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第3回グッドライフアワード環境大臣賞グッドライフ特別賞

特定非営利活動法人チームふくしま

福島ひまわり里親プロジェクト

『福島ひまわり里親プロジェクト』は、東日本大震災からの復興のシンボルとしてひまわりを育て、福島県に、そして日本全国に防災のネットワークを広げようとする取組です。2011年5月にスタートした取組は、すでに10万人以上が里親として参加し、5トン以上のひまわりの種が福島に集まりました。


全国の里親さんがひまわりを育て、種を福島に送る取組です。
復興のシンボルとして福島と全国の人たちを「ひまわり」の絆が結ぶ
ムービーもご覧ください(これから先は、環境省サーバーを離れます)
活動のきっかけは?
東日本大震災で仕事が減った福祉作業所への仕事として

第3回グッドライフアワードで環境大臣賞グッドライフ特別賞を受賞した『福島ひまわり里親プロジェクト』。取組を行っている特定非営利活動法人チームふくしまは、福島県内の若手企業経営者などが集まる団体です。2011年3月に発生した東日本大震災では、原子力発電所の事故もあり福島に大きな被害をもたらしました。

チームふくしま理事長の半田真仁さんは企業の採用や社員教育などをコンサルティングする会社の経営者。震災発生当時、福島県二本松市内の福祉作業所『和(なごみ)』の社員研修の準備を進めているところでした。震災が起きた直後、作業所に「大丈夫ですか?」と連絡すると、地震などでの被害はそれほど大きくはないものの、お土産用のまんじゅうの箱折りなどが中心だった作業所の作業所の仕事が「0」になって困っているということを知りました。

ちょうどその頃、心配して連絡をくれた千葉県内の同業者の先輩からの話で、神戸では阪神淡路大震災からの復興のシンボルとして「ひまわり」を植える活動がたくさんの人たちを元気づけていることを知ります。当時、ひまわりには除染の効果があるという噂があったこともあり、チームふくしまの仲間たちで「ひまわりで復興への取組ができないか」と知恵をしぼりました。

チームふくしまには、印刷会社や映像制作会社などの仲間が集まっています。半田さんの会社も、研修などのイベントを企画運営するのが本業でもありました。最終的にひまわりの除染効果は科学的に証明されませんでしたが、真夏に咲き誇る大輪のひまわりの花には、見る人を元気にしてくれる明るい力があふれています。仲間たちの賛同と協力を得て、プロジェクトは一気にスタートしたのです。


絵本付きの種もあります。

種の袋詰めなどの仕事が福祉作業所の
雇用対策になっています。


今年も全国からたくさんの種が集まりました。

チームふくしまのみなさんと、
キャラクターのたびくま君。
どんな取り組みを?
福島に送られたひまわりの種からバイオディーゼル燃料も!

『福島ひまわり里親プロジェクト』は、ひまわりの種で福島と全国のたくさんの人たちの心を繋ぐ取組です。活動の理念は「For you,For Japan」という言葉。活動の目的は、障がい者福祉施設の雇用対策、観光対策(教育旅行の誘致など)、防災教育という三本柱を掲げています。

まず、里親となってひまわりを育てたい人は、プロジェクトのウェブサイトなどを通じてひまわりの種を購入します。この種の袋詰めなどの仕事を、県内4カ所の福祉作業施設に発注することで福祉施設の雇用対策となっています。

種を買った全国の里親さんは、植えて育てたひまわりから種を収穫し、福島へと送ります。この種は福島県内の公園や学校、観光施設や旅館、店舗などに配布され、翌年には再び黄色い大輪の花を咲かせます。里親としてひまわりを育てた学校や企業、個人のみなさんや観光に来た方々が福島に咲くひまわりを見るために訪れてくださることで、観光振興の役割を果たしています。2015年には、東京都立葛飾盲学校の生徒たちが福島へ修学旅行に訪れてくれたそうです。

福島で採れたひまわりの種からはひまわり油が作られ、これを用いたバイオディーゼル燃料を使った路線バスを走らせるという取組も、福島交通の協力で実現しています。

さらに、里親さんたちの取組を報告する『ひまわり甲子園全国大会』を2013年から開催。全国の地方予選で選ばれたユニークな取組に関わる人たちが、年に一度、福島に集結して自分たちの取組を報告する晴れ舞台を設けました。今年の全国大会の舞台では、取組のテーマソングである『ひまわり』というオリジナルの歌も作られて「ひまわり甲子園」の会場では、歌を作り福島に贈ってくれた福井県鯖江市の小学生と、いわき市立小名浜東小学校の子どもたち、そして福祉作業所「和」の利用者が一緒に歌いました。

こうした取組は、中学校の公民の教科書にも紹介されました。全国の里親さんには小中学校や高校も多く、ひまわりを通じて東日本大震災を思い返し、福島への思いを繋ぐことが、次世代への防災教育としても役立っているのです。


