]
 第2条危険物第4類第2石油類非水溶性液体(1,000 L)(酢酸n-ブチル)5)
 消防法23)
 危険物の規制に関する政令23)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 施行令別表6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)5)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)5)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 労働安全衛生法施行令23)
 作業環境評価基準23)
 作業環境測定基準23)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(C類)(酢酸ブチル)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第3引火性液体類5)
 (引火点23C未満のもの、H-上・下/上等級2)
 (引火点23C以上60.5C以下、H-上・下/上・下等級3)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第5引火性液体5)
 (引火点23℃未満のもの、G-等級2)
 (引火点23℃以上60.5℃以下、G-等級3)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示5)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
 (引火点-18℃以上23℃未満のもの、引火点23℃以上61℃以下のものを含む)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[品 表]
 雑貨工業品品質表示規程23)
[高 圧]
 コンビナート等保全規則23)
[食 品]
 食品衛生法施行規則23)
 食品、添加物等の規格基準23)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
 (引火点-18℃以上23℃未満のもの、引火点23℃以上61℃以下のものを含む)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則
 第39条の2第2項に規定する国税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[薬 事]
 化粧品原料基準23)
[労働基準]
  労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物質等23)
 労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定23)
[労 働]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)
 施行令別表6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(C類)(酢酸ブチル)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第3引火性液体類
 (引火点23C未満のもの、H-上・下/上等級2)
 (引火点23C以上60.5C以下、H-上・下/上・下等級3)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第5引火性液体
 (引火点23℃未満のもの、G-等級2)
 (引火点23℃以上60.5℃以下、G-等級3)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)
 
 
[6] α-メチルスチレン
 
(1)
 今回の調査の結果、α-メチルスチレンは、9地点中8地点、26検体中20検体で検出された。検出範囲は 1.9~110 ng/m3であった。(統一検出限界値:1.9 ng/m3
 
(2)
 以上の調査結果によれば、α-メチルスチレンは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ α-メチルスチレンの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
77% (20/26)
89% (8/9)
1.9~110 ng/m3
1.9 ng/m3
  【参考 : α-メチルスチレン】
   
○製造方法5),1)
 1) ベンゼンとプロピレンを原料とし、キュメンの酸化でアセトンとフェノールを生産するときに副生する。
 2) キュメンの脱水素により生成する。
   
○用途
 α-メチルスチレンはABS樹脂の耐熱、耐衝撃性の強化、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂の変性5)、また 、紫外線分解の阻害のために、ABS樹脂に使用する1)
○生産量・輸入量5)
 生産量:平成11年 33,000 t(推定)
   
○環境への放出源
  各種、製造工程および使用の廃棄物として放出。
   
○急性毒性試験等結果13)
 
LD50(ラット、経口) 4,900 mg/kg
LD50(マウス、経口) 4,500 mg/kg
   
○刺激性
 眼や呼吸器粘膜に対する刺激性があり、また、長期間皮膚接触を続けると皮膚炎をおこすことが知られている51)
   
○反復投与毒性
 モルモット及びラットを800 ppmの本物質蒸気に7時間/日×5日/週で27日間反復暴露した実験では、肝臓、腎臓重量に軽度の低下が見られている。しかし、モルモット、ラット、ウサギ、マウス及びサルを、200 ppm×7時間/日×5日/週で5ヶ月間反復暴露した実験では、明らかな毒性は検出されていない52)
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性
 ヒト末梢血リンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験で弱いながらも陽性の結果が報告されている53)
    ○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 50
短時間暴露限界 100
ドイツ(MAK) 100 490
IARC
   
○分解性・濃縮性21)
     分解性: 0%
     濃縮性: 8W(BCF:15~140)
   
○生態影響
 
エビの一種(Chaetogammarus marinus 48 h-LC50    4.2 mg/L 54)
   
○規制・基準
[化排管]
 第2条第1種指定化学物質5)
[消 防]
 第2条危険物第4類第2石油類非水溶性液体(1,000L)5)
 消防法23)
 危険物の規制に関する政令23)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(A類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
 海洋汚染及び海上火災の防止に関する法律施行規則第30条の2の3の物質を定める告示23)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(P)(H-上・下/上・下等級3)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体(G-等級3)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)5)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[労働基準]
  労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物質等23)
 
 
[7] cis-β-メチルスチレン + o-メチルスチレン + p-メチルスチレン
 
(1)
 今回の調査の結果、cis-β-メチルスチレン + o-メチルスチレン + p-メチルスチレンは、8地点中8地点、24検体中22検体で検出された。検出範囲は5.4~190 ng/m3であった(統一検出限界値:4.8 ng/m3)。
 
