1. 日時
平成24年11月21日(水) 14:00~17:00
2. 場所
財団法人日本環境協会 日本橋オフィス 大会議室(東京・日本橋馬喰町)
3. 参加者(敬称略)
委員(50音順)
- 岡田 康夫
- (株式会社大丸松坂屋百貨店 本社CSR推進室スタッフ 社会活動推進担当)
- 片山 裕司
- (一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 環境委員会 委員長)
- 辰巳 菊子
- (公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 常任顧問)
- 西尾 チヅル
- (筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授) *座長
- 花田 眞理子
- (大阪産業大学大学院 人間環境学研究科 教授)
オブザーバー(50音順)
- 阿部 法子
- (公益社団法人日本通信販売協会 事業部 係長)
- 小栗 和行
- (経済産業省 商務情報政策局 商務流通保安グループ 流通政策課 課長補佐)
- 島村 真司
- (一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 CSR推進部 課長)
- 渡辺 正治
- (日本チェーンストア協会 政策第三部 リーダー)
環境省
- 峯村 高志
- (環境省 総合環境政策局 環境経済課 課長補佐)
- 田中 美穂
- (環境省 総合環境政策局 環境経済課 環境専門調査員)
事務局
- 麹谷 和也
- (財団法人日本環境協会 グリーン購入ネットワーク 事務局長)
- 深津 学治
- (財団法人日本環境協会 グリーン購入ネットワーク 事務局次長)
- 木村 憲
- (財団法人日本環境協会 エコロジカル・リテラシー研究所 代表)
4. 議題
(1) 開会
(2) 環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査
(3) 小売事業者の評価手法(案)
(4) 今後のスケジュール
5. 配付資料
- 資料1
- 消費者におけるエコなお買い物促進策 検討会委員名簿
- 資料2
- 環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査
- 資料3
- 小売事業者の評価手法(案)
- 資料4
- 今後のスケジュール
- 参考資料1
- 調査結果詳細版(国内事例)
- 参考資料2
- 調査結果詳細版(海外事例)
- 参考資料3
- 評価手法(案)に基づいた調査事例の得点イメージ
- 参考資料4
- エコ・アクション・ポイントの登録・承認基準
- 参考資料5
- 第1 回検討会議事録
6. 議事
(1) 開会
第2回検討会開会にあたり、事務局より検討会への出席に対し謝意が述べられ、出欠の状況について報告がなされた。続いて、座長の西尾チヅル氏より議題及び進行に関する事項について話があり、議事に先立ち配付資料の確認が行われた。
[開会]
- 麹谷氏:それでは、第2回検討会を開会させていただきます。本日は大変お忙し中、またお寒い中、本検討会にご出席をいただきありがとうございます。なお、本日は委員の臼杵様、中坊様、オブザーバーの尾池様、高橋様がご欠席となっております。では、西尾座長に進行をお願いいたします。
- 西尾座長:皆様、お忙しいところ出席をいただきありがとうございます。本日は、皆様のご意見を十分にお聞きするという意味もあり、3時間という時間を設定させていただいております。前回同様、活発なご議論をお願いできればと思います。
今日は、環境配慮型製品普及の先進事例に関して、委員の皆様からのアドバイスを踏まえ事務局の方で行った調査の報告をしていたいただき、これに基づき、事業者の評価手法の案について皆様からご意見をいただきたいと考えております。特に評価手法に関する議論に時間を取りたいと考えております。
それでは、議題に入る前に配付資料の確認をお願いいたします。 - 深津氏:本日お配りしております資料は、まず議事次第が書かれたものがあり、この中に資料1から資料4が綴じ込まれております。別紙として、参考資料1から参考資料5をお配りしております。なお、参考資料5の第1 回検討会議事録につきましては、参加いただいた皆様に確認をいただいております。配付資料につきましては以上でございます。
(2) 環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査
事務局より環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査結果について、調査の目的、進め方、実施概要の説明、ならびに国内・海外の事例の報告が行われた。これを受け委員による議論が行われ、事例の取組内容についての質問や事業者の評価にあたっての視点などについての意見が出された。
[説明及び議論経過]
- 西尾座長:それでは、環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査結果について、事務局のほうから説明をお願いいたします。
- 深津氏:第1回検討会から少し時間が経過していることもあり、環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査の目的、進め方、実施概要についてあらためて説明をさせていただきたいと思います。
本事業は、環境配慮型製品を積極的に販売促進する小売事業者を適切に評価しインセンティブを与えることによって、中間層と呼ばれる個人消費者のグリーン購入を促していくための手法を検討することを目的としており、そのために環境配慮型製品普及に積極的に取組んでいる小売事業者の先進事例について調べるというのが、本調査の目的であります。具体的には、参考となる国内外の先進事例を調査することにより、小売事業者の役割や販売促進につなげる独自の取組、販売促進効果、課題等を整理し、環境配慮型製品を積極的に販売促進する小売事業者を評価するために必要な要素を洗い出し、評価手法につなげていきたいと考えております。
調査の対象は、百貨店、大規模小売店舗(GMS)、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、通信販売の5つの業態で、ホームセンター、家電量販店、自動車販売店は今回の調査対象から除いております。対象とする製品分野は、食料品及び飲料・生活文化用品等、購入頻度が高い非耐久消費財としています。これらを対象に、国内外それぞれ10件程度の事例について調査を行うこととしました。
調査項目としては、環境配慮型製品普及の先進事例の概要に関して13項目、小売事業者の環境配慮型製品普及に関する取組姿勢について5項目を設定いたしました。調査項目につきましては、第1回検討会において提示させていただいた内容をベースに、委員の皆様の意見、環境省様との調整を踏まえ決定させていただきました。これらの項目について文献調査、インターネットによる調査等を行い、国内の事業者についてはヒアリング調査も実施しました。
調査対象事例の選定にあたっては、それぞれの小売事業者が発行している環境報告書、ホームページ等で環境配慮型製品の販売に関する取組状況を事務局で把握するとともに、本検討会の委員及びオブザーバーの皆様から先進的な事例に関する推薦をいただき、この中から、短期的な取組ではなく継続的に実施されている取組事例、販売効果が表れていると考えられる事例を選ばせていただきました。また、業態ごとの事例数のバランス、環境配慮型製品の基準・内容のバリエーション等についても考慮いたしました。
