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第3回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞

SEA TO SUMMIT連絡協議会

SEA TO SUMMIT

海や湖をカヤックで進み、自転車で里を駆け抜け、登山で山頂を目指す。『SEA TO SUMMIT』とは、文字通り「海から山の頂上へ」自分の力だけで進む環境スポーツイベントです。2016年は全国で9大会を開催。会場となる地元自治体などとの共同開催とすることでアウトドアスポーツへの理解を広げ、地域活性化にも貢献しています。


ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)

自分の力で進むアウトドアスポーツで、大自然の「循環」を体感!

活動のきっかけは?
自然の大切さを感じるために、アウトドアを楽しもう!

第3回グッドライフアワードで環境大臣賞グッドライフ特別賞を受賞した『SEA TO SUMMIT』。アウトドアグッズの人気メーカーである『モンベル』が事務局となって、全国各地で開催されている環境スポーツイベントです。海や湖に設定されたコースをカヤックなどのパドルスポーツで回り、自転車で山に向かう里の道を走り、最後は登山で山頂を目指す。イベント名の『SEA TO SUMMIT』が意味するとおり、まさに海から山頂へ、人の力だけで進みます。

初めて開催されたのは2009年。鳥取県の「皆生・大山」が舞台となりました。発想のきっかけは、モンベルの創業者であり現在もモンベルグループの代表である辰野勇さんが、米子・大山の観光大使に就任したこと。米子市の海岸にある皆生(皆生温泉もあります)は日本で初めてトライアスロンの大会が開かれた場所。標高1729mの大山は、3000m級の山にも匹敵する厳しい冬の顔があり、登山愛好者の間では冬山の技術を磨くフィールドとして知られています。

皆生から大山山頂までは27km弱の距離。もとよりトライアスロンやトレイルランニングといったアウトドアスポーツ人気が高まってきていたこともあり、カヤック=海のステージ、バイク(自転車)=里のステージ、ハイク(登山)=山のステージと、人力で進むアウトドアスポーツを組み合わせたアクティビティが発想されたというわけです。

2009年の大会は強風のためカヤックのステージが中止となったもののとても盛り上がりました。翌年の2010年には隣の島根県から「ぜひ開催したい」との要望もあり、鳥取「大山・皆生」と島根「高津川」の2カ所で開催。さらに2011年は北海道の「大雪旭岳」、山形・秋田「鳥海山」が加わって4カ所になり、グッドライフアワードを受賞した2015年は7カ所。そして2016年には9カ所と、着々と全国に広がっているのです。


佐渡大会でカヤックを漕ぐ辰野勇さん

2009年に初めて開催された大会のゴール地点。

皆生の海岸からは大山の姿を望むことができます。
どんな取り組みを?
「森・里・川・海」との関わり方を全身で感じる!

海から空へ上った水は雲となり、雨や雪となって山や森に降り注ぐ。その水は川となって里を流れ、やがて海へと戻っていく。人力だけで海から山頂を目指す『SEA TO SUMMIT』は、自然の営みである水の循環を、自分の足で、汗をかきながら体感するチャレンジです。

大会運営の必要から各ステージの通過リミットの時間は決められますが、大会はことさらにタイムを争い、順位を競うものではありません。参加者は会場となるフィールドの豊かな自然や風景、文化を感じながら、それぞれのペースでゴールである山頂を目指します。仲間と一緒に和気あいあいと参加できる「チームの部」があるのもこの大会の特徴です。

各大会は2日間の日程が組まれており、1日目には開催地の自然や文化について考える『環境シンポジウム』が開かれます。ゴール後の表彰式でも、ゴールタイム上位者への表彰はあるものの、豪華な賞品の獲得者を決めるのは大会恒例の抽選会。海から山頂へともに駆け抜けながら「人と自然の関わり方のあるべき姿を考える時間を共有する」(辰野さんからのメッセージ)ことが、このイベントの大切な目的です。

最近、マラソンなどの市民スポーツイベントは多くの参加者を集めますが、『SEA TO SUMMIT』の各大会は定員が先着300名に限定されています。イベントが盛り上がることは大切ですが、あまり多くの参加者が集中すると環境や生態系へのインパクトが大きくなってしまうことへの配慮です。カヤックや自転車、またライフジャケットやヘルメットなど必要な装備も、参加者は自分で用意する必要があります。参加するためのハードルが少し高いことには、イベントの趣旨や理念をきちんと理解した真摯な参加者に集まってほしいという思いがこめられています。


チーム参加も可能!

自分のペースで完走を目指します。


ゴールの達成感は格別!

