第2部 各分野の施策等に関する報告

 環境・循環型社会・生物多様性白書では、各分野の施策等に関する報告について、次のような章立てで報告しています。

 第1章 低炭素社会の構築

 第2章 地球環境、大気環境、水環境、土壌環境、地盤環境の保全

 第3章 循環型社会の形成

 第4章 化学物質の環境リスクの評価・管理

 第5章 生物多様性の保全及び持続可能な利用

 第6章 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際協力に係る施策

1 低炭素社会の構築

(1)問題の概要

 近年の人間活動の拡大に伴って二酸化炭素、メタン等の温室効果ガスが人為的に大量に大気中に排出されることで、地球が過度に温暖化するおそれが生じています。特に二酸化炭素は、化石燃料の燃焼などによって膨大な量が人為的に排出されています。我が国が排出する温室効果ガスのうち、二酸化炭素の排出が全体の約95%を占めています。


(2)地球温暖化の現況と今後の見通し

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年(平成19年)に取りまとめた第4次評価報告書によると、世界平均地上気温は1906〜2005年の間に0.74(0.56〜0.92)℃上昇し、20世紀を通じて平均海面水位は17(12〜22)cm上昇しました。また、最近50年間の気温上昇の速度は、過去100年間のほぼ2倍に増大しており、海面上昇の速度も近年ではより大きくなっています。同報告では、気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは人為起源の温室効果ガス濃度の観測された増加によってもたらされた可能性が非常に高いとしています。


地球温暖化の影響の現状

 また、同報告では、世界全体の経済成長や人口、技術開発、経済・エネルギー構造等の動向について複数のシナリオに基づく将来予測を行っており、1980年から1999年までに比べ、21世紀末(2090年〜2099年)の平均気温上昇は、環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会では、約1.8(1.1〜2.9)℃とする一方、高度経済成長が続く中で化石エネルギー源を重視した社会では約4.0(2.4〜6.4)℃と予測しています。

 同報告では、新しい知見として、温暖化により、大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが減少するため、温暖化が一層進行し(気候−炭素循環のフィードバック)、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に伴い既に海面が平均でpH0.1酸性化し、21世紀中に更にpHで0.14〜0.35の酸性化が進行すると予測されています。

 また、日本では20世紀中に平均気温が約1℃上昇しました。日本においても、気候の変動が生態系、農業、社会基盤、人の健康などに多大な影響を与えることが予想されます。


(3)日本の温室効果ガスの排出状況

 日本の2007年度(平成19年度)の温室効果ガス総排出量は、13億7,400万トン*(注:以下「*」は二酸化炭素換算)でした。京都議定書の規定による基準年(1990年度。ただし、HFCs、PFCs及びSF6については1995年。)の総排出量(12億6,100万トン*)と比べ、9.0%上回っています。また、前年度と比べると2.4%の増加となっています。


日本の温室効果ガス排出量

 温室効果ガスごとにみると、2007年度の二酸化炭素排出量は13億400万トン(基準年比14.0%増加)でした。部門別にみると、産業部門からの排出量は4億7,100万トン(同2.3%減少)でした。また、運輸部門からの排出量は2億4,900万トン(同14.6%増加)でした。業務その他部門からの排出量は2億3,600万トン(同43.8%増加)でした。家庭部門からの排出量は1億8,000万トン(同41.2%増加)でした。


二酸化炭素排出量の部門別内訳

 2007年度における二酸化炭素以外の温室効果ガス排出量については、メタン排出量は2,260万トン*(同32.3%減少)、一酸化二窒素排出量は2,380万トン*(同27.1%減少)となりました。また、HFCs排出量は1,320万トン*(同34.6%減少)、PFCs排出量は650万トン*(同53.8%減少)、SF6排出量は440万トン*(同74.1%減少)となりました。なお、HFCs排出量については、2008年度(平成20年度)に関係業界の協力を得て行った調査により、冷媒からの排出量について、実態に近い使用時排出係数が明らかになったことを受け、この係数を用いる方法に算定方法を変更したことにより、前年度までの排出量も上方修正されています。


部門別エネルギー起源二酸化炭素排出量の推移と2010年目標


各種温室効果ガス(エネルギー起源二酸化炭素以外)の排出量

2 地球環境、大気環境、水環境、土壌環境、地盤環境の保全

(1)地球環境の現状

 ア オゾン層の破壊

 CFC、HCFC、ハロン、臭化メチル等の物質によりオゾン層が破壊されており、その結果、地上に到達する有害な紫外線(UV-B)が増加し、皮膚ガンや白内障等の健康被害の発生や、植物やプランクトンの生育の阻害等を引き起こすことが懸念されています。これらのオゾン層破壊物質の多くは強力な温室効果ガスでもあり、地球温暖化も促進しています。