国内の小売事業者については9事例について調査を行いました。内訳としては、GMSが1事例、スーパーマーケット3事例、百貨店2事例、通信販売2事例、コンビニエンスストア1事例となっております。なお、推薦をいただいた事例の中に、取組開始から時間が経過しておらず実績が把握できないケースがあり、これについては対象から外させていただいております。これらの事例の中からかいつまんで、いくつかの取組についてご紹介をさせていただきたいと思います。
まず、イオン様の取り組みをご紹介いたします。同社は環境配慮型製品の普及に向け様々な取組を進めておられますが、今回はMSC 認証商品、FSC 認証商品、カーボンフットプリント商品の販売にフォーカスを当てて調査を行いました。2006年以降、順次これらの商品の販売を開始し、通年で取組を展開されており、実施店舗は2,000店舗を超えています。実施効果については、2006年の販売実績に対し2011年には大幅に増加していることがわかります。環境配慮型製品に関する方針については、サステナビリティ基本方針に環境配慮型製品を積極的に扱っていくことが書かれています。また、イオン生物多様性方針の中に、MSC認証商品やFSC認証商品の販売を拡大していく旨が書かれており、目標値も設定されています。なお、詳細につきましては参考資料1をご覧いただければと思います。
次に、百貨店として大丸松坂屋百貨店様の取組を取り上げさせていただきました。同社では、カーボン・オフセット商品の販売ということで、「トロージャンの森」植林プロジェクトを2009年から開始され、現在も継続されています。この取組は、商品自体が環境に配慮しているということではなく、紳士服のプライベートブランド「トロージャン」のスーツ・ジャケット10 着の販売につき、中国内モンゴルの植林地にカラマツの木を1 本植林するというものです。店舗のPOPや商品のタグなどによる訴求を行っておられます。2009年の取組開始時点はスーツが対象で、2010年からはジャケットも対象に加えておられます。実施効果としては、販売実績、トロージャンブランドにおけるスーツ・ジャケットの売上の割合、仕入れの割合が向上しています。事業者としての取組方針に関しては、「環境にやさしい商品・サービスの選定・提供に関するガイドライン」を策定し、これに基づき商品を選定・提供されています。
通信販売における取組として、千趣会様では7つの視点に基づき独自に環境配慮型製品の基準を設け、カタログとウェブ上にマーク表示を行い、販売を促進されています。また、オーガニックコットンの普及にも力を入れられ、キャンペーンなどを通じて訴求をされています。同社では、環境方針の中に環境配慮型商品の開発・採用推進を明記し、これに基づき取組を推進されています。
コンビニエンスストアの取組事例において、ファミリーマート様では、1999年からプライベートブランドとして「We Love Green」商品の企画、取扱商品の拡充、販促を行っておられます。取組開始時点では、製品の素材、使用時、廃棄時の環境負荷という観点から基準を設定しておられましたが、2008年に製造時における環境負荷の視点を追加されています。当初は16アイテムでスタートし、現在は35アイテムに増加しています。コンビニエンスストアでは食品をはじめ多様な商品を扱っていることもあり、売上全体に占める「We Love Green」商品の割合は1割前後と伺っています。店頭での販売促進に加え展示会等でアピールを行っておられ、また「カーボン・オフセット大賞」の優秀賞を受賞されています。同社では、プライベートブランド商品に関する基準を設定しており、基準のレベルを高めていくために見直しを行っておられます。
海外の取組については7つの事例について調査を行いましたが、十分な情報を集めることができなかったものもございます。
米国のGoodGuideは、製品を環境面、健康面、社会面から評価している企業の事例で、これら3つの側面について10段階で評価し情報提供を行っています。消費者がスマートフォンにアプリケーションソフトをダウンロードし、店頭で製品のバーコードを読み取ると評価点数が表示されるという仕組みになっています。2007年から取組を開始し、現在、食品、衣料品、自動車、電気製品など145,000製品について評価が行われています。米国全土で情報を見ることができ、連携企業が増加しているとの情報が得られています。この仕組みにより環境に配慮した製品などの購入がどれだけ促進されているかは、把握できていません。この事例は小売事業者としての取組ではなく、第三者が製品を評価し情報提供を行っているケースであり、参考情報として認識いただければと思います。
インターネット通販のアマゾンでは、「Amazon Green」というサイトを設け、環境配慮型製品の販売を行っています。EPEAT、エナジースター、ウォーター・センス、オーガニックなどの認定を受けた製品を掲載、販売しており、対象製品にはパソコン、テレビ、ベビー用品、日用品などが含まれています。販売状況について問合せを行っていますが、まだ情報が得られていない状況です。
スウェーデンの生活協同組合では、MSC、KRAV、ノルディックスワンなどの第三者認証ラベルが付いた製品等を扱っており、対象製品数は約2,800にのぼっています。店頭のPOPやパッケージを通じて消費者への訴求、販売促進を行っており、消費者が受け取るレシートにどれくらい環境配慮型製品を購入したかということが印字されている、との情報も得ています。
韓国におけるグリーン・クレジット・カードの事例は、小売事業者自らによる取組ではなく、銀行協会を中心に小売事業者、環境団体などが協力して進めているものです。銀行協会が発行するグリーン・クレジット・カードを使用する消費者が、水道光熱費の節約、公共交通機関の利用、環境配慮型製品の購入等の行動を行うとポイントがたまる仕組みになっています。韓国政府が環境産業の育成に向け国を挙げて進めている「Green Growth」の施策の一環として、2011年4月からスタートしました。グリーンPOSのシステムが整備されており、導入店は2011年時点で728店、2012年末には3万店を見込んでいるとのことです。
以上、環境配慮型製品普及の先進事例に関する調査結果について、国内、海外の事例をかいつまんで紹介をさせていただきました。調査件数や調査内容に関してはまだ不十分な面もあるかと思われ、引き続き情報収集を行っていく必要性があると感じております。 - 西尾座長:ありがとうございます。今回は、限られた期間の中で国内外の先進的な事例について調査を行っていただきましたが、事例調査に関する今後の対応についてはどのように考えておられるのでしょうか。
- 深津氏:特に海外の事例については、まだ十分な情報が入手できていない面がありますので、引き続き情報把握に努めていきたいと考えております。フォールフーズマーケット、ウォルマート、テスコなどについては、次回の検討会に向けて情報収集を進めていきたいと考えています。
- 麹谷氏:委員ならびにオブザーバーの皆様から、このほかにも先進的な事例として調査したほうが良いと思われる企業がありましたら、お知らせいただき、調査対象に加えていきたいと考えておりますので、引き続き情報提供をいただければと思います。
- 西尾座長:今回の調査結果について、皆様のほうからご質問、ご意見等がありましたらお願いいたします。
