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第3回グッドライフアワード環境大臣賞優秀賞

大豊シャクヤクの会

耕作放棄地を
日本一の棚田シャクヤク園に

高知県大豊町の八畝(ようね)集落。美しい棚田の風景が広がる山里も、高齢化と過疎化が進み耕作放棄地が目立っていました。どうすれば、美しい風景を守りつつ、集落に活気を取り戻すことができるのか? 高知大学の学生サークルと地元の方が力を合わせて棚田のあった土地を耕し、日本一のシャクヤク畑にしようとする取組が、第3回グッドライフアワードの環境大臣賞を受賞しました。


ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)

耕作放棄地を日本一の棚田シャクヤク畑にしよう!

活動のきっかけは?
高知大学の園芸研究者とIターン移住者が意気投合

高知県大豊町にある八畝集落。山頂までクルマで行くことができ、雄大な自然のパノラマを楽しめる景勝地として知られる標高1400mの梶ヶ森という山の中腹にあり、深い谷に向かって美しい棚田が広がる場所ですが、高齢化と過疎化による後継者不足によって、耕作放棄地や休耕地が目立つようになっていました。

そもそも、大豊町は2000年に日本で初めての「限界自治体」と指摘された町。高齢化に悩むのは八畝だけでなく、谷を挟んで見える向かい側の集落でも「なんとか集落に活気を取り戻そう」という検討が始まっていました。その集会の席で、高知大学果樹園芸研究室講師の濵田和俊さんと、高知市内で働いていたご主人が定年退職後、ご夫婦で八畝に移住してきた大谷夫妻が出会ったことが、この取組が始まるきっかけでした。

「八畝を元気にしたい」という大谷夫妻の声に濵田さんが応え、地元有志も加わって『大豊シャクヤクの会』が発足。また、濵田さんが声を掛け、高知大学内に学生サークル『MB』が立ち上がり、サークルメンバーの学生たちが大谷さんのお宅に泊まって作業をするようになったのです。ちなみに、『MB』2代目代表(現4年生)の太田和成さんが「サークル名の由来は、みんなバカの略です」と、笑いながら教えてくれました。

かつて、前三重県知事の北川正恭さんが「革命はよそ者と若者とばか者が起こす」と提言し、地域活性化の金言のようになっています。ほぼ毎週、八畝に通ってボランティアの農作業に汗を流す学生たちの力は、まさに褒め言葉としての「ばか者」&「若者」パワー。集落にとっては「よそ者」ともいえる移住者である大谷夫妻の新しい発想と、学生サークルの若者たちの行動力や体力が結びつき、ユニークな取組が進められているのです。


田んぼの中に祠が建つ棚田の風景は八畝のシンボル。

取組のキーパーソンである大谷さん夫妻。


益田実行委員(右)と談笑する濵田和俊さん(左)。

八畝の棚田にも、耕作放棄地が目立つようになっていました。
どんな取り組みを?
シャクヤクだけでなく地キビなども栽培

2013年に発足した『大豊シャクヤクの会』。会の名前にもなっているように、中心的な活動は耕作放棄地となって荒れている棚田を耕して、シャクヤク園にしていく作業です。「シャクヤクを育てよう」というアイデアは、大谷さんの妻で副会長も務める大谷咲子さんの提案とのこと。八畝周辺の山中に準絶滅危惧種であるヤマシャクヤクの群生地が残っていること、また「きれいな花は見る人を幸せにしてくれる」という思いからの発想です。

耕作放棄地とはいえ、耕すためには土地所有者の承認が必要です。大豊シャクヤクの会では元国土交通省職員の薬師敏宏会長(香川県高松市在住)が中心になって地元の農地保有者と調整を進めています。今ではおよそ8反の耕作放棄地を再生し、約200種、1200株のシャクヤクが花を咲かせるようになっているほか、この土地の伝統的な作物であった地キビやモチキビを栽培しています。

地キビなどを栽培するようになったのは、かつて八畝地区にはキビの焼酎を自家醸造する伝統があったことから、収穫した地キビやモチキビを使って焼酎を醸造することへのチャレンジでした。高知県工業技術センターによる試験醸造を経て、協力してくれる蔵元を探し、高知県安芸市の菊水酒造が快諾。2015年には四合瓶で300本ほどの焼酎『八畝』ができあがり、商品化されました。

大豊シャクヤクの会では耕作放棄地を再生し、シャクヤクや地キビ栽培に加え、周辺の山林に自生するヤマシャクヤクやベニバナシャクヤクの保護、さらには田んぼ同様に放置されて荒れていた竹林を活用する取組も行っています。焼酎だけでなく、伐採した竹を活用して竹チップや竹炭などの商品化、また、シャクヤクの根は漢方薬の原料として利用されるので、これから植え替えの際などには出荷できる方法を模索中。活動を通じて少しでも資金を調達し、持続可能な取組にしていくことを目指しています。


農作業には学生たちが若い力を発揮!