 オゾン層破壊物質は1989年(平成元年)以降、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(以下「モントリオール議定書」という。)に基づき規制が行われています。その結果、代表的なオゾン層破壊物質であるCFC-12の大気(対流圏)中濃度は、北半球中緯度において1990年代後半以降ほぼ横ばいになっており、成層圏におけるオゾン層破壊物質の総濃度は減少傾向にあります。

 しかしながら、大気中のオゾンは、1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少した後、現在も減少した状態が続いています。

 また、2007年(平成19年)の南極域上空のオゾンホールは、この10年間(1998年以降)では2002年、2004年に次いで小規模でしたが、現時点ではオゾンホールに縮小の兆しがあるとは判断できず、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にあります。モントリオール議定書科学アセスメントパネルの2006年(平成18年)の報告によると、オゾンホールは今後数十年間発生し続けると考えられ、南極地域のオゾンが1980年(昭和55年)以前の値に戻るのは今世紀中頃と予測されています。


南極上空のオゾンホールの面積の推移

 なお、国際的にCFCからの代替が進むHCFC及びオゾン層を破壊しないものの温室効果の高いガスであるHFCの大気中濃度は増加の傾向にあります。

 イ 酸性雨・黄砂

 (ア) 酸性雨

 酸性雨により、湖沼や河川の酸性化による魚類等への影響、土壌の酸性化による森林への影響、建造物や文化財への影響等が懸念されています。酸性雨は、原因物質の発生源から数千kmも離れた地域にも影響を及ぼす性質があり、国境を越えた広域的な現象です。

 日本では、昭和58年度から酸性雨のモニタリングやその影響に関する調査研究を実施しており、平成21年に取りまとめられた最近5年間(平成15年度〜平成19年度 )のモニタリング結果の概要は、次のとおりです。

[1] 依然として、全国的に酸性雨が観測されている(全平均値pH4.68)。

[2] 日本海側や西日本では大陸に由来した大気汚染物質の流入が示唆され、全国的にオゾンの越境汚染や黄砂飛来の影響が示唆された。

[3] 生態系への影響については、酸性雨による衰退木等の生態被害や湖沼の酸性化は確認されなかった。

[4] 周辺土壌等の酸性化が認められる岐阜県伊自良湖(いじらこ)集水域では、過去に大気由来で土壌に蓄積したと考えられる硫黄が渓流に流出するとともに、現在も多量の窒素沈着により土壌や渓流の酸性化が継続していると考えられた。ただし、現時点で、直ちに人の健康及び生態系に何らかの影響を及ぼす状況にはない。

 このように、日本における酸性雨による被害は現時点では明らかになっていませんが、一般に酸性雨による影響は長い期間を経て現れると考えられているため、現在のような酸性雨が今後も降り続けば、将来、酸性雨による影響が顕在化するおそれがあります。

 (イ) 黄砂

 近年、中国、モンゴルからの黄砂の飛来が大規模化しており、中国、韓国、日本等でその対策が共通の関心事となっています。従来、黄砂は自然現象と考えられていましたが、近年の現象には、過放牧や耕地の拡大等の人為的な要因も影響しているとの指摘もあり、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。

 ウ 海洋環境

 日本周辺の海洋環境の経年的変化を捉え、総合的な評価を行うため、水質、底質等の海洋環境モニタリング調査を実施しています。平成19年度は、平成16年度に調査を行った日本海西部海域の補完調査を実施した結果、堆積物中から有機スズや臭素系難燃剤(有機スズ汚染源特定の指標物質)が一般の沖合海域の調査結果と比較して高い濃度で検出されましたが、簡易リスク評価の結果、人の健康に影響を及ぼすおそれはないと判断しています。今後も引き続き定期的な監視を行い、汚染の状況に大きな変化がないか把握していくこととします。

 なお、海洋環境モニタリング調査結果のデータについては、(独)国立環境研究所が整備した「環境GIS」で公表しています。(http://www-gis4.nies.go.jp/kaiyo/

 近年、外国由来のものを含む漂流・漂着ゴミによる、海岸機能の低下や生態系を含めた環境・景観の悪化、船舶の安全航行の確保や漁業への被害などの深刻化が指摘されています。