- 辰巳委員:海外の事例の中のGoodGuideと韓国のグリーン・クレジット・カードの事例は、大変興味深いものだと思いますが、小売事業者による取組ではないため、この調査においてどのように位置づけておられるのかお聞きしたいと思います。
- 深津氏:今回の調査の対象としてはややはずれる面もあるかと思われますが、小売事業者による環境配慮型製品の販売促進において非常に興味深い取組であると考えられるため、情報を収集し紹介させていただきました。
- 辰巳委員:米国の小売事業者がGoodGuideの対象商品をどの程度扱っているか、ということは把握できるのでしょうか。日本国内において小売事業者がエコマーク認定商品をどの程度扱っているのか、というのと同様の視点から、そのような状況がわかればと思います。
- 深津氏:小売事業者は、GoodGuideの対象商品であるかどうかについては、あまり意識して扱っていないのではないかと考えられます。
- 花田委員:GoodGuideは、環境や健康に良い商品を取り上げて評価するという仕組みではなく、様々な商品を淡々と評価し消費者の選択を助ける仕組みなのではないかと思われます。このため、GoodGuideの対象商品を小売事業者が扱っているかどうかは、評価の基準にはなりにくいのではないかと思います。
このシステムは、スマートフォンを使うことにより店頭で商品の情報が得られる仕組みであるため、家で情報を見てから商品を買いに行くのに比べ、かなり力を持つものであると考えられます。以前、狂牛病や野菜の農薬の問題が発生したのを契機に、トレーサビリティということが注目され、商品のナンバーを入力すると生産者や生産方法などの情報が見られるという仕組みを導入した店舗があったかと思います。このような仕組みは、環境に配慮した商品の購入を助けている面があり、導入している店舗は評価の対象になるのではないかと思われます。そのような視点から、GoodGuideのような仕組みは小売店舗の評価につながる面があるかと思われます。 - 西尾座長:花田委員がおっしゃられたように、GoodGuideにおいてはエコプロダクツではなくても評価の対象になっている可能性があると思われます。一方、韓国の銀行協会が中心となって進めているグリーン・クレジット・カードは、環境に配慮した商品の購入や環境配慮行動によってポイントがたまる仕組みだといえます。
GoodGuideは、環境の側面だけでなく健康や社会の側面も含めて評価し、情報を提供する仕組みとなっています。一方、今回の調査による事例の中には、環境に関する認証を受けた商品を積極的に販売していこうという事例もあります。また、コーズ型の商品を開発し販売していくという視点も見られ、こうした多様な事例についてどのように考えていったらよいのか、というのがポイントの一つかと思われます。 - 花田委員:小売事業者の評価においては、扱う商品のエコ基準を持っているかどうかという点がひとつあると思います。商品のエコ基準については、MSCやFSCなどのように外部の機関が設定している基準を採り入れるという方法と、プライベートブランド商品の開発などにおいて自社としての基準を設定する方法があると思われます。評価にあたっては、取り扱う商品に関してこうした基準を持っているかどうかということと、この商品を購入したらこういう環境配慮につながりますという伝え方の側面を、整理して考えていく必要があるかと思います。
- 辰巳委員:韓国の事例についてですが、環境配慮型製品の購入などにおいてグリーン・クレジット・カードを使うとポイントがたまるということだと思いますが、日常の買い物においていくつかの商品を同時に購入し、その中の1つだけが対象商品であった場合には、ほかの商品と区別した形でポイントの計算が行われる仕組みになっているのでしょうか。
- 深津氏:個別商品のバーコードを読み取って、個々に計算される仕組みになっていると思います。
- 花田委員:公共交通機関の使用も対象になっているので、クレジットカードがSuicaのようなカードの機能を兼ね備えているということでしょうか。
- 深津氏:その点については把握しておりません。
- 西尾座長:対象となる品目が全品目の中でどれくらいの割合を占めているかということについてですが、例えば、非常に先駆的な取組ではあるけれど店舗の売上全体に占める割合はごくわずかである、というようなケースなどもあるかと思うので、こうしたデータというのはなかなか提供していただけないかもしれませんが、今回調査をされた事例については把握をされているのでしょうか。
- 深津氏:今回調査を行った事例の中では、大丸松坂屋百貨店さんの取組において、トロージャンブランドにおけるスーツ・ジャケットの売上、仕入れの割合に関するデータが把握されています。
- 岡田委員:店舗の売上全体に占める対象商品の売上の割合をとらえた場合、この数値よりかなり少なくなると思われます。
- 花田委員:そのようなデータは、ご苦労して出していただいてもあまり意味がないのではないかと思われます。むしろ、スーツ・ジャケット全体の売上の中で、カーボン・オフセットが付いていることを認識して購入した割合が、効果の評価として重要なのではないかと思います。
- 辰巳委員:この取組により、どれくらいの植樹費用がかかっているかというのは把握できますでしょうか。
- 岡田委員:そういったデータは把握できると思います。
- 辰巳委員:消費者による環境配慮型製品の購入を促す仕組みについて評価することを考えるべきであって、売上に関する細かい数値が必要かどうかという点については、どうなのかなと思います。
- 西尾座長:消費者に商品の購入における環境配慮に気づかせるという点を評価するのか、それも重要ではあるが、やはり環境配慮型商品の取扱比率や販売比率についても評価すべきなのか、その点をどのように考えるかがポイントかと思われます。
- 片山委員:例えば、イオンさんの取組事例ではMSC認証商品やFSC認証商品を扱っておられますが、流通している商品の中で認証されたものが占める割合は非常に少ないと思われます。こうした状況の中で、用意した商品が全部売れたといったデータは意味があると思いますが、売上全体に占める割合をとらえるのがどれだけ意味があるのか疑問があります。規模が大きくなればなるほど環境配慮型商品を揃えるのも大変になるため、全体に占める割合を重視すると評価が難しくなる面もあるのではないかと思います。
- 西尾座長:次のテーマに関する議論にも入ってきているので、ご質問についてはそのつどお受けすることとして、次の議題に移らせていただきたいと思います。
(3) 小売事業者の評価手法(案)
事務局より、環境配慮型製品の販売を促進する小売事業者の評価手法について、対象事業者、対象製品分野、評価手法の案が示された。これを受け委員による議論が行われ、評価項目として取り上げるべき事項、どのような側面に評価の重点を置くか、評価に必要な経営データの開示、業態による環境配慮対応の違いと評価における業態区分の必要性、インセンティブの内容と評価方法の関係などについて意見が出された。
[説明及び議論経過]
- 西尾座長:それでは、小売事業者の評価手法の案についてご説明いただけますでしょうか。
- 深津氏:今年度の業務においては、積極的に環境配慮型製品の販売促進を行った事業者を適切に評価するための手法、ならびに環境配慮型製品の普及に特に貢献した小売事業者に付与するインセンティブについて検討することの2点を目的としております。先進事例の調査を通じて小売事業者の取組や効果、課題について把握し、これを踏まえ評価手法の案を作成させていただきました。
