柏崎市市民生活部環境政策課
日本海に面した新潟県柏崎市で独自に実施されている、市内の企業や団体を対象にした取組です。対象とする環境保全活動に参加してポイントを獲得。環境に優しい設備や備品などを購入した際の補助金が得られる仕組みで「環境(エコロジー)」と「経済(エコノミー)」が調和したまちづくりを応援する取組です。
「環境(エコロジー)」と「経済(エコノミー)」が調和したまちづくりを応援!
「地球温暖化対策は人類にとって大切な課題である」。 「自然エネルギーを活用したり、省エネに配慮した行動が必要である」。 誰しもが理解はしていても、つい面倒に感じたり、行動の成果を実感できず、継続的に実践するのはなかなか大変なことです。
柏崎市の『ECO2プロジェクト』は、環境への取組を効果的に幅広く実践していくための工夫として、市の職員のアイデアから始まりました。市内の事業者(企業や団体)が、環境保全に関わる取組に参加すると「ECO2ポイント」と呼ばれるポイントを付与。エコロジーな設備や物品を市内の事業者から購入して市に申請すると、ポイントに応じて補助金が得られる仕組みです。
取組が始まったのは2011年(平成23年度)。市議会の承認を経て、補助金のための予算を確保し、まずは200社の参加登録事業者を目標として市内の企業や団体に参加を呼びかけました。2016年までの5年間で234社(団体)が参加登録し、約610万円の補助が行われました。
『ECO2ポイント』を獲得するための対象行動には、さまざまな環境に良い事項が設定されています。具体例を列記してみましょう。
エコドライブ研修の実施や、「ECO2セミナー」への参加。あるいは「緑のカーテン」の実施や海岸清掃イベントへの参加など、環境のために意義があることだと理解はしていても、実際に参加したり行動を起こすのが億劫になってしまいがちな身近な事項が、対象行動となっていることがわかります。
獲得した『ECO2ポイント』を使うことができる対象設備には、以下のようなものがあります。
太陽光発電設備や電気自動車などの導入に大きなコストが掛かるものから、公共交通機関の利用を促すバス券まで、幅広く環境に優しいものが並んでいます。「LED照明が省エネであることは知っているけど、普通の蛍光灯などに比べると初期導入コストが高額で……」と導入をためらう気持ちを、補助金が後押ししてくれるのです。
『ECO2プロジェクト』を推進する柏崎市の環境政策課温暖化対策係では、参加登録した事業者へのアンケートなどを実施。次のステップは300社の参加を目標として、より参加しやすく意義のあるプロジェクトとするために、対象行動や対象設備を改定したり、参加事業者へのインタビューを紹介する『ECO2通信』を発行するなどの施策を行ってきています。
『ECO2プロジェクト』のスタート当初から参加登録を行い、実際にECO2ポイントでオフィスにLED照明を導入した新潟スーパー産業株式会社の管理課特命担当リーダーである清水達郎さんにお話しを伺いました。
「『ECO2プロジェクト』の良い点は、私たち自身の取組の成果が、たとえばLED照明という目に見えるかたちで返ってくるところだと感じています。オフィスでLED照明を見る度に、がんばってよかったなという達成感があり、今後も環境に良い取組を続けていこうという意欲につながります」(清水さん)
新潟スーパー産業は、水をきれいにしたり、ゴミを収集する事業を行ったりと、環境と関わりの深い会社ですが、どんな業種であっても環境に配慮した経営を行うことは、企業にとって企業価値を高めることに繋がる面があります。環境を守るためにやるべきことを対象行動や対象設備として、実践を促すことで、継続的な取組が広がる仕組みになっていることが、『ECO2プロジェクト』の画期的なポイントです。
たとえば電気自動車や太陽光発電(再生可能エネルギー)など、個別の設備導入に対して補助金を給付する制度は多くの自治体で行われていて、柏崎市でも実施されています。『ECO2プロジェクト』は環境のために有意義な行動を包括的に対象とすることで、実際に行動する一人一人が、自分たちの行動の意義と手応えを実感しやすい仕組みになっているのです。
日本海に面して長い海岸線をもつ柏崎市には多くの海水浴場があり、夏には多くの観光客が訪れます。本格的な海水浴シーズンの到来を前に、海岸清掃のイベントが開催されました。集合は土曜日の朝7時。早朝からの活動にも関わらず、会場となった4カ所のビーチには約560名もの市民が参加。『ECO2プロジェクト』からも12社の98名が参加してゴミ拾いを行いました。
海岸清掃イベントには、市内各地域の小中学生や町内会のみなさんが集結。家族連れも多く、柏崎青年会議所のPRキャラクターである『えちゴン』も登場して雰囲気を盛り上げます。子どもたちはもちろん、お揃いのポロシャツや制服姿で参加した『ECO2プロジェクト』の参加者のみなさんも、楽しみながらゴミ拾いを実践している様子が印象的でした。
柏崎市では「低炭素社会をめざすエネルギーと環境のまち」を実現する目標を掲げています。「環境(エコロジー)」に配慮しながら、対象設備は市内の事業所から購入することで地元の「経済(エコノミー)」にも貢献する。エコロジーとエコノミーの調和を目指す『ECO2プロジェクト』は、大きな目標を実現するために何をすればいいのかを具体的に指し示すプロジェクトにもなっています。
持続可能な社会の実現に向けて自治体が独自で実施できる取組として、『ECO2プロジェクト』はひとつの有意義なモデルケースであるといえます。