(2)
 以上の調査結果によれば、cis-β-メチルスチレン + o-メチルスチレン + p-メチルスチレンは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
    ○ cis-β-メチルスチレン +o-メチルスチレン +p-メチルスチレン の検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
92% (22/24)
100% (8/8)
5.4~190 ng/m3
4.8 ng/m3
 
【参考 : β-メチルスチレン】
   
○製造方法1)
   
○用途:不明
○生産量:不明
   
○環境への放出源1)
 α-メチルスチレン中に不純物として含有される(0.5重量%)。α-メチルスチレンを製造、使用している場所からの放出。石油化学工場、プラスチック産業からも放出される。
ガソリンに芳香族化合物を添加していたことにより環境への放出を増加させていた。
   
○急性毒性試験等結果
   
○刺激性:未詳
   
○反復投与毒性:未詳
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性:未詳
   
○許容濃度(2000年):なし
   
○分解性・濃縮性:未詳
   
○生態影響:未詳
   
○規制・基準:なし
  【参考 : o-メチルスチレン】
   
○製造方法1)
 3-エチルトルエンと4-エチルトルエンの混合物を触媒を用いて脱水素化し、メチルスチレンの混合物を生成する。
   
○用途1)
 1) 表面コーティングのための油変性アルキッド樹脂との共重合物。
 2) 速乾コーティングに使用。
 3) 不飽和ポリエステル樹脂、変性アルキッド樹脂、乾性油製造に使用。
 4) 紫外線照射による架橋剤。
   
○生産量・輸入量:不明
   
○環境への放出源1)
 製造工程、使用工程からの排出水およびエンジンの排ガス、木材の煙、ポリエチレンの焼却からの排出、ポリプロピレンを用いた建材の焼却、エチルトルエンの生分解等から放出される。
   
○急性毒性試験等結果
   
○刺激性:未詳
   
○反復投与毒性:未詳
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性
  ヒトリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある55)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 100 490
IARC
   
○分解性・濃縮性:未詳
   
○生態影響:未詳
   
○規制・基準:なし
  【参考 : p-メチルスチレン】
   
○製造方法5)
  トルエンから特殊な触媒により合成する。
   
○用途5)
 ポリパラメチルスチレン樹脂、アクリロニトリルおよびゴムを含む共重合樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、合成樹脂塗料として使用される。
   
○生産量・輸入量:国産化されていない。
   
○環境への放出源1)
 p-メチルスチレンの製造工程、使用工程から環境へ放出されると考えられる。また、自動車の排気ガス中にも含まれる。モータボートのガソリンの燃焼からも排出する。
   
○急性毒性試験等結果
 
LD50(ラット、経口) 2,255 mg/kg
LD50(ラット、腹腔内) 2,324 mg/kg
LD50(マウス、経口) 1,072 mg/kg
LD50(マウス、腹腔内) 581 mg/kg
LD50(イヌ、経口) >5,000 mg/kg
   
○刺激性:未詳
   
○反復投与毒性:未詳
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性
  ヒトリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある56)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 100 490
IARC
   
○分解性・濃縮性:未詳
   
○生態影響:未詳
   
○規制・基準5)
[消 防]
 第2条危険物第4類第2石油類非水溶性液体(1,000L)
[労 働]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(A類)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(P)(H-上・下/上・下等級3)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体(G-等級3)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)
 
 
[8] m-メチルスチレン
 
(1)
 今回の調査の結果、m-メチルスチレンは、9地点中7地点、26検体中21検体で検出された。検出範囲は 2.6~190 ng/m3であった。(統一検出限界値:1.5 ng/m3
 
(2)
 以上の調査結果によれば、m-メチルスチレンは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ m-メチルスチレンの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
81% (21/26)
78% (7/9)
2.6~190 ng/m3
1.5 ng/m3
  【参考 : m-メチルスチレン】
   
○製造方法1)
  メチルスチレン混合物中に副生すると推定される。
   
○用途
 m-メチルスチレンは不飽和ポリエステル樹脂、変性アルキッド樹脂、乾性油中間体、表面コーティングのための油変性アルキッド樹脂共重合体の生成、紫外線照射により架橋剤、速乾性コーティング等の用途がある。
○生産量・輸入量:不明
   
○環境への放出源
 ビニルトルエンのアイソマーは、樹脂の製造、プラスチック産業の製造、使用から排水、大気中へ放出されると考えられる。また、エンジンの排気ガス、木材の煙、ポリエチレンやポリスチレンの焼却から排出する。モーターボートエンジンの排ガスにより水路を汚染するという報告もある。
   
○急性毒性試験等結果
   
○刺激性:未詳
   
○反復投与毒性:未詳
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性
  ヒトリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性の報告がある55)
    ○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 100 490
IARC
   