 エ 森林

 世界の森林は、陸地の約30%を占め、面積は約40億haに及びますが、2000年(平成12年)から2005年(平成17年)にかけて、増加分を差し引いて年平均730万ha減少しました。(日本の国土面積の約5分の1)。特に、熱帯林が分布するアフリカ地域、南アメリカ地域及びアジア地域のうち東南アジアで森林の減少が続いています。このような森林減少・劣化は、地球温暖化や生物多様性の損失に深刻な影響を与えています。

 森林減少の原因として、プランテーション開発等農地への転用、非伝統的な焼畑農業の増加、燃料用木材の過剰採取、森林火災等が挙げられます。また、違法伐採など不適切な森林伐採が森林を劣化させ、森林減少の原因を誘発していることも大きな問題となっています。


世界の森林面積の年当たりの変化率(2000〜2005年)

 オ 砂漠化

 砂漠化とは、国連砂漠化対処条約において、「乾燥地域における土地の劣化」と定義されています。乾燥地域は地表面積の約41%を占めており、その10〜20%は既に劣化(砂漠化)しており、乾燥地域に住む1〜6%の人々(約2千万〜1億2千万人超)が砂漠化された地域に住んでいると推定されています。砂漠化の原因として、干ばつ・乾燥化等の気候的要因のほか、過放牧、過度の耕作、過度の薪炭材採取による森林減少、不適切な灌漑による農地への塩分集積等が挙げられます。その背景には、開発途上国における人口増加、貧困、市場経済の進展等の社会的・経済的要因が関係しています。

 カ 南極地域の環境

 南極地域は、地球上で最も人類の活動による破壊や汚染の影響を受けていない地域であり、地球環境研究の場等としてかけがえのない価値を有しています。近年は基地活動や観光利用の増加による環境影響の増大も懸念されています。


(2)大気環境の現状

 ア 光化学オキシダント

 都道府県等では、大気汚染防止法に基づき、光化学オキシダントの濃度が高くなり、被害が生ずる恐れがある場合に、光化学オキシダント注意報等を発令しています。

 また、「大気汚染物質広域監視システム(愛称:そらまめ君)」により、都道府県等が測定している光化学オキシダント注意報等発令情報をリアルタイムで収集し、これらのデータを地図情報などとして、インターネット等で一般に公開しています(http://soramame.taiki.go.jp/)。


光化学オキシダント濃度レベル毎の測定局数の推移(一般局と自排局の合計)(平成15年度〜19年度)

 イ 窒素酸化物

 平成19年度の二酸化窒素に係る有効測定局(年間測定時間が6,000時間以上の測定局をいう。以下同じ。)の年平均値は、一般環境大気測定局(一般局)が0.013ppm、自動車排出ガス測定局(自排局)が0.025ppmであり、一般局ではほぼ横ばいであり、自排局ではゆるやかな改善傾向がみられます。


二酸化窒素濃度の年平均の推移(昭和45年度〜平成19年度)

 ウ 浮遊粒子状物質

 平成19年度の浮遊粒子状物質に係る有効測定局の年平均値は、一般局0.024mg/m3、自排局0.027mg/m3で近年ゆるやかな改善傾向がみられます。

 また、平成20年12月には微小粒子状物質に係る環境基準の設定について、中央環境審議会に諮問し、現在、同審議会大気環境部会において「微小粒子状物質環境基準専門委員会」及び「微小粒子状物質測定法専門委員会」が設置され検討が進められています。


浮遊粒子状物質濃度の年平均値の推移(昭和49年度〜平成19年度)

 エ 有害大気汚染物質

 平成19年度の有害大気汚染物質のモニタリング結果によると、環境基準が設定されている4物質のうち、ベンゼンは0.7%の地点で環境基準を超過していましたが、その他3物質については、すべての地点で環境基準を満たしていました。また、指針値が設定されている7物質のうち、ニッケル化合物は0.6%、1,2-ジクロロエタンは0.5%の地点で指針値を超過していましたが、その他5物質についてはすべての地点で指針値を下回っていました。

 オ 石綿対策

 大気汚染防止法では、吹付け石綿や石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材を使用するすべての建築物その他の工作物の解体等作業について作業基準等を定め、石綿の大気環境への飛散防止対策に取り組んでいます。また、石綿製品等を製造する施設について排出規制等を行っていますが、平成19年度末までに全て廃止の届出がなされました。

 カ 騒音・振動、悪臭

 騒音苦情の件数はここ数年増加しており、平成19年度は16,434件でした。振動苦情の件数は、平成19年度は3,384件でした。悪臭苦情の件数は19年度は17,533件となり、4年連続で減少しました。


騒音・振動・悪臭に係る苦情件数の推移(昭和49年度〜平成19年度)