評価対象は小売事業者であり、事業者による環境配慮型製品の販売実績を主な評価対象としてはどうかと考えております。評価対象とする製品分野については、事例調査と同様、食料品及び飲料・生活文化用品等の非耐久消費財としてはどうかと考えております。
評価項目の考え方と評価内容については、施策の目的が消費者における環境配慮型製品の普及であることから、環境配慮型製品の普及への貢献度を中心に評価項目に設定してはどうか、というのが一つ。また、環境配慮型製品を普及させるためには、消費者への訴求や消費者と接する従業員の教育・研修等が不可欠ですが、訴求方法や内容、研修方法等は小売事業者の独自性にゆだねられる事項であることから、評価項目とはせずに前提条件という位置づけにしてはどうかと考えています。具体的には、評価を受ける小売事業者の前提条件として、消費者に気づきを与える訴求方法を採っているか、消費者の目に触れる機会を積極的につくっているか、従業員に対する研修を行っているか、という3つの項目を設けております。
評価項目としては7つの項目をご提案したいと思います。1つ目は環境配慮型製品に関する調達方針があること、2つ目は商品群に占める環境配慮型製品の仕入れ構成比率、3つ目は環境配慮型製品の定義・内容について具体的に示せること、4つ目は実施効果として環境配慮型製品の売上額が前年度比100%以上であること、5つ目は実施効果のもう一つの側面として、商品群に占める環境配慮型製品の売上構成比率、6つ目は環境配慮型製品の対象品目数が前年度比100%以上であること、7つ目は取組開始時からの継続性と今後の継続・発展計画についての具体性で、これらの項目により評価を行ってはどうかという案として提示をさせていただいております。
ご議論をいただくにあたっての論点として、4つの項目を挙げさせていただいております。1つ目は評価対象についてで、特定の商品群の取り組みを対象として評価するのか、小売事業者が販売する環境配慮型製品全体の取り組みを評価対象とするのかという点でございます。2つ目は、前提条件、評価項目、評価基準が妥当かどうかという点でございます。3つ目は環境配慮型製品の定義についてですが、既に運営されているエコ・アクションポイント・プログラムのガイドラインで定められている商品購入に関するアクションのうち重なる部分と整合を図る形で、環境配慮型製品を定義してはどうかという考え方もあり、こうした視点を含めご議論をいただければと考えております。4つ目は評価対象となる期間についてで、短期的な実績を評価するのか、ある程度の期間の継続性を求めるのかという点でございます。
以上の点について、忌憚のないご意見をいただければと思います。 - 西尾座長:どうもありがとうございます。今ご説明いただいた案をたたき台として、ご議論をいただきたいと思います。
- 片山委員:対象製品に関してですが、食品などの商品自体ではなくノントレー販売などの売り方というのは、評価の対象には含まれないのでしょうか。
- 麹谷氏:ご指摘いただいて点は、皆様にご議論いただきたい事項の一つかと思っております。この業務においては、消費者の方々に環境配慮型製品であることがしっかりと届き、消費行動を変えていくことにつながるかどうかという点が重要なのではないかと考えております。こうした観点からご議論をいただき、ノントレー商品のような売り方が対象に含まれるということであれば、そのような方向で検討を進めていければと考えております。
- 辰巳委員:売り方というのは非常に重要だと思います。量り売りやバラ売りなどを行っている店舗もありますが、そこには小売店さんの努力があるわけで、ノントレー販売などを含めた売り方という側面についても評価して良いのではないかと思います。
- 花田委員:私も売り方については対象に含めるべきではないかと思います。資料3に、評価を受ける小売事業者の前提条件として、消費者に気づきを与える訴求方法を採っている、消費者の目に触れる機会を積極的につくっている、という項目が挙げられていますが、これらの事項を前提条件として位置づけるよりも、こうした努力を評価そのものに含めても良いのではないかと強く思います。
- 辰巳委員:容器包装の視点から考えると、ノントレー販売のような取組を売り方としてとらえるのか、あるいは製品に関わる環境配慮に含めるのか、という議論もあるのではないかと思います。
- 西尾座長:ご質問をいただいた片山委員としては、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
- 片山委員:商品自体と販売の仕方の2つの視点が必要だと思います。小売事業者の立場からすると、売り方に関する評価がないと、環境配慮型製品をメーカーから仕入れるか、あるいはプライベートブランドとして開発するという方法しかなくなってしまうわけです。そういう意味からも、商品の売り方についても評価をしていただければと思います。
- 西尾座長:小売事業者さんの努力を評価するとしたら、売り方の部分も見るべきであるということですね。
- 阿部氏:店舗での販売におけるトレーなどの容器包装の削減について議論がされているかと思いますが、通信販売の場合は、お客様に商品をお届けする際に必ず何らかの梱包が必要になってきます。このため、通信販売事業者の評価にあたっては、商品と包装の関係や包装の位置づけ、輸送上での必要性などが違ってくる部分もあることを認識していただきたいと思います。もちろん過剰包装は避けるべきですが、単に簡易包装が望ましいというわけでもないことをご理解いただきたいと思います。
- 西尾座長:そういう意味では、通信販売業界においても包装などの面で積極的に取組んでおられる事業者さんは評価できる、というふうに考えられますしょうか。
- 阿部氏:通販の特性を考えれば、商品自体の評価と包装の部分の評価を分けて考えていただいても良いのではないかと思います。
- 花田委員:通信販売事業者さんにおいても、カタログなどで独自の基準の基づく環境配慮商品を区分して掲載したり、該当商品にマークを付けたりするなどの工夫をされているところがあるので、こうした売り方というのは評価の対象にすべきではないかと思います。どのような業態においても、売り方の面で何らかの努力ができるのだと思うので、売り方に対する評価を入れることは必要ではないかと思います。案では前提条件に含まれていますが、売り方にも様々な取組のレベルがあると思われますので、評価の中に入れることによって取組を促進することにつながるのではないかと思います。
- 辰巳委員:どの程度の環境配慮のレベルの小売事業者さんを評価しようとしているのかによっても、扱い方が変わってくると思います。裾切りのような形で売り方を前提条件に含めるということは、かなりハードルを高くすることになるのかもしれないと思います。努力賞のようなレベルの事業者の方も評価するというのであれば、前提条件ではなく評価項目に入れることも検討したほうが良いのではないかと思います。
- 西尾座長:事務局案として示された評価項目は定量的な側面が強く、こうした形で評価することによる良い面もありますが、それだけでは十分に評価しきれない面があるのだとしたら、それ以外の要素をもう少し入れていくことを検討すべきかもしれません。
- 岡田委員:容器包装に関する取組では、例えば靴箱を使用しないで販売する方法、詰め替え式の化粧品の販売などが出てきていますが、どちらかというとメーカーさんサイドの取組が中心となっています。大手のスーパーマーケットさんなどでは、プライベートブランド商品において容器包装削減の取組も進められているかと思いますが、こうした取組は評価に含めるべきかと思います。
