第3節 経済社会システムを変える環境技術・環境産業

1 わが国のすぐれた環境技術

 わが国のすぐれた技術から生み出される素材や製品は、軽量化による省エネ効果をもたらし、環境負荷の軽減に大きく貢献しています。こうした技術の一つに、炭素繊維が挙げられます。世界の高性能炭素繊維市場において日本は約80%と圧倒的なシェアを誇っています。日本企業は、長期間にわたり研究開発投資を継続し、国からの研究開発プロジェクトの支援なども受けて研究を行った結果、欧米企業と比較して技術上の優位性を保っています。

 炭素繊維は、軽くて丈夫で錆びないという特性から、飛行機や自動車の構造材に適し、かつ省エネ性能を向上させます。例えば、現在生産が進んでいる中型航空機では、胴体、主翼、垂直・水平尾翼など主要な機体構造の50%に炭素繊維であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)が用いられており、従来機に比べ約20%軽量化されています。この機体について「原料・素材製造」、「組立」、「走行・運航」、「廃棄」という10年間のライフサイクルの二酸化炭素排出量を見ると、従来機に比べて1機当たり年間2,700トンの二酸化炭素削減効果が見込まれます。


炭素繊維利用によるCO2削減効果(LCA)[炭素繊維協会モデル]

 また、炭素繊維のほかにも、日本が世界的にシェアを大きく占める技術で、環境負荷低減に対して高い効果が期待される技術があります。白色LEDは、1996年にわが国で開発された、小型軽量、省電力で寿命の長い光源で、白熱電球などを代替する照明用点光源として急速に広がっています。すでに、小型液晶バックライト、信号機、テレビ用大型ディスプレーなどへの実用化が進んでいますが、特に近年は、低コスト化が進み、白熱電球に代わるダウンライトなどとして企業や家庭に普及してきています。

 LED電球は、従来の白熱電球と比べて、消費電力が約8分の1に減少します。LED電球の利用コストを白熱電球のそれと比較した場合、約1.3年間で白熱電球の代わりにLED電球を利用するメリットがもたらされると計算されます。


60Wタイプ白熱電球をLED電球に置換した場合の比較

2 環境産業へ向かう金融の流れ

 企業の収益力や成長性等の判断基準に加え、環境への取組なども考慮して行われる投資のことを社会的責任投資(SRI)といいます。このSRIに基づく資産運用残高は世界的に見て増加の傾向にあります。

 例えば、アメリカにおけるSRI型投資運用資産残高は、近年増加してきています。2001年〜2003年にかけてはマイナス成長したものの、2003年以降は再びプラス成長を続け、2007年には1995年比で4倍強となる2兆7千億ドルに達しています。


米国におけるSRI型投資運用資産残高

 また、欧州においても、同様の傾向が見られます。欧州におけるSRI市場の規模の推移を見ると、2002年以降増加を続け、2007年には2002年比で約8倍となる約2兆7千億ユーロにまで拡大しています。

 SRI投資を行う日本国内のファンドの本数は増加傾向で推移しており、2009年9月では、83本のファンドがSRI投資を行っています。2009年のSRI投資の純資産残高は、世界的な景気の落ち込みに伴い、前年に比べ大きく減少していますが、基本的には2003年以降、増加傾向にあります。一方で、欧米と比べると、SRI投資の規模には大きな差があります。2007年時点で、アメリカや欧州の規模は数百兆円であるのに対し日本は数千億円程度となっています。これは、アメリカや欧州では資産運用規模の大きな機関投資家がSRI投資の主体である一方、日本では、比較的資産運用規模が小さい個人投資家向けの投資信託が中心であることが影響しているといわれています。特に欧州では、コアSRI投資の94%が機関投資家により占められています。


日本における公募SRI投信の純資産残高とファンド本数推移

 SRIの他にも環境と金融に関する動きとして、金融機関が自主的に定めた「赤道原則」と呼ばれるルールに基づく、国際的な融資における取組が挙げられます。赤道原則とは、総コストが1,000万米ドル以上であるなど金融機関が一定の海外プロジェクトに融資を行う際、そのプロジェクトが地域社会や自然環境に与える影響に配慮しているかを確認するための枠組みであり、金融機関のための原則です。赤道原則は2003年6月に欧米金融機関10行によって採択されました。

 2003年の採択以後、赤道原則を採用する金融機関は着実に増加し、2009年現在、日本の金融機関3行を含む67の金融機関が同原則を採択しています。


赤道原則採用銀行数の推移

 わが国でも環境への設備投資を促進するため、金融機関に対する支援を行っています。例えば、環境省では、平成21年度に「京都議定書目標達成特別支援無利子融資制度」を設けました。この制度は、3年間で二酸化炭素排出量6%削減等の目標を誓約した事業者が行う温暖化対策設備投資に対して、環境格付による優遇融資を行う金融機関を通じて3%(ただし無利子を限度)を上限に3年間の利子補給を受けられる制度です。また、平成21年度の第2次補正予算では、「地球温暖化対策加速化支援無利子融資制度」と呼ばれる同様の制度が設けられました。これらの制度を設けることで、金利負担を理由に見送られてきたような環境への設備投資が積極的に行われることが期待されます。


京都議定書目標達成特別支援無利子融資制度(利子補給)制度スキーム図



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