全国でいろんな里親さんが
ひまわりを育てています。

福島県内にたくさんのひまわりが
植えられています。


「ひまわり」を合唱する小名浜東小学校、
福井県の小学生、福祉作業所「和」のみなさん。

ひまわり油からの燃料で福島交通の
路線バス2台が走っています。
成功のポイントは?
シンプルな活動から大きな広がりが生まれています

チームふくしまの仲間はさまざまな企業経営に関わるプロフェッショナルな人たちの集まりですが、NPOの運営や補助金申請など行政との連携は不慣れな部分だったとのこと。でも「このプロジェクトを通じて、福島市や福島県と密接に連携することができるようになったことが、スムーズな活動のの運営の原動力になっている」と半田さん。今では、福島市内の全ての公園に、プロジェクトのひまわりが植えられているそうです。グッドライフアワードで環境大臣賞 グッドライフ特別賞を受賞したことで、福島市長への表敬訪問も実現。福島市や県との協力関係は、ますます深まっています。

また、今回の取材では福島市内で開催された『ひまわり甲子園2016全国大会』へ取材に伺い、全国から集結した里親さんや、各地区のキーパーソンとして取組に関わる人たちの熱意に驚かされました。ひまわり甲子園では全国各地の地区予選で選ばれた里親さんが福島市に集まるのですが、地区予選はすべて各地区のキーパーソンの方々が運営しているそうです。

チームふくしまでは取組をリードする人を育成するためのマニュアルを作成して、全国に新たなキーパーソンを生み出すための工夫を重ねてきています。2011年のスタートから5年が過ぎて、そうした取組が全国各地で大きな花を咲かせ始めているということでしょう。

ひまわりを育てて種を送る。里親として参加する人たちが「やるべきこと」はシンプルです。でも、種から育てるためには、芽を出してすぐ野鳥についばまれてしまわないように工夫したり、毎日のように水やりをしたりと、半年ほどの期間にわたって面倒をみなければなりません。シンプルな作業だけど、福島のことを思いながら継続する。だからこそ、それぞれの里親さんたちの中に『ひまわり甲子園』で報告されるような熱意が芽生え、大きく育つのだろうと感じます。

たとえば今回の全国大会では、プロジェクトに参加していた広島県の大学のサークルが、2014年に広島で起きた水害からの復興のために独自にひまわりの輪を広げる取組をしていることが報告されました。また、個人ではじめた里親としての取組が、ママ友に、さらには地域コミュニティに広がり、絆を深めるために役立っていることも紹介されていました。

『福島ひまわり里親プロジェクト』は福島の復興を応援するために始まった取組ではありますが、その理念である「For you,For Japan」という思いは全国各地の里親さんの中でそれぞれに花開き、誰もが社会のためにできることをやる「グッドライフ」の取組へと広がっていたのです。


ひまわり甲子園で太鼓演奏に参加する
理事長の半田真仁さん。

茨城県鉾田市立旭南小学校のみなさんの
プレゼンテーション。

ガールスカウト千葉県第98団

全国から集まった里親のみなさんで
会場は満員でした。
レポート
大葉ナナコ実行委員もひまわり甲子園を応援!

福島市内の福島県文化センターで開催された『ひまわり甲子園2016全国大会』には、グッドライフアワードの大葉ナナコ実行委員が応援に駆け付けました。トップバッターとして取組のプレゼンテーションを行ったのは、福島県いわき市立湯本第一小学校5年生の大和田紗希さん。紗希さんは取組の当初から親子でこのプロジェクトに関わっていて、現在は「チームふくしま」の最年少理事を務めています。

もともと冨岡町で暮らしていた紗希さんの家族は原発事故の影響でバラバラの生活を強いられていましたが、ようやくいわき市内で家族揃って暮らせるようになった事など、小学5年生とは思えない素晴らしいプレゼンテーションに、大葉ナナコ実行委員も感心しきり。

小学生理事としての活動は「大人の人に振り回されるのがちょっと大変」という紗希さん。「大人になったら地域社会づくりのリーダーとして活躍してね」と、少し気の早い大葉さんからの期待の言葉には「自分でもそういう大人になりたいという思いはあります。まだ何ができるかわからないけど、今の思いを忘れずに頑張ります」と答えていました。

スタートから5年。里親は全国で10万人以上、福島に送られたひまわりの種は累計で5トンを超えた『福島ひまわり里親プロジェクト』。理事長の半田さんは「福島の復興だけに留まらず、ひまわりが広島の折り鶴のような象徴となって、日本を元気にしていく取組にしていきたい」という思いをもっています。

「全国にますますひまわりのネットワークを広げたい。2020年には、人工衛星から撮影した日本の写真が列島のカタチに真っ黄色に見えると、NASAやJAXAから問い合わせがくるくらいにすることが目標です」と半田さん。今後もさらに活動が盛り上がり、日本全国にひまわりのネットワークが広がることを応援しています。


大和田紗希さん(中央)、
妹のみず穂さん(右)(小2)と
大葉ナナコ実行委員(左)。

司会はラジオ福島アナウンサーの
山地美紗子さん。


全国各地のキーパーソンの方々にも
表彰状が贈呈されました。

これからもたくさんのひまわりが日本中で
咲き誇ります!
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