○分解性・濃縮性:未詳
   
○生態影響:未詳
   
○規制・基準:なし
 
  
[9] trans-β-メチルスチレン
 
(1)
 今回の調査の結果、trans-β-メチルスチレンは、9地点中8地点、27検体中19検体で検出された。検出範囲は2.4~22 ng/m3であった。(統一検出限界値:1.6 ng/m3
 
(2)
 以上の調査結果によれば、trans-β-メチルスチレンは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ trans-β-メチルスチレンの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
70% (19/27)
89% (8/9)
2.4~22 ng/m3
1.6 ng/m3
  【参考 : β-メチルスチレン】
   
○製造方法:7.【参考 : β-メチルスチレン】の項参照
   
○急性毒性試験等結果:7.【参考 : β-メチルスチレン】の項参照
 
  
[10] 2-エトキシエタノール
 
(1)
 今回の調査の結果、2-エトキシエタノールは、13地点中9地点、38検体中24検体で検出された。検出範囲は2.3~950 ng/m3であった。(統一検出限界値:2.3ng/m3
 
(2)
 以上の調査結果によれば、2-エトキシエタノールは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ 2-エトキシエタノールの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
63% (24/38)
69% (9/13)
2.3~950 ng/m3
2.3 ng/m3
 
【参考 : 2-エトキシエタノール】
   
○製造方法5),1)
 酸化エチレンと無水エタノールより製造する。
   
○用途
 2-エトキシエタノールは各種樹脂溶剤、医薬用抽出剤5)、ニトロセルロース、ラッカー等の溶剤、ワニス除去剤、乳化液安定剤1),11)、エポキシや他のコーティング剤の溶剤、繊維の染色、印刷、エマルジョンの安定剤、航空機燃料の氷結防止3) 等の用途がある。
○生産量・輸入量
 生産量:平成8年度 8,596 t(製造 6,906t、輸入1,690 t)57)
      平成11年  7,000 t(推定)5)
   
○環境への放出源
 製造使用工程から環境へ放出される。
   
○代謝
 ラットに本物質を経口投与した場合、投与量の73-76 %は尿中にエトキシ酢酸とそのグリシン抱合体として排泄され、他の一部は呼気中に炭酸ガスとして排泄される。
   
○急性毒性試験等結果58)
 
LD50(ラット、経口) 2,125 mg/kg
LCLo(ラット、吸入) 2,000 ppm/7h
LD50(マウス、経口) 2,451 mg/kg
LD50(マウス、腹腔内) 1,707 mg/kg
LD50(ウサギ、経口) 1,275 mg/kg
LD50(モルモット、経口) 1,400 mg/kg
   
○刺激性
 ヒトの眼に刺激性を有する。また、ウサギ、モルモットの眼と皮膚に対し中程度の刺激性を有する13)
   
○反復投与毒性
 マウスに本物質を 500、1,000、2,000、4,000 mg/(kg・d)を週5日5時間強制経口投与した実験では、  1,000 mg/(kg・d)群では精巣重量が、2,000 mg/(kg・d)群では精巣重量と末梢白血球が有意に低下し、精巣重量の低下に対応して病理組織学的には精細管の顕著な萎縮が見られている。精巣萎縮は、ラットに対する経口投与(192 mg/(kg・d)×13週間59);500 mg/(kg・d)×11日間60),61))、及び皮下投与(385 mg/(kg・d)×4週間)でも認められている。
   
○変異原性
 本物質の変異原性については、Ames試験では陰性65),66)であるが、染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験では陽性と報告されている66)
   
○生殖・発生毒性
 本物質0、0.5、1.0、2.0%を含む飲料水で雄・雌マウスを15週間飼育し、第2週-15週に交配した実験では、1.0%群では軽度に、2.0%群では著しく繁殖能の低下が認められている62)。ウサギを 160及び 615 ppmの本物質蒸気に妊娠第1-24日の間、また、ラットを、200及び765 ppmに妊娠第1-19日の間6-7時間/日暴露した実験では、高濃度群ではウサギ、ラットともに母獣毒性を認め、かつ胎児は全例吸収された。ウサギの低用量群では心血管系の奇形、腹壁の欠損、腎の異常、脊柱及び胸骨の異常が、ラットの低用量群では胎児の成長遅延とともに心血管系の奇形、肋骨の奇形及び過剰肋骨の有意な発生が見られている63)。ラットに妊娠第7-16日の間0、0.25、1.5 mL/回×4回/日皮膚暴露を行った実験では、1.5 mL群では一腹当たりの生存胎児数の低下、胎児の低体重、骨格奇形の増加、心血管系奇形の増加が見られている64)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会 5 18
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 5
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 5 19
IARC
   