今回の事業において、中間層と呼ばれる消費者の行動変化につなげるという点では、消費者のライフスタイルの変化を促す商品や売り方、啓発活動は重要になってくると思います。前提条件の中に従業員の教育・研修が含まれているようですが、消費者に対する普及啓発活動を進めていくためにはこうした取組が非常に重要であり、評価対象から外すのはいかがなものかなと感じています。 - 片山委員:フランチャイズチェーンの事業者の立場からしますと、個別の店舗レベルで評価をするのか、フランチャイズチェーン全体で評価をするのかという点が検討事項として挙げられますが、フランチャイズチェーン全体で評価するほうが妥当なのではないかと考えております。
それから、評価のハードルをあまり上げてしまうと、結果として評価された店舗があまり消費者の方の目につかない形になってしまう可能性があり、その一方で、ハードルを下げていたるところに環境配慮店舗があるというのもどうかと思われるので、適度な評価基準を設定することが重要だと思います。また、どこが評価を行うのかという点も重要だと思います。環境省さんが行うのか、あるいは他の機関が行うのかによって、消費者の方のとらえ方も違ってくると思われます。 - 峯村課長補佐:グリーン購入法に基づく調達とは異なり、国が物品等を調達する事業者を対象とするものではないため、国が直接評価を行うのではない形が望ましいのではないかと考えております。
- 麹谷氏:基本的には、このような検討会を設置して評価を行い、その結果を環境省さんとして受け止めていただく、といったようなイメージを持っております。
- 峯村課長補佐:できれば、後援といったレベルにとどめておきたいと考えています。
- 麹谷氏:評価にあたっては、事業者さんの売上や商品構成などに関するデータを収集する必要が生じますが、こうしたデータの中には企業にとって開示しにくいものもあるかと思います。こうした情報についてどの程度提供していただけるのか、お伺いできればと思います。
- 岡田委員:ブランドごとの細かなデータについては把握できるかどうかという問題はありますが、売上に関するデータについては基本的には開示できるのではないかと思います。
- 片山委員:個別の店舗のデータは出せないと思いますが、チェーン全体のデータについては出せるのではないかと思います。ただ、情報を提供するにあたっては、環境に配慮した小売事業者であると評価されることの価値がどれくらいあるのかという点に関して、データを把握・公表するに見合うものか、という側面もあるかと思います。
- 阿部氏:通信販売業界では、会員に対して売上高の調査を行っていますが、回答企業は半分くらいにとどまっており、あとは推計値のような形で把握しています。やはり、環境に配慮した事業者として評価されることが、どれだけ経営面でプラスになるのかが明確にならないと、データを出してもらうのはなかなか難しい面があると思います。
- 麹谷氏:例えば、このような検討会の中でのみ情報を扱うということでも、難しいでしょうか。
- 阿部氏:企業によっては全体的な売上についてもなかなか出してもらえないケースがあるので、検討会の位置づけやデータがどのように使われるのかが示されないと、難しい面があるのではないかと思います。特に、細かい部分の売上データの提供については、さらに難しくなると思います。
- 渡辺氏:日本チェーンストア協会としても、会員企業に聞いてみないとわからない部分が多いのですが、個別の企業によって対応が違ってくるのではないかと思います。
- 辰巳委員:購入者の立場から見たとき、例えば環境配慮型製品の売上比率が10%であった場合、消費者が店頭で商品を容易に確認できるような状況になっているのでしょうか。環境に配慮した商品を積極的に販売している店舗として評価されたお店に行ってみたら、そうした商品があまり見当たらない、といったことが起きるのであれば、評価を行っている主体の信頼度が下がってしまうことになると思います。ですから、売上に対する構成比率といったことよりも、消費者が環境配慮型製品を買いに行ったときに、ちゃんと店頭に並べられて買うことができる状況になっているのか、ということを定量的に把握できないかというのが提案です。こうした状況になっているのはどのくらいの比率なのか、という点を知りたいと思います。
- 片山委員:感覚的に、環境配慮型製品の割合が10%という水準では、お客様は店頭であまり目にしないと思われます。7~8割の水準であれば、いつ行っても目にするという感じになると思います。
- 辰巳委員:そういう観点からも、売上高の比率といった数値にどれだけ意味があるのかなというふうに思います。
- 西尾座長:定量的な評価基準を設定しようという背景や意図は、どのようなところにあるのでしょうか。
- 麹谷氏:インセンティブを付与する際に、定量的な評価を行ったほうが、より明確な根拠づけができるのではないかと考えられます。定量的に評価でき、主張ができるような環境を整備したいという意図から、たたき台としては定量的な評価をベースに案を提示させていただいたということです。ただ、お店に行っても環境配慮型製品を目にしないという状況が生じるとなると、この事業が意図しているところと違ってくると考えられるので、比率では評価しきれない部分をいかに評価するか、という点についてもご議論をいただければと思います。
- 西尾座長:環境配慮型製品を積極的に販売していると評価された店舗に消費者が行った際に、たしかにそういうお店だと実感できる、あるいはそういう面で安心して買いに行ける、そのお店に行きたいと思える、ということが重要なのだと思います。そういう意味で、定量的な評価の内容について時間をかけて検討を行うとともに、前提条件に挙げられているような、消費者の目に見える、気づきを与えるといった事項について、評価項目に含めることも検討すべきではないかと思われます。
- 辰巳委員:そうした事項を評価項目に入れることで、結果として商品の露出度も高くなっていくと思います。
- 西尾座長:たとえ売上比率が10%であっても、大きなPOPによって表示や説明がなされていることにより、消費者の影響は大きく違ってくるのではないかと思います。
- 麹谷氏:売る側の立場から考えた場合、どんなに優れた環境配慮型製品であっても、どんなに主張をしても、それが売れなかったら商品棚から消えてくことになります。従って、その製品を理解し購入してくれる消費者をいかに増やしていくか、という点が非常に重要だと思います。ただ、それだけでは十分な評価ができないので、いかに両者をミックスしていくかがポイントになるのではないかと思います。
(休憩後再開) - 西尾座長:これまでの議論の中でいろいろな意見が出されたかと思いますが、論点を事務局のほうでかいつまんで紹介していただけますでしょうか。
- 深津氏:これまでの議論の中で、環境配慮型製品の販売を促進する小売事業者の評価について、考え方、前提条件、評価項目を中心にご意見をいただきました。
案では前提条件として位置づけておりました消費者への訴求方法など売り方の部分に関して、これらについても評価項目に入れるべきではないか、小売事業者としての努力の部分を評価すべきではないか、といったご意見がありました。また、通信販売の分野では、事業の特性から簡易包装を単純に評価できない面があるというご意見がありました。消費者への訴求の仕方という点では、カタログやウェブサイトにおいて環境に配慮した商品である旨の表示を行うことも、売り方の工夫として評価してはどうかというご意見がありました。
フランチャイズチェーン関しては、個別の店舗として評価すべきかチェーン全体で評価すべきか、という議論がありました。また、評価に関しては、ハードルの高さによって、評価された店舗が消費者の目につかない、あるいはそうした店舗が多くなりすぎるという点、さらに誰が評価を行うのかといった議論もありました。