大自然を体感するイベントです。
成功のポイントは?
主催者は地元自治体中心の実行委員会

アウトドアスポーツを通じて自然の大切さを肌で感じてほしいという主旨に共感して、『SEA TO SUMMIT』にはモンベルのほかにも多くの企業が協賛しています。とはいえ、いわゆるCSR的な企業イベントとは一線を画してもいます。

各大会を主催するのは、開催地の自治体と、地元団体を中心とした実行委員会。モンベルのスタッフはもちろんサポートに入りますが、イベント会社や代理店を入れることはなく、運営スタッフもすべて地元のみなさんが分担します。もちろん、警察や消防など、開催地の行政機関も一体となって大会を作り上げていくのが特徴です。

モンベルには「モンベルクラブ」という会員システムがあり、会員やアウトドアスポーツファンに向けた情報発信のなかで「フレンドエリア」というアウトドアアクティビティのおすすめエリアを紹介しています。フレンドエリアは、いわば、自分の好きな時にその土地ならではの『SEA TO SUMMIT』(海と山が近い場所ばかりではないですが)が楽しめる場所。アウトドアスポーツの愛好者が増え、自然を大切にする心をもった人も増えていくことが、『SEA TO SUMMIT』の先にあるモンベルの大きな目標ともいえます。

『SEA TO SUMMIT』の大会開催地になることは、そこが素晴らしいアウトドアスポーツのフィールドであると広く発信することになるので、開催を希望している自治体はほかにも何カ所かあるそうです。参加者をはじめとするアウトドアスポーツの愛好者には日本各地のフィールドの豊かさを伝え、自然豊かな開催地の人たちにはイベント運営に関わってもらうことでアウトドアスポーツへの理解を深めてもらう。『SEA TO SUMMIT』は、そんな「自然を大切にする心」の循環を育む取組ともいえるでしょう。


レスキュースタッフも地元の方。

佐渡大会の大会長は三浦基裕佐渡市長。

レポート
やっぱりとても大変そう。でも、楽しそう!

2016年6月25日〜26日、新潟県の佐渡で開催された大会を取材に行って来ました。佐渡では昨年初めての大会があったものの荒天で競技がすべて中止になったとのこと。今年もすでに梅雨入りした時期で、天気が心配でした。競技当日、海は少し波があり、ゴールとなる山頂付近には雲がかかってバイクコースの終盤から山頂にかけてはガスに包まれてのアクティビティとなったものの、無事に全競技が行われました。

この大会には駐日アメリカ大使のキャロライン・ケネディさんがプライベートで参加。すべてのステージを見事に完走されました。また、約4.5kmの「山のステージ」には、グッドライフアワードの中井徳太郎実行委員も挑戦。ゴールとなる金北山山頂は、晴天であれば山の左右に両津湾と真野湾、さらには日本海の絶景を見渡せる場所です。この日は残念ながら真っ白な霧に視界を阻まれてしまいましたが、「会場から山頂のゴールを眺め、森里川海の循環を体感し、ゴールからスタート地点の海を見下ろすことが素晴らしい体験になると実感できました」と、笑顔で汗をぬぐってらっしゃいました。

取材班はクルマで移動しながら写真撮影などを行ったのですが、佐渡金山あたりからのルートはレンタカーのエンジンも苦しそうな唸りを上げるほど急峻なワインディングの道でした。各地のフィールドを知る辰野さんが「最も過酷なバイクコースかも知れない」というほどの厳しいコース。参加者のみなさんが苦悶する表情には、「やっぱりとても大変そうだ」と、競技の本気度を実感しました。

でも、山頂にゴールする参加者のみなさんの達成感に満ちた表情がまた魅力的。大会関係者と参加者が一体となって、海から山頂を目指すこの大会の「楽しさ」を感じることもできました。カヤックを練習し、本格的な自転車を揃えるにはそれなりの費用も必要ですが、チャンスがあればぜひ挑戦したい。そんな思いを抱いたのでした。

<『SEA TO SUMMIT』公式サイト>
http://www.seatosummit.jp/


1日目には『環境シンポジウム』が開催されます。

『環境シンポジウム』では佐渡を拠点にして世界で活躍する太鼓芸能集団『鼓童』が演奏。


ケネディ駐日大使も参加!

中井徳太郎実行委員も山のステージに挑戦しました。


【2016年佐渡大会写真レポート!】


2016年佐渡大会の集合写真。

【海のステージ】


大会の開催を朝の海で虹が祝福!


シングル男子1位でゴールした選手!


この選手は昨年、全大会に出場したそうです。

【里のステージ】




佐渡大会のバイクコースは全大会中
屈指の厳しさでした!

【山のステージ】


霧がかかった山頂に続々と選手たちがゴール!

親子で一緒に楽しんでいる方も
いらっしゃいました。


ケネディ大使もマイペースでゴール!

モデルの仲川希良さんは余裕の表情で登山中。

チームで楽しくチャレンジする姿が印象的でした。


鼓童の齊藤栄一さんも出場して、見事にゴール!

参加者のみなさん、素晴らしい汗と笑顔を、ありがとうございました!

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