○分解性・濃縮性:
     分解性:63-83% 15)
     濃縮性:データなし
   
○生態影響
 
ブラインシュリンプ(Artemia salina 24 h-LC50       > 100 mg/L 67)
ミジンコの一種(Ceriodaphnia dubia 48 h-EC50 (遊泳阻害) 3.7 mg/L 68)
キンギョ(Carassius auratus 24 h-LC50      > 500 mg/L 69)
ブルーギル(Lepomis macrochirus)  96 h-LC50      > 100 mg/L 70)
藻類(省略)、ミジンコ、魚類とも急性毒性値が100 mg/L以上の値が多く、水生生物に対する毒性はミジンコ以外には低いものと思われる。
   
○規制・基準
[化排管]
 第2条第1種指定化学物質5)
[消 防]
 第2条危険物第4類第2石油類水溶性液体(2,000 L)5)
 消防法23)
 危険物の規制に関する政令23)
[労働安全]
 施行令別第1危険物(引火性の物)5)
 施行令別表第6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)5)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)5)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 労働安全衛生法施行令23)
 有機溶剤中毒予防規則23)
 作業環境評価基準23)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(D類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(H-上・下/上・下等級3)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体(G-等級3)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)5)
[アル専]
 アルコール売捌規則23)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[品 表]
 雑貨工業品品質表示規程23)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則第39条の2第2項に規定する国税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[労働基準]
  労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物質等23)
 
[11] 2-メトキシエタノール
 
(1)
 今回の調査の結果、2-メトキシエタノールは、15地点中5地点、43検体中8検体で検出された。検出範囲は6.7~97 ng/m3であった。(統一検出限界値:6.1 ng/m3
 
(2)
 以上の調査結果によれば、2-メトキシエタノールは、検出頻度が低いが、関連情報の収集に努めながら、環境調査の必要性を検討すべきである。
   
○ 2-メトキシエタノールの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
19% (8/43)
33% (5/15)
6.7~97 ng/m3
6.1 ng/m3
  【参考 : 2-メトキシエタノール】
   
○製造方法1):酸化エチレンとメタノールとを反応させる。
   
○用途
 2-メトキシエタノールは溶剤、水分測定5)、皮革の染色、速乾性油等1)、また、改良カール・フィッシャー試薬、ジェット燃料の氷結防止11)に使用する。ニトロセルロース、セルロースアセテート、合成樹脂等の溶剤、写真フィルムの製造、香料の固定剤、半導体やマイクロフィルム等、業界での用途がある1),3)
○生産量・輸入量:不明
   
○環境への放出源
 樹脂、染料の溶剤として使用する時に蒸発、排水により放出。速乾性エナメル、ネイルエナメルなどから放出1)
   
○代謝
 ラットに標識した本物質を経口投与した実験では、血中から本物質の他投与48時間以内に投与放射能の12%がCO2として呼気中に、また50-60%がメトキシ酢酸として尿中に排泄された71)。メトキシ酢酸をラットに投与した場合、本物質投与と同様に精巣萎縮がみられることから精巣萎縮の原因物質はメトキシ酢酸であろうと推定されている72)
   
○急性毒性試験等結果
 
TDLo(ヒト、経口) 3,380 mg/kg
TCLo(ヒト、吸入) 250 ppm
LD50(ラット、経口) 2,370 mg/kg
LC50(ラット、吸入) 1,500 ppm/7h
LD50(ラット、腹腔内) 2,500 mg/kg
LD50(マウス、経口) 2,560 mg/kg
LC50(マウス、吸入) 1,480 ppm/7h
LD50(マウス、腹腔内) 2,147 mg/kg
LD50(ウサギ、経口) 890 mg/kg
LD50(モルモット、経口) 950 mg/kg
   
○刺激性
 ヒトの眼に刺激性を有する。また、ウサギ、モルモットの眼と皮膚に対し中程度の刺激性を有する72)
   
○反復投与毒性
 雄マウスに本物質62.5、125、250、500、1,000、2,000 mg/(kg・d)を週5日、5時間経口投与した実験では、62.5及び125 mg/(kg・d)群では明らかでないが、250 mg/(kg・d)群では精巣重量が、500 mg/(kg・d)群では精巣重量と末梢白血球が、さらに1,000 mg/(kg・d)群では精巣重量、末梢白血球に加えて赤血球数ヘモグロビン濃度の有意で用量依存的な低下が見られ、精巣重量の低下に対応して病理組織学的にも精細管の萎縮が顕著になることが明らかにされている。また、精巣萎縮は、ラットに対する300 ppm×6時間/日×5回/週×13週間の吸入暴露でも観察されている。精巣萎縮作用は、本物質とその酢酸エステル、エチレングリコールモノエチルエーテルとその酢酸エステル等6種のグリコール誘導体について検討された結果、本物質及びその酢酸エステルが最も強い毒性を示すことが報告されている72)
   
○変異原性
 Ames試験では陰性であるが、CHOを用いた染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験では陽性、CDラットを用いた優性致死試験、ショウジョウバエを用いた伴性劣性致死試験では陰性と報告されている。
   