定量的な評価における売上等のデータの開示に関しては、業界や個別企業によって対応が異なってくるだろうというお話がありました。それから、評価基準として商品群に占める割合が10%だと消費者の目に止まらないのではないか、あるいは、こうした比率ではない評価の方法があるのではないか、といった議論があったかと思います。
十分に整理されていない面があるかと思いますが、補足をしていただければと思います。 - 西尾座長:どうもありがとうございます。評価項目に関しては、小売事業者特有の取組を評価してあげようという意見があり、そのとおりだと思います。これまでも、類似の促進策はいろいろなところで行われてきたかと思います。結果的にどれだけ環境配慮型製品が普及したのかを定量的に評価する、という考え方は重要だと思いますが、それだけでは十分に汲み取れない部分がある、という意見が委員の皆さんから出されたと思います。そうした側面が継続性や発展性につながるところかとも思われ、案の中で前提条件として挙げられているような定性的な部分についても、積極的に評価しても良いのではないか、という意見も出されたところです。
もう一つの大きな問題は、定量的に評価する場合、事業者の皆様に売上などのデータを出していただけるかという点で、こうしたデータが提供されなければ評価を行うことができないわけです。インセンティブの内容によっても情報提供の対応に違いが出てくる面があるかと思いますが、定量的な評価においてはこうした難しさも存在しています。
次回の検討会までに、様々な小売事業者の方から、抱えている特有の問題、積極的に評価してほしい側面、取組促進の意欲が出るインセンティブなどについて、声を拾ってきていただければと思います。
これまでに議論された内容を踏まえ、さらに検討すべき事項、調査すべき事項などがありましたら、ご意見をいただきたいと思います。 - 小栗氏:エコマークでは小売店舗の認定が行われており、本事業とかなり重なる部分もあるかと思われますが、最終的な出口のところでインセンティブについてはどのような内容のものを想定されているのでしょうか。その点がある程度明確にならないと、評価方法についてもイメージがつきにくいのではないかと思います。
また、先ほど環境配慮型製品の割合について10%という水準が出ていましたが、コンビニやGMSなど業態によって商品の品揃えの考え方が違う面もあるので、同じ基準で評価するのは難しい部分もあるのかなとも思っており、議論がかみ合わない面もあるように感じています。 - 麹谷氏:インセンティブについては、まだ明確になっている状況にはありませんが、現在の国の財政状況を考えてみても、経済的なインセンティブを継続的に付与していくことは困難であると認識しています。このため、表彰制度を含め、取組について広く情報発信を行い、企業にとってもCSR的な観点からブランド価値を高められるような制度ができればというイメージを持っております。
また、店舗が直接実施する取組ではありませんが、韓国の事例のように、まわりの環境を整備することで消費者がエコな商品を選べるような社会の仕組みができれば、店舗との連携を通じて効果的な取組を進めることができるのではないかとも考えており、こうしたアプローチも含めどのような方向性が考えられるのか、今年度のまとめの中に織り込み、次年度以降の業務につなげていければと考えています。 - 花田委員:そうなると評価の設定はますます難しいものであるという気もしております。この事業では小売事業者を対象として、環境配慮型製品の販売を促進する事業者を評価するわけですが、最終的には大多数を占める中間層と呼ばれる消費者の行動をエコな方向に転換することを目的としています。動かそうとしているのは消費者で、評価しようとしているのは店舗です。たしかに、事業者の方の取組を促すことによって市場を動かしていく、という考え方はあるかと思います。そう考えたときに、売り方ということは評価項目から外せないのではないかと思います。
韓国の取組は非常に効果が期待できるものだと思いますが、このような効果がある方法を紹介することは、この検討会の範囲ではない気がいたします。ここで検討すべきことは、どのような評価をしたら店舗がより多くの環境配慮型製品を扱い、販売を促進してくれて、中間層と呼ばれる大多数の消費者がそうした商品を買ってくれるようになるのか、という視点から、一生懸命取組んでおられるお店を評価する仕組みを考えることなのではないかと思います。 - 西尾座長:別の視点から考えますと、「この程度のインセンティブじゃあ誰も取組もうとしないよ」というふうにならないような、「このようなインセンティブがいただけるのであれば頑張るぞ」と思ってもらえるような仕組みを作ることが重要であると思います。そして、トップランナー的な取組をされている事業者を積極的に評価し、何らかの形で社会に対してオープンにし、それを皆が認識し、その店舗の取組を他の店舗が真似るようになることが重要なのだと思います。そのための仕組みが表彰なのかもしれませんし、もっとほかに良い形のものがあるのであればそれを検討していくべきだと思います。事業者の方からも、「こういう形で評価してくれれば励みになる」といったことを出していただければと思います。
また、評価にあたって、総花的に取組んでおられる事業者の方を評価するのか、それとも何か一点光るものがある事業者も積極的に評価するのか、といった議論もあるかと思います。評価項目が決まらなければ配点を決めることもできないわけですが、方向性について議論をしていただければと思いますので、資料の中に提示されている評価項目の配点の例について、事務局のほうからご説明いただけますでしょうか。 - 深津氏:先ほどご説明した評価項目に沿って、100点を満点として、取組内容の重要度という観点から各項目の配点の例を考えてみました。環境配慮型製品の定義・内容に関しては、第三者による環境ラベルと自社による環境基準の両方に配点がされるようにしてあります。第1回検討会の議論の中で、旬の商品や地産地消の商品も環境配慮型製品に含めてはどうかというご意見があったかと思いますが、こうした取組は自社による環境基準の中に含められるのかなと考えています。
評価項目が決まらなければ配点も決まらないわけですが、どの項目に重点を置くのかということについてご意見をいただければと思います。また評価の仕組みについて、事業者による自己採点を行うのか、第三者による評価を行うのか、という点についても検討を行う必要があると考えています。
参考資料3は、評価手法案に基づき今回の国内の調査事例について、事務局のほうで参考までに評価点を計算させていただいたものです。販売実績の項目の配点が一番多くなっているため、調査の中で販売実績のデータをご提供いただけなかった事業者さんについては、低めの評価点になっております。
評価に基づくインセンティブの付与につきましては、一定の点数を上回った事業者の方に付与するという考え方と、点数の上位者から一定数の事業者に付与するという考え方があるかと思います。また、インセンティブの具体的なイメージが明確にならないと、事業者の方の本気度も違ってくるかと思いますので、こうした点について次回につながるようなご意見やアイディアをいただければと思います。 - 西尾座長:先ほどから出ておりますように、定性的な部分を評価項目に入れる場合にどのように評価をしていけばいいか、ということも検討する必要があるかと思います。