シャクヤクと、笑顔!


取材時もきれいなシャクヤクが咲いていました。

例年、GWから初夏にかけてが見頃。
成功のポイントは?
八畝を「故郷」のように愛する学生たちのパワー!

大豊シャクヤクの会そのもののメンバーは6名のみ。前述したように、実際の農作業などは高知大学の学生サークル『MB』のメンバーたちがボランティアで力を発揮しています。

若い学生たちがほぼ毎週末、ときには10人以上も訪れるのですから、食事や宿泊の世話も大変でしょうが、大谷夫妻をはじめとする八畝の方々が、まるで里帰りしてきた子どもや孫を迎え入れるように温かく受け入れています。また、取材時に話を聞いた学生たちは「八畝が新しい故郷になりました!」などと言いながら、この会の活動を楽しんでいます。

会では会計担当の役員を務める濵田さんは、果樹園芸の研究者としてシャクヤクや地キビなどの栽培ノウハウを提供するとともに、インターネットを活用したクラウドファンディングや、さまざまな助成金などの手続きを進めて活動資金の捻出を続けています。

「当初から八畝の地元のみなさんが農地を貸してくださる折衝に協力してくださったり、農機具や重機を貸してくださったり、協力してくれたことが大きいですね。活動が継続することで、さらに地元の理解が広がってきたことも、今、活動が成功している秘訣だと思います」(濵田さん)

八畝集落にあるのは、美しい棚田と豊かな自然。高齢化などで人の力は足りなくても、何をやるかというアイデアや、「よそ者」や「若者」を受け入れる温かさがあれば、力を合わせて新しい取組を進めることができる。大豊シャクヤクの会の取組は、高齢化が進む集落を再生するために、地域内外の協力関係を構築するお手本ともいえそうです。


『MB』2代目代表の太田和成さん。

地キビの収穫作業中!


学生の皆さんの笑顔が印象的でした。

焼酎『八畝』のラベルを書いた倍味那々子さん。
レポート
定植ボランティアのイベントは、手作り料理で大パーティ!

5月下旬。大豊シャクヤクの会の活動として、ボランティアが集まって地キビの定植を行うイベントがあると聞き、取材に行って来ました。梶ヶ森山頂に向かう途中にある八畝集落の標高はおよそ550m。麓の豊永駅(JR土讃線)近くで国道を外れて山道を上るのですが、想像以上に険しい道で驚きました。

取材日は真夏のような晴天に恵まれました。イベントには学生サークルやシャクヤクの会のメンバーのほか、高知市内などから会の活動に興味をもつ一般の方々もたくさん参加。学生たちが朝早くから耕して畦をつくった畑(もともとは休耕田だったわけですが)に、高知大学で育てた地キビの苗を植えるイベントです。

暑い日になり、慣れない畑作業は大変だろうと心配しましたが、イベント冒頭、挨拶のあとで始まったのは、大谷ご夫妻のお宅の庭に建てられたテント内に地元の方々の手作り料理や、仕留めたばかりの鹿肉バーベキューなどが並び、収穫した地キビでつくった焼酎『八畝』を振る舞う試飲会兼昼食会。一般参加者はもちろん、大谷夫妻など地元の方と学生たちも一緒に会話も弾み、この活動が明るく盛り上がっている様子を垣間見ることができたのです。

もちろん、昼食会の後で、地キビ定植のボランティア作業もちゃんと行われました。今回の取材にはグッドライフアワードの益田文和実行委員も同行したのですが、益田委員自身も定植作業を体験してくださいました。

「日本中から集まった高知大学の学生たちの明るさとエネルギー、それをサポートする地元の方とのポジティブな協力関係が素晴らしい。八畝の取材後に徳島県内にも足を延ばして別の地域活性化の取組を視察したのですが、そこの方々にも八畝で何が起きているかということは知られていました。周辺地域にも有意義なインパクトをもたらしている取組であることを実感しましたね」(益田委員)

大豊町を含む土佐嶺北(れいほく)地域は四国の中でも山深いエリアとして知られています。大豊町はそのなかでもとびきりの秘境といっていいところ。さらに八畝は大豊町のなかでも山深い集落です。そんな厳しい条件の中、限界集落をどのように活性化していくか。難しい課題ではありますが、『大豊シャクヤクの会』の取組は、それが不可能ではないことを教えてくれました。

<大豊シャクヤクの会 >
公式サイト http://www.otoyopeony.com/


イベント参加者を昼食会でおもてなし。


心のこもった手作り料理が並びました。

鹿肉バーベキューも抜群!

益田委員も参加して地キビの定植作業。

参加者が思いを書いた札を立てました!
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