○生殖・発生毒性
 マウスに妊娠第7-14日に1,000 mg/(kg・d)またはその1/2-1/3量を経口投与した場合、31.25 mg/(kg・d)以上の群で骨格異常の発生増加が、125 mg/(kg・d)以上の群では胎児の低体重が、250 mg/(kg・d)以上の群では一腹当たりの生仔数の減少が見られている。
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会 5 16
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 5
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 5 16
IARC
   
○分解性・濃縮性
     分解性:良分解性
     濃縮性:73-94%15)
   
○生態影響
 
藍藻の一種(Microcystis aeruginosa LOEC (増殖)   200 mg/L 73)
ブラインシュリンプ(Artemia salina 24 h-LC50    > 100 mg/L 25)
キンギョ(Carassius auratus 24 h-LC50    > 500 mg/L 69)
ニジマス(Oncorhynchus mykiss 96 h-LC50      160 mg/L 74)
藻類、甲殻類、魚類に対する急性毒性値は全て 100 mg/L 以上であり、水生生物に対する毒性は低いものと思われる。
   
○規制・基準
[化排管]
 第2条第1種指定化学物質5)
[消 防]
 第2条危険物第4類第2石油類水溶性液体(2,000 L)5)
 消防法23)
 危険物の規制に関する政令23)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)5)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 施行令別表第6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)5)
 労働安全衛生法施行令23)
 有機溶剤中毒予防規則23)
 作業環境評価基準23)
[海 洋]
 施行令別表第2有害液体物質(D類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第5引火性液体類(H-上・下/上・下等級3)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第3引火性液体類(G-等級3)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
[港 則]
 施行規則第12条危険物(引火性液体類)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[品 表]
 雑貨工業品品質表示規程23)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則第39条の2第2項に規定する国税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合23) 
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[労働基準]
  労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物質等23)
 労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに労働大臣が定める疾病を指定23)
 
[12] 2-ブトキシエタノール
 
(1)
 今回の調査の結果、2-ブトキシエタノールは、15地点中15地点、45検体中43検体で検出された。検出範囲は4.8~560 ng/m3であった。(統一検出限界値:2.2 ng/m3
 
(2)
 以上の調査結果によれば、2-ブトキシエタノールは、検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
   
○ 2-ブトキシエタノールの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
96% (43/45)
100% (15/15)
4.8~560 ng/m3
2.2 ng/m3
  【参考 : 2-ブトキシエタノール】
   
○製造方法5)
ブタノールと酸化エチルとを反応させる。
   
○用途
2-ブトキシエタノールは塗料、印刷インキ、染料、洗剤(液体洗剤、工業用洗剤、ドライクリーニング)、ブレーキ液、農薬等の溶剤、農薬の原料、可塑剤、浸透剤、軟化剤5)、表面コート用溶剤、各種樹脂溶剤、塗料溶剤11)、切削油、家庭用クリーナー等3)、また、油圧油、多くの水性コーティング剤のカップリング剤、化粧品の溶剤1)としての用途がある。
○生産量・輸入量
生産量:平成8年度 13,709 t(製造 13,709 t、輸入 5,571 t)
     平成11年  25,000 t(推定)5)                          
輸入量:平成11年   9,827 t 5)
輸出量:平成11年  22,734 t 5)
   
○環境への放出源
都市の廃棄物投棄場から環境に放出。地下水汚染。製造使用時環境へ放出。
   
○代謝
本物質は蒸気の吸入以外に液体の皮膚接触による経皮吸収が大きな吸収経路となる。経皮吸収の速度はヘアレスマウス>ラット>ヒトの順である78)。ラットにラベルした本物質を皮下注射した場合、72時間以内に放射能は尿(79 %)、呼気(10 %)および糞(0.5 %)中に排泄される76)。生体内ではブトキシ酢酸への酸化、ブトキシエタノールのグルクロン酸抱合体を生じる76)
   
○急性毒性試験等結果
 
TCLo(ヒト、吸入) 100 ppm
TCLo(ヒト、吸入) 195 ppm/8h
LD50(ラット、経口) 470 mg/kg
LC50(ラット、吸入) 450 ppm/4h
LD50(ラット、腹腔内) 220 mg/kg
LD50(マウス、経口) 1,230 mg/kg
LC50(マウス、吸入) 700 ppm/7h
LD50(ウサギ、経口) 300 mg/kg
LD50(モルモット、経口) 1,200 mg/kg
   
○刺激性
  ウサギの眼と皮膚に対し中程度の刺激性を有する75)
   