- 片山委員:前提条件の項目として挙げられている「消費者の方に気づいてもらうための訴求方法」や「消費者の目に触れる機会を積極的につくる」ということが、一番ハードルが高いのではないかと思われます。コンビニエンスストアの場合、商品のところに詳しい表示を行うようなスペースがないというのが実情で、どのような取組をもってこれらの前提条件を満たしていると認められるのか、ということが難しいと考えられます。ここが示されないと先に進めないのではないかなと感じています。
- 辰巳委員:いくつか考えられる取組を挙げて、それを実施しているかどうかという形で評価ができないのかなとも思います。例えば、ウェブサイトで説明をしているとか、レジのところで説明をしているとか、商品の横で説明をしているとか、新聞広告や折り込みチラシによる情報提供とか、消費者に対する訴求方法と考えられるものを挙げて、それをチェックしてもらうといった方法もあるのではないかと思います。どのような方法でもいいので、実施していることを事業者の方から出していただけたらと思うのですが、消費者の立場から、こういう方法は効果があるという意見を出すことも可能かと思います。
- 片山委員:事業者の立場からすると、いろいろと取組んではいるものの消費者の皆さんには意外と知っていただいてない、という状況もあり、どのようにしたら伝わるのか悩んでいる部分もります。消費者の方から「こういうふうにしてもらわないとわかりませんよ」といったことを教えていただけると、改善につながるかと思います。
- 辰巳委員:双方向のやり取りが大切なのだと思います。
- 阿部氏:結局、環境に配慮した商品をお客様にいかに多く選んでいただけるようにするか、というのがこの検討会の目的だと思います。そういう意味では、通信販売のような無店舗販売の業界は、なんらかの媒体を通してメッセージを発信するという点で強みはあるので、スペースを割いてお客様にアピールすることは可能かと思います。一方で、先ほどお話したように、商品をお届けする際に一定程度の包装が必要になるという弱い面もあり、同じ小売事業の中でも得手不得手の部分があるので、得点による評価というのは難しい面があるのではないかと思います。
- 辰巳委員:そういう意味では、多くの評価項目を挙げて細かく配点し、ポイントを積み上げていくといった方法もあるのかなと思います。
- 阿部氏:何らかの形で評価を行う必要があるかと思いますが、やはり出口のインセンティブが見てこないと、評価の方法も議論しにくいのではないかと思います。
- 辰巳委員:インセンティブに関しても、どういうものがあれば事業者として取組む意欲が湧いてくるのか、ということを出していただけたらと思うのですが。
- 西尾座長:先ほど話が出ましたように、個別の店舗を評価するのか、チェーン全体を評価するのかによって、かなり変わってくるのだと思います。今回検討している仕組みにおいては、環境配慮型製品の普及にどれだけつながっているのか、という点が重要なのだと思われますが、環境配慮型製品の売上に関するボリューム的な部分を評価するのか、売り方や普及啓発など小売事業者の個別の工夫や先駆的な取組に焦点を当てるのか、あるいは両方を評価するのかによって方向性が違ってくると思われます。こうした観点から議論ができればと思います。
- 辰巳委員:評価項目の配点の案を見ますと、販売実績の推移の部分にかなり大きなウェイトが置かれていますが、やはりこうした側面に重点を置きたいというお考えなのでしょうか。
- 深津氏:環境配慮型製品をどれだけ普及できたかという点を評価したいということで、このような配点の案とさせていただきました。
- 岡田委員:当社の「トロージャンの森」の取組を事例として取り上げていただきましたが、このほかクールビズやウォームビスに関わる取組も実施しており、比較的わかりやすい取組ということもあり売上に結びついていると認識しています。「トロージャンの森」の取組について、今回の案に基づく配点では高い評価をいただいたのですが、カーボンオフセットという付加価値の部分や定量的な実績把握といった面を主に評価いただいており、商品そのものの評価や、もう少し定性的な側面の評価が加わると、違った結果が出てくるのではないかと思います。
百貨店として環境配慮型商品の販売を伸ばそうと努力をしているのですが、一番課題となっているのは、環境配慮型商品という切り口だけでは売上増加につながらないという点です。結果として環境配慮型商品が売れているということはあるのですが、環境の側面を前面に出したから売上に結びついた、という形には必ずしもなっていないという状況があります。環境配慮の視点から売上を伸ばしていくために、何らかのインセンティブがあれば、企業としての取組も変わってくる部分があるのではないかと思います。例えば、エコポイントのような制度や事業者に対する経済的な支援などがあると、取組が活性化するのではないかと思われます。 - 辰巳委員:消費者に対して訴求をしても売上増加につながらない状況があるのだとすると、先ほどから出ている訴求の取組を評価するということと話が合わない面が出てくるのではないでしょうか。
- 岡田委員:例えば、6月の環境月間や10月の3R推進月間などには、環境配慮型製品を前面に出して、お客様にわかるようにきちんと説明も行って販売していますが、そのような対応がすべてではないといえます。
- 西尾座長:配点の比重をどのようにするかという問題はありますが、定量的な側面と定性的な側面の両方について評価を行えば、売り方の部分も、その結果としての売上の部分も評価できるのではないかと思います。
- 花田委員:岡田委員から、環境を前面に出してもなかなか売上増加には結びつかない、というお話がありました。たしかにそういう面があると思いますが、この事業は小売店の取組を通じて消費行動を変えていくことが目的なわけですから、単に小売事業者を評価して表彰などを行うだけではなく、もう少し工夫が必要であるということなのではないかと思います。
結果として環境配慮に結びつくことであっても、別の形でアピールするほうが届く、ということもあるかと思います。例えば、昨年来「きずな」とか「つながる」といったような視点から、自分の消費によって自分が楽しむだけではなく、何かプラス・アルファの部分がある消費が広がる傾向が示されているわけで、先ほどの「トロージャンの森」の取組に関しても、そういう工夫があったから結果が出ているのかもしれないと思うのです。ですから、環境を前面に出しても売上増加には結びつきにくいのであれば、このような直接の環境配慮工夫なども評価できればいいのかもしれませんし、あるいは、そうした工夫は実績のなかに反映されていると考えるのであれば、それでも良いのかもしれません。
環境に配慮した製品を店頭に置けば売上が伸びるわけではないとすると、事業者にご負担を強いてしまうことになります。だからこそエコポイントなどのような仕組みが必要になるという話になると、今度は財源の問題が出てきます。どのような評価をしたらいいのかは非常に難しいと、あらためて感じています。 - 辰巳委員:環境配慮型製品の普及に努力していても売上につながらなければ評価されない、という点が非常に難しいポイントだと思っています。例えば、事業者が環境配慮型製品に関する啓発などを行って、それを見た消費者が気づくということは、社会に対して貢献していることになりますし、将来その人の消費行動を変えることにつながると思うのですが、この評価項目の配点案では点数にならないわけです。消費者が店頭の表示を見てその商品を購入するのであれば、それを評価のポイントとしてとらえることができますが、スーパーさんの広告を見て消費者が気づき、別の買い物の際に行動に反映されるというケースもあると思うのです。こうした効果は、定量的には評価できないのではないかと思います。だからこそ、訴求の取組自体を評価することは意味があるといえるのかもしれません。
