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第4回グッドライフアワード環境大臣賞グッドライフ特別賞

NPO法人生活工房つばさ・游

OKUTAこめまめプロジェクト

埼玉県小川町の山里で栽培される有機米を、埼玉県内の企業が全量を再生産可能な価格で即金買取することを約束。販路が確保されたことで、集落全体の農家が有機農業を手掛けるようになり、里山の整備などにも意欲的に取り組んで、美しく豊かな環境を次世代に引き継ぐことを目指しています。

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持続可能な有機農業で集落の環境を守り続ける!

活動のきっかけは?
有機農業の第一人者の農場見学会から始まりました

埼玉県小川町の下里地区。里山に囲まれた集落には、槻川(つきがわ)の清らかな流れに沿って、緑いっぱいの田園風景が広がっています。

『OKUTAこめまめプロジェクト』がスタートしたのは2009年のこと。里地里山の環境が生み出す豊かな地域資源の活用などを目指すNPO法人『生活工房つばさ・游』が、日本における有機農業の第一人者、金子美登さんが下里地区で営んでいる『霜里農場』の見学会を開催したことがきっかけでした。

この見学会に、埼玉県(さいたま市)に本社がある住宅リフォーム会社『OKUTA』の山本拓己社長が参加。ひと通り見学を終えた後の歓談で、前年のリーマンショックの影響で、収穫された有機米が余っていることを聞いたのです。

当時、残留農薬などを含む事故米の不正転売事件が話題になった直後だったこともあり、山本社長は「米の安全」に大きな関心を抱いていたそうです。顔の見える農家の方が、精魂込めて育てた有機米であれば、社員のみなさんにも安心して勧められます。当時200名以上いた社員においしくて安心な米を買ってもらうことを思いつき、「全量を会社で買い取りますよ」と約束したことが、プロジェクトが始まるきっかけになりました。


霜里農場の金子美登さん。

株式会社OKUTA 山本拓己社長。


『生活工房つばさ・游』の高橋優子さん。

有機米作りに取り組む農家のみなさん。
どんな取組を?
『提携三原則』による全量買取で有機農業が拡大!

下里の有機米は『OKUTA』社員のみなさんにも大好評。もともと小川町でさまざまなエコ活動に取り組んでいた『生活工房つばさ・游』が、『OKUTA』と下里地区の有機農家を繋ぐコーディネイターの役割を果たしながら、継続的な全量買取の仕組みが整えられました。ポイントは、持続可能な有機農業への取組を実現するための『提携三原則』です。

【提携三原則】

  • 1) 全量買取
  • 2) 即金現金支払
  • 3) 再生産可能な価格

全国各地で、有機農業に取り組んでいる方は少なくありません。でも、安定した販路の確保が大きな課題になっている現実があります。『OKUTAこめまめプロジェクト』では、収穫された有機米を、全量、即金で、農家の方々が「来年も作ろう」と思える再生産可能な価格で買い取る約束が成立したことで、生産者のモチベーションが向上し、より美味しい有機米づくりに向き合う流れができたのです。

『OKUTA』では、収穫された有機米を買い取るだけでなく、田植えや稲刈りなどの有機米作り体験への参加を新入社員の研修プログラムなどとして採用。自然素材を活用し、環境に配慮した住宅リフォームを行う企業として、下里地区での有機米作りと、環境保全活動を応援しています。

提携三原則による全量買取が約束されたことで、下里地区では有機米作りがさらに拡大。今では全ての農家が米や大豆、野菜などの有機栽培に取り組むようになっています。


里山に囲まれた田んぼが広がる下里地区。


OKUTA社員のみなさんは稲刈りなどにも参加。


里山保全活動も行っています。
成功のポイントは?
プロジェクトに参加する人たちの意欲が連携

集落全体が有機農業に取り組むようになった下里地区。『OKUTAこめまめプロジェクト』が順調に継続し、発展してきたポイントは『提携三原則』を設定したことです。とはいえ、この三原則を守るためには、企業(このケースの場合は『OKUTA』)側の深い理解と協力が必要であることは言うまでもありません。

また、「再生可能な価格」での全量買取を約束しているのですから、有機米を栽培する農家としても、買ってくれる社員の方々の期待を裏切ることのない、おいしいお米を作る熱意が不可欠です。さらに、森から里へ、川から海へという自然の循環を踏まえた里山保全活動など、地域の環境保全も包括した持続可能な取組として発展してきたことのポイントとして、『生活工房つばさ・游』の理事長である高橋優子さんがキーパーソンとなり、『OKUTA』と金子さん、そして下里で有機米作りに取り組む農家のみなさんを繋いでいることが挙げられます。

山本社長をはじめとする『OKUTA』社員のみなさんの高い環境意識。金子さんという先駆者の存在。集落全体で有機米作りに取り組んでいる下里地区の方々のモチベーション。そして、企業と農家のパイプ役として、手間暇を惜しまず活躍する高橋さん。プロジェクトに関わるたくさんの人の意欲が集結することで、『OKUTAこめまめプロジェクト』が特筆すべき取組となっているのです。


有機米の田んぼでは、土壌の力を維持するために麦や大豆との輪作が行われます。


季節ごとに美しい風景が広がります。


実りの秋。安心でおいしい米が収穫されます。
レポート
地域住民の方を集め「環境と社会に良い取組」をアピール

グッドライフアワードで環境大臣賞を受賞後の2017年5月、下里地区の下里農村センターで『生活工房つばさ・游』が主催する『下里あったかいぎ』というイベントが開催されました。地域の方々に環境大臣賞の受賞を報告し、環境に配慮した地域作りの指針である『下里里山100年ビジョン』を説明。グッドライフアワードの実行委員でもある環境省の中井徳太郎廃棄物・リサイクル対策部長(※当時/現 総合環境政策統括官)が「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトについての講演を行いました。

「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトの公式サイトはこちら。 http://www.env.go.jp/nature/morisatokawaumi/index.html

会場は集まった地域の方々で満員となり、下里地区、そして小川町の人たちの環境保全に対する関心の高さを感じるイベントとなりました。

イベント開催前の午前中には、下里農村センターの別室に『OKUTAこめまめプロジェクト』の関係者が集まり、今年の作付け状況報告などを行うミーティングも開催されました。OKUTAの山本社長も参加して農家の方々と論議する様子に、プロジェクトに関わる人たちの深い信頼関係を感じる会合でした。

「このプロジェクトを始めて、10年近くが経ちました。当時と比べても下里の風景はさらに美しくなったと感じています。こうした取組は一過性ではあまり意義がありません。これからも持続可能なプロジェクトとして継続し、下里の有機米作りの後継者も集められるよう、私たちもしっかりと協力していきたいと思っています」(OKUTA 山本社長)

企業と地域が連携した有機米作り。グッドライフアワードが目指す「環境と社会に良い取組」のモデルケースとして、日本全国、さまざまな地域で参考にできる方法ではないかと感じる取組でした。


『下里里山100年ビジョン』を説明する高橋さん。


グッドライフアワード実行委員の中井徳太郎さんの講演も。


プロジェクトメンバーのミーティングも開催されました。
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