○反復投与毒性
 雄ラットに222、443、885 mg/(kg・d)を5日/週×6週間強制経口投与した実験では、443 mg/(kg・d)以上で死亡が見られ、用量相関的に体重増加抑制が見られている。222 mg/(kg・d)以上で赤血球数の減少、ヘモグロビン濃度の低下、平均赤血球ヘモグロビン量の増加、肝臓の相対重量増加、脾臓のうっ血、腎臓の近位曲尿細管のヘモシデリン沈着、前胃の角化亢進及び棘細胞増生、443 mg/(kg・d)以上で嗜眠、赤色尿、平均赤血球ヘモグロビン濃度の減少、平均赤血球容積の増加、ALP(アルカリフォスファターゼ)の増加、腎臓、心臓、脳及び脾臓の相対重量増加、脾臓の腫大及び暗色化、肝臓のヘモシデリン沈着、885 mg/(kg・d)で摂餌量の減少、被毛粗剛、立毛、血清AST(Asparate amino transferase. GOT(Glutamic oxaloacetic transaminase)と同じ)の増加、血糖の減少、肝細胞肥大が見られている77)。ラットを54、107、203、314、432 ppmに7時間/日×5日/週×6週間暴露した実験では、雄432 ppm、雌314 ppm以上で死亡が見られ、組織学的に肺のうっ血、肝臓の変性が認められている他、54 ppm以上で赤血球の脆弱性亢進、107、203 ppmで肝臓及び腎臓の相対重量増加、203 ppm以上でヘモグロビン尿が見られている。ウサギに18、90、180、360 mg/(kg・d)を6時間/日×9日間閉塞適用した実験では、18 mg/(kg・d)以上で軽度の皮膚刺激性、180 mg/(kg・d)以上で皮膚の壊死、水腫及び紅斑等の皮膚刺激性が見られている他、180 mg/(kg・d)以上でヘモグロビン尿、360 mg/(kg・d)でタンパク尿、間質性腎炎、尿細管の変化、雄360 mg/(kg・d)で皮膚の肥厚、雌360 mg/(kg・d)で体重増加抑制、赤血球数の減少、ヘモグロビン濃度、平均赤血球ヘモグロビン濃度の低下、平均赤血球ヘモグロビン量の増加が見られている79)
   
○発がん性
 B6C3F1マウス62.5、125、250 ppmに6時間/日×5日/週×105週間暴露した実験で、雄では250 ppmで肝臓の血管肉腫の有意な増加が見られている。雌では、250 ppmで前胃の乳頭腫または扁平上皮癌の有意な増加が見られている。雄でも同様に増加傾向が見られているが有意ではない。また、F344ラットを31.2、62.5、125 ppmに6時間/日×5日/週×105週間暴露した実験で、雌では、125 ppmで副腎髄質の良性または悪性褐色細胞腫が見られており、発生率は対照群との比較では有意性はなく、用量相関性もない80)
   
○変異原性
 大腸菌を用いた突然変異試験、ヒトリンパ球またはCHO細胞を用いた染色体異常試験及びCHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験では陰性と報告されている77),78)
   
○生殖・発生毒性
 ラットを100、200、300 ppmに6時間/日で妊娠6日目から15日目までの10日間暴露した実験で、すべての用量で母獣に体重増加抑制、摂餌量減少が見られ、200 ppm以上で摂水量の減少、300 ppmで子宮及び肝臓の絶対重量の減少、吸収胚の増加が見られ、胎児では、300 ppmで心室中隔欠損、無名動脈短縮が見られている79)
 ウサギを25、50、100、200 ppmに妊娠6日目から18日目までの13日間暴露した実験で、母獣で体重減少、ヘモグロビン及びヘマトクリット値の増加、子宮重量の増加が見られ、総着床数及び生存着床数の減少、左心室の乳頭筋融合を有する胎児数の増加及び第6胸骨、痕跡肋骨の骨化遅延が見られている。ウサギを25、50、100、200 ppmに6時間/日で妊娠6日目から18日目までの13日間暴露した実験で、200 ppmにおいて母獣で死亡率の増加、体重減少、子宮重量の減少が見られ、吸収胚の増加が見られたが、奇形は見られていない79)
   
○許容濃度(2000年)
 
  ppm mg/m3 発がん分類
日本産業衛生学会
アメリカ(ACGIH)
時間荷重平均値 20
短時間暴露限界
ドイツ(MAK) 20 98
IARC
   
○分解性・濃縮性 :
  分解性:96.0%15)
  濃縮性:データなし
   
○生態影響
 
ユーグレナ(Entoshiphon sulcatum 72 h-NR (増殖)  91 mg/L 24)
エビの一種(Crangon salina 48 h-LC50     800 mg/L 81)
オオミジンコ(Daphnia magna 24 h-LC50     172 mg/L 17)
キンギョ(Carassius auratus 24 h-LC50      170 mg/L 69)
魚の一種(Menidia beryllina 96 h-LC50     125 mg/L 70)
藻類、甲殻類、魚類の毒性値は 90~800 mg/L と水生生物に対する毒性は低いものと思われる。
   