- 花田委員:消費者が環境配慮型製品を買おうと思ったときに、店頭に置いてなければ買うことができませんから、置くだけでも評価をして良いのではないかとも思います。
- 西尾座長:そういう観点からも、仕入れ構成比率という評価項目が意味があるとも考えられます。中間層と呼ばれる消費者がたまたま購入した商品が環境に配慮したものであって、使ってみて良さを感じるということも重要なことだといえます。また、将来の市場を拡大する、あるいは商品の良さを正しく理解してもらうという意味からも、コミュニケーションのような定性的な評価項目も入れたほうが良いのではないか、というのが今日の議論における合意なのではないかと思っております。
ここから先は、個別の事情を抱えている事業者さんから生の声を拾っていただいたほうが良いのではないかと思っております。例えば、どういう側面を評価したほうが良いのか、どのようなインセンティブが良いのか、といったことを把握することが重要なのではないかと思います。 - 花田委員:こういうふうに評価をしたら、事業者がさらに環境配慮商品を扱うようになる評価、あるいは消費者のエコな買い物を促進するようになる評価のやり方はどのようなものか、ということを事業者の方にお尋ねいただければと思います。事業者さんとして、ここを見てほしい、こういうところを評価してくれればもっと積極的に取組める、といった点を聞いてきていただきたいと思います。
- 片山委員:もともとは、6割を占めるとされる中間層の消費者の方にいかに環境配慮商品を買ってもらうか、ということがテーマであったと思うのですが、売れなくてもそういう商品を揃えている店舗を評価しましょう、というようにも聞こえたりするので、そういう考え方はどうなのかなと思っています。例えば、「金麦」というアルコール飲料に期間限定でカーボン・オフセットを付けて販売していますが、商品自体が支持されているため売れる、というケースがあります。環境配慮を意識しないで購入した方がカーボン・オフセットの意味に気づくこともあるのですが、それが中間層の方にどれだけ関心をもっていただいたのか、というのはわからないわけです。
目指すところがどこなのよくわからなくなってきているように感じているのですが、漠然と感覚的に言いますと、例えば環境に配慮している小売事業者というのはこういう取組を行っているところです、というスコアカードのようなものがあって、それぞれの企業が各項目について自己採点し、自社のレベルを把握するといった仕組みが、企業サイドの評価としてあるのではと思います。こうした仕組みと6割の消費者の方にいかに伝えていくのかということが、どのように結びつくのかがよくわからないというのが実感です。 - 花田委員:今の「金麦」のカーボン・オフセットの取組においては、環境のことを何も考えないで商品を購入した方が、カーボン・オフセットのことを知るきっかけにはなると思います。そうすると、時間が経過した後に6割の消費者の行動が変化する第一歩にはなっていると思います。ですから、やらないよりやった方が絶対に6割の消費者に効いてくることは確かだと思います。
それから、今お話のあったチェックリストですが、誰かが評価するのではなくて、それぞれの事業者に自己評価を行っていただくというのは、非常に良いアイディアではないかと思います。 - 片山委員:予算的な面から経済的なインセンティブは難しいのだと思うのですが、自社の環境貢献の度合いについて自己採点的にスコアが示され、そのスコアがけっこうきちんとしたものであるのであれば、各企業としては重視するのではないかと思います。
- 花田委員:評価結果を環境報告書などにも記載するかもしれませんね。
- 片山委員:ただ、こうした仕組みが消費者の方の行動の変化につながるのか、消費者の方がスコアを意識するかどうかは、よくわからないところです。
- 花田委員:消費者の方の行動につながるような取り組みを数多く実施してもらえるように、リストを作れば良いのではないかと思います。
- 西尾座長:おそらく、そうした情報はグリーンコンシューマーが取り上げるでしょうし、環境教育の中でこうした内容に触れることによって、子どもたちがそういう目で小売店舗を見るようになると、大きな影響が出てくるのではないかと思われます。この検討会の目的とは少し違ってくるかもしれませんが、いろんな可能性について検討しても良いのではないかと思います。
今日はいろいろなご意見を出していただいたと思いますが、重要な議論として、エコプロダクツという側面についてはメーカー側に依存する部分が多いわけですが、小売事業者としての取組の評価を含め整理をしていただければと思います。 - 麹谷氏:いろいろな観点からご意見をいただいたことに感謝したいと思います。先ほどご意見が出たと思いますが、小売事業者さんの業態の違いによって評価を得やすい部分とそうでない部分があるかと思います。こうした観点から、業態ごとに区分した形で評価を行うのか、区分を設けずに全体として評価を行うのか、という点についてはどのようにお考えでしょうか。また、事業者さんの規模の違いに関してどのように扱うべきなのか、という点についても伺わせていただければと思います。
- 岡田委員:流通小売業界内の異なる業態からの委員が一緒に議論を行う検討会というのは、非常に貴重な場であると感じており、評価については業態により区分しないほうが良いのではないかと思います。
- 片山委員:消費者の方が商品を購入しようするときに参考になるという観点から、例えば百貨店の中で比較するといった方法よりは、全体としてとらえたほうが良いのではないかと思います。
- 辰巳委員:消費者が何かを買おうと思ったときに、おそらく、どこで買うかを次に検討するわけですから、分けないほうが良いのではないかという気がします。
- 花田委員:業態によって大きな有利・不利が発生するのであれば、気の毒な面もあるかなとも思われます。
- 西尾座長:そうした点も含めて、ヒアリングを通じて皆さんにご意見を伺っていただければと思います。
(4) 今後のスケジュール
第3回以降の検討会の開催日程、議題、ならびに検討会に向けての作業内容等について、事務局より説明が行われた。検討会の具体的な開催日程については、あらためて調整を行った上で各委員に連絡することとされた。
[今後の検討会の開催日程等]
- 西尾座長:それでは、今後のスケジュールについてご説明いただけますでしょうか。
- 深津氏:次回の検討会は年明けの1月中旬もしくは下旬の開催を予定しております。それまでに皆様にあらためてご意見を伺いに出向きまして、ヒアリングをさせていただき、評価手法の案とインセンティブの案についてお諮りをしてまとめたいと思っております。2月に予定しております第4回検討会では、次年度以降に向けた展開の方向性についてご議論をいただければと思っております。第3回及び第4回の検討会の開催日につきましては、環境省様と調整の上、メールにて調整をさせていただければと思います。
- 西尾座長:本日はご多用のところお集まりいただき、また長時間にわたり熱心にご議論をいただきありがとうございました。紆余曲折という感じもしておりますが、様々なご意見が出ることは良いことかと思いますので、今後ともご協力をいただければと思います。以上で本日の検討会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
以上