環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成26年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>第3章 グリーン経済の取組の重要性~金融と技術の活用~>第1節 持続可能な社会の実現に向けたグリーン経済の広がり

第3章 グリーン経済の取組の重要性~金融と技術の活用~

第1章では、地球環境の現状をさまざまな側面から見てきました。地球温暖化防止、生物多様性の保全、資源の循環利用の観点からさまざまな対策が講じられていますが、地球環境の悪化はいまだ歯止めがかかっていない状況にあり、地球環境への負荷低減に向けて、引き続きこれらの分野への施策を講じていく必要があります。

 我が国においても、環境負荷の低減が喫緊の課題となっているとともに、最近の景気回復に向けた動きを持続的な経済成長につなげていくことも課題となっています。これらの課題を解決し、持続可能な環境・経済・社会の実現に向けて、「グリーン経済」を構築しようとする動きが進んでいます。第3章では、地球環境問題への対応が、同時に経済成長にも資するという両面の効果をもつ方策を紹介し、グリーン経済の重要性について述べます。

第1節 持続可能な社会の実現に向けたグリーン経済の広がり

1 グリーン経済・グリーン成長に関する国際的な議論

 環境対策と経済活動の関係については、さまざまな文脈で取り上げられますが、国際的な議論においては、国連環境計画(UNEP)の提唱する「グリーン経済」と、経済協力開発機構(OECD)の提唱する「グリーン成長」がよく知られています。

UNEPのグリーン経済とOECDのグリーン成長

 UNEPでは、「環境問題に伴うリスクと生態系の破壊等を軽減しつつ、人間の福利や不平等を改善する経済のあり方」をグリーン経済として定義しています。グリーン経済の達成のための政策として、UNEPでは、効果的なグリーン経済への移行を促進する分野への政府の投融資の促進、グリーン投資や技術革新を促進させる税を活用した研究開発や技術革新への投資などを挙げています。

 一方、OECDでは、資源制約の克服と環境負荷の軽減を図りながら経済成長も実現するグリーン成長の重要性を説いています。OECDではグリーン成長を、「私達の暮らしを支えている自然環境の恵みを受け続けながら、経済成長を実現する考え方」と定義し、その実現の重要な要素として、環境問題を軽減するための投資の促進や技術革新、新しい市場の創造などを挙げています。

グリーン成長における重要な要素

 「グリーン経済」・「グリーン成長」のいずれも、環境・経済・社会のいずれの側面においても持続可能性を追求しようとしている概念といえます。特に、グリーン成長については、従来、環境保全を経済成長の阻害要因として捉えていたものを、環境分野への投資が経済成長を推進する要因として捉え直すという、発想の転換を図るものとなっています。

持続可能な社会の実現に関する国際的な動き

 社会経済が成熟期に入っている先進国では、今後の成長が大きな課題であり、環境分野における経済成長に関心が集まる一方で、途上国では貧困撲滅や経済発展が主要な課題であり、これに伴って生じる環境問題にどのように対応するかが関心事となっています。

2 環境産業の現状

(1)環境産業の規模と見通し

 我が国では、OECDの環境産業の分類(The Environmental Goods & Services Industry)を参考に、環境産業の市場と雇用規模について、毎年推計を行っています。これによると、平成24年における環境産業の市場規模は約86兆円、雇用規模は約243万人と推計されており、2008年(平成20年)の世界金融危機で一時的に落ち込みましたが、ともに拡大基調にあります。また、環境産業の市場規模と雇用規模の伸び率を全産業平均と比較すると、いずれも高い伸び率を示しています。国内生産額に占める環境産業の市場規模の割合は、過去10年で一貫して増加しており、環境産業は成長している分野といえます。

環境産業の市場・雇用規模の推移

 環境ビジネス関連企業の景況感などの動向を把握する調査では、他産業と比較して足下も将来も景況感が良いことが示されており、今後も成長が期待されます。環境ビジネスを実施している企業から見た自社の環境ビジネスの現在(平成25年12月)の業況DI(Diffusion Index。良いと答えた企業の割合から悪いと回答した企業の割合を引いた値、%ポイント)は、17となっており平成25年6月の15と比較しても引き続き業況は好調を維持していると言えます。また、環境ビジネスを実施している企業に関しては、自社の同ビジネスの10年後の業況DIは25となっており、現在の業況DI(17)と比較すると、8%ポイント増加しています。これは、環境ビジネスを実施していない企業も含めたビジネス全体の10年後の業況DIが10となっており、現在の業況DI(9)から1%ポイントしか増加していないことと比較して、相対的に高い伸びを予想しているという結果になっています。

環境産業市場規模と国内生産額の比較

環境産業の業況DI

 国内だけでなく、世界的にも環境産業への投資の拡大が見込まれています。例えば、国際エネルギー機関(IEA)によると、2012年(平成24年)から2035年(平成37年)の、風力発電への世界の累積投資額は約170兆円、太陽光発電では101兆円に上ると予測されています。

(2)世界規模での環境産業の雇用規模推計

 UNEP、国際労働機関(ILO)、国際使用者連盟(IOE)、国際労働組合総連合(ITUC)の4機関が2008年(平成20年)に共同で発行した報告書によると、2030年(平成42年)までに世界中で、太陽光発電分野で630万人、風力発電分野で210万人、バイオマス発電で1,200万人の雇用が創出されると予測されています。

再生可能エネルギー分野における雇用規模に関する推計

 また、環境産業の市場規模の拡大も期待されています。太陽光や風力発電分野においては、2030年(平成42年)までに大幅な拡大が見込まれており、技術革新の結果、その拡大がさらに加速すると期待されています。