○規制・基準
[消 防]
 第2条危険物第4類第2石油類水溶性液体(2,000 L)5)
 消防法23)
 危険物の規制に関する政令23)
[労働安全]
 施行令別表第1危険物(引火性の物)5)
 施行令別表第6の2有機溶剤(第2種有機溶剤)5)
 施行令第18条(名称等を表示すべき有害物)5)
 施行令第18条の2〔名称等を通知すべき有害物(MSDS対象物質)〕5)
 労働安全衛生法施行令23)
 有機溶剤中毒予防規則23)
 作業環境評価基準23)
[海 洋]
 施行令別表第1有害液体物質(D類)5)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令23)
[危規則]
 第3条危険物告示別表第4毒物(N-上・下/上・下等級3)5)
[航 空]
 施行規則第194条危険物告示別表第9毒物(M-等級3)5)
 航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示23)
[外 為]
 輸出貿易管理令23)
 輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表23)
[船 舶]
 船舶による危険物の運送基準等を定める告示23)
[租 税]
 租税特別措置法施行令第48条第2項第1号及び租税特別措置法施行規則第39条の2第2項に規定する国税庁長官が指定する物及び国税庁長官の定める含有割合23)
[バーゼル]
  特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律第2条第1項第1号イに規定する物23)
[労働基準]
  労働基準法施行規則別表第1の年少者労働基準規則第8条第33号の業務に係る使用者が講ずべき個別的措置の基準第5項の有害性が高度な有害物質等23)
 
 
[10] ヘキサブロモベンゼン(環境調査(水系)及び環境調査(大気系)を併せて評価することとした)
 
(1)
 ヘキサブロモベンゼンは、昭和52年度の調査の結果、水質、底質共に検出されず(共に15検体、検出限界:水質0.04~0.5 μg/L、底質10~170 ng/g-dry)、昭和56年度の調査では、水質(18検体)では検出されなかったが、底質では18検体中 3検体で検出された。 (検出限界値:水質0.01~0.1 μg/L、底質0.5~2.5 ng/g-dry)。さらに、昭和57年度では、水質(126検体)では検出されなかったが、底質では126検体中3検体が検出された(検出限界:水質0.05 μg/L、底質0.5~2.5 ng/g-dry)。
 
(2)
 今回の調査の結果、ヘキサブロモベンゼンは、水質(12地点、36検体)、魚類(11地点、33検体)からは検出されなかったが、底質からは11地点中2地点、33検体中4検体から検出され、大気からは10地点中7地点、30検体中11検体で検出された。検出範囲は水質、魚類で不検出、底質8.4~43 ng/g-dry、大気0.031~0.1 ng/mであった(統一検出限界値:水質0.0064 μg/L、底質4.8 ng/g-dry、魚類3.2 ng/g-wet、大気0.030 ng/m)。
 
(3)
 以上の調査結果によれば、ヘキサブロモベンゼンは、検出頻度は低いが、底質から検出され、大気からの検出頻度がやや高く、関連情報が少ないが生物体内に蓄積されるとの報告もあり、今後も環境調査を行いその推移を監視する必要がある。さらに、関連情報の収集にも努める必要がある。
   
○ ヘキサブロモベンゼンの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
水質
昭和52年度 0% (0/15) - 不検出 0.04~0.5 μg/L
昭和56年度 0% (0/18) - 不検出 0.01~0.1 μg/L
昭和57年度 0% (0/126) - 不検出 0.05 μg/L
平成12年度 0% (0/36) 0% (0/12) 不検出 0.0064 μg/L
底質 昭和52年度 0% (0/15) - - 10~170 ng/g-dry
昭和56年度 17% (3/18) - 2.2~6.9 ng/g-dry 0.5~2.5 ng/g-dry
昭和57年度 2% (3/126) - 3.1~4.3 ng/g-dry 0.9~5 ng/g-dry
平成12年度 12% (4/33) 18% (2/11) 8.4~43 ng/g-dry 4.8 ng/g-dry
魚類 平成12年度 0% (0/33) 0% (0/11) 不検出 3.2 ng/g-wet
大気
平成12年度
42% (14/33)
73% (8/11)
0.031~0.1 ng/m3
0.030 ng/m3
 
【 参考:ヘキサブロモベンゼン 】
   
○製造方法:ベンゼンの臭素化2)
   
○用途1)
 熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成繊維および合成ゴムに用いる難燃剤。
○生産量・輸入量:不明
   
○環境への放出源2)
 難燃剤として使用されているので、それらの廃棄物を通じて環境に放出。
ほかの臭素化難燃剤を高温分解の時に生成する。
これらが大気中に放出されると微小粒子として存在し、土壌に沈下する。これは移動しないと考えられるが、湿った土壌からの蒸発は起こる可能性がある。乾燥した土壌からの蒸発は起こらないであろう。微生物分解は土壌中、水環境中では分解しがたいが、河川水や海水中では光によって若干分解する。
   
○代謝
 ヘキサブロモベンゼンは主に脂肪組織、肝臓、腎臓に蓄積する。尿中への排出は少なく、糞中に排泄される6)
   
○毒性:未詳
   
○許容濃度:データなし
   
○反復投与毒性
 雄Wistarラットに本物質0,10,20,40,60,80,160 ppmを含む飼料で12週間投与した実験において、40 ppm以上の群で血清カルボキシエステラーゼ活性の上昇が見られている7)。また、雄SDラットに経口投与した実験でも血清値とクロムCレダクターゼ活性の上昇が見られている8)
   
○催奇形性:ラットを用いた催奇形性試験で、影響は見られていない10)
   
○発がん性:未詳
   
○変異原性:未詳
   
○分解性31):難分解性
   
○濃縮性31):低濃縮性(BCF:2.98)
   
○生態影響
 
ゾウリムシ(Tetrahymena pryriformis 24 h- EC50 (生長)  20 mg/L
26)
ニジマス(Oncorhynchus mikiss BCF 1,100 at 0.61 ng/L 
27)
 
   
○規制・基準1)
[消防]   第2条第7項危険物第4類第3石油類非水溶液体(2,000 L)
 
 
[14] ポリ塩化ターフェニル
 
(1)
 今回の調査の結果、ポリ塩化ターフェニルは、8地点中7地点、24検体中21検体で検出された。検出範囲は0.00092~0.0060 ng/m3であった。(統一検出限界値:設定せず。個別の検出限界使用。)
 
(2)
 以上の調査結果によれば、ポリ塩化ターフェニルは、既にPCBが製造中止になっているにもかかわらず検出頻度が高いことから、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。また、関連情報の収集にも努めることが必要である。
 
○ ポリ塩化ターフェニルの検出状況
媒体
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
大気
平成12年度
88% (21/24)
88% (7/8)
0.00092~0.0060 ng/m3
個別に設定
  【参考 : ポリ塩化ターフェニル】
   
○製造方法:
 PCB中の不純物。
 トリフェニルの塩素化により合成し、種々の塩素濃度からなる混合物で、代表的なものとしてAroclor 5460(塩素濃度60%)、Aroclor 5432(塩素濃度32%)などがある82)
   
○用途:
 電気絶縁体84)
 PCBの代替品として使用されたこともある82)
○生産量・輸入量:不明
   
○環境への放出源
  含有廃棄物と共に環境に放出されると推定。
   
○代謝:
 雄ラットにAroclor 5432(塩素濃度32%のo-, m-, p-トリフェニル混合物)を経口投与した実験では、肝ミクロソームのP-450、炭化水素水酸化酵素(AHH)および7-エトキシレゾルフィン O-脱エチル酵素を強く誘導する。また、これらの酵素誘導は、Aroclor 5460(塩素濃度60%のo-, m-, p-トリフェニル混合物)や塩素の置換しないトリフェニルでは弱いことが報告されている。
   
○刺激性:未詳
   
○反復投与毒性:
 本物質は肝臓の薬物代謝酵素を誘導し、腫瘍を含む肝障害を引き起こすことが知られている。また、内分泌系や免疫系にも障害が起こることも明らかにされている82)
   
○発がん性:
 マウスに本物質を24週間経口投与した実験では、肝細胞がんの有意な増加がみられることが報告されている83)
   
○変異原性:未詳
   
○分解性・濃縮性 : 未詳
   
○生態影響
 
カブの根の生長を、1 ppm で15% 抑制 85)  
ミジンコ 3 h-TLm  < 10 mg/L 86)
   
○規制・基準 : なし
   
○ モノクロロターフェニルの検出状況
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
平成12年度
88 % (21/24)
88 % (7/8)
0.00092~0.0060 ng/m3
0.00010 ng/m3
○ ジクロロターフェニルの検出状況
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
平成12年度
17% (4/24)
37% (3/8)
0.00055~0.0011 ng/m3
0.00053 ng/m3

○ トリクロロターフェニルの検出状況
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
平成12年度
0% (0/24)
 0% (0/8)
不検出
0.0073 ng/m3

○ テトラクロロターフェニルの検出状況
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
平成12年度
0% (0/24)
0% (0/8)
不検出
0.0072 ng/m3

○ ペンタクロロターフェニルの検出状況
調査年度
検出率 (検出数)
検出範囲
検出限界
検体
地点
平成12年度
0% (0/24)
 0% (0/8)
不検出
0.0010 ng/m3
   

目次へ戻る