 平成19年度の道路に面する地域における騒音の環境基準の達成状況は、全国3,861千戸の住居等を対象に行った評価では、昼間又は夜間で環境基準を超過したのは464千戸(12%)でした。このうち、幹線交通を担う道路に近接する空間にある1,610千戸のうち昼間又は夜間で環境基準を超過した住居等は311千戸(19%)でした。


平成19年度  道路に面する地域における環境基準の達成状況

 また、航空機騒音に係る環境基準の達成状況は、平成19年度においては測定地点の約74%の地点で達成しました。

 キ ヒートアイランド現象

 都市部の気温が郊外に比べて高くなるヒートアイランド現象が大都市を中心に生じており、夏季には、30℃を超える時間数が増加しています。また、冷房等による排熱が気温上昇を招き、更なる冷房による排熱が生ずるという悪循環の発生等さまざまな環境影響を及ぼしています。

 ヒートアイランド対策大綱に基づき、[1]人工排熱の低減、[2]地表面被覆の改善、[3]都市形態の改善、[4]ライフスタイルの改善の4つを柱とするヒートアイランド対策の推進を図り、ヒートアイランド対策関係府省連絡会議において、ヒートアイランド対策大綱の見直しに着手しました。

 また、関連する調査研究として、ヒートアイランド現象の実態や環境への影響に関する調査・観測や、熱中症の予防情報の提供とモニタリングを継続的に実施しました。


(3)水環境の現状

 水質汚濁に係る環境基準のうち、人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)については、平成19年度の公共用水域における環境基準達成率が99.1%、生活環境の保全に関する項目(生活環境項目)のうち、有機汚濁の代表的な水質指標である生物化学的酸素要求量(BOD)又は化学的酸素要求量(COD)の環境基準の達成率は、平成19年度は85.8%となっています。水域別では、河川90.0%、湖沼50.3%、海域78.7%となり、湖沼では依然として達成率が低くなっています。


環境基準達成率(BOD又はCOD)の推移

 閉鎖性海域の海域別のCODの環境基準達成率は、東京湾は63.2%、伊勢湾は56.3%、大阪湾は66.7%、大阪湾を除く瀬戸内海は78.0%となっています。


三海域の環境基準達成率の推移(COD)

 また、平成19年度の地下水質の概況調査の結果では、調査対象井戸(4,631本)の7.0%(325本)において環境基準を超過する項目が見られ、施肥、家畜排せつ物、生活排水等が原因と見られる硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の環境基準超過率が、4.1%と最も高くなっており、これらに係る対策が緊急の課題となっています。


地下水の水質汚濁に係る環境基準の超過率(概況調査)の推移


(4)土壌環境の現状

 市街地等の土壌汚染については、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づく調査や対策が進められているとともに、自主的な汚染調査を行う事業者の増加、地方公共団体における地下水の常時監視の体制整備や土壌汚染対策に係る条例の整備等に伴い、近年、土壌汚染事例の判明件数が増加しています。


年度別の土壌汚染判明事例件数

 このような状況の中、土壌制度小委員会における審議などを経て、20年12月に中央環境審議会からなされた答申を踏まえ、21年3月に「土壌汚染対策法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました(同年4月に公布)。


(5)地盤環境の現状

 地盤沈下は、工業用、水道用、農業用等のための地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、主として、粘土層が収縮するために生じます。平成19年度までに、地盤沈下が認められている主な地域は37都道府県60地域となっています。

 かつて著しい地盤沈下を示した東京都区部、大阪市、名古屋市などでは、地下水採取規制等の対策の結果、地盤沈下の進行は鈍化あるいはほとんど停止しています。しかし、地下水を消雪用に使用する積雪地や天然ガスかん水採取地など、一部地域では依然として地盤沈下が認められています。

 また、地盤沈下した海抜ゼロメートル地域などでは洪水、高潮、津波などによる甚大な災害の危険性のある地域も少なくありません。

3 循環型社会の形成 〜循環型社会の構築を通じた経済発展の実現に向けて〜


(1)我が国の物質フロー

 循環型社会を構築するためには、私たちがどれだけの資源を採取、消費、廃棄しているかを知ることが第一歩となります。

 我が国の物質フロー(平成18年度)を概観すると、18.2億トンの総物質投入量があり、その半分程度の7.5億トンが建物や社会インフラなどの形で蓄積されています。また1.7億トンが製品等の形で輸出され、4.9億トンがエネルギー消費及び工業プロセスで排出され、5.8億トンの廃棄物等が発生しているという状況です。このうち循環利用されるのは2.3億トンで、これは、総物質投入量の12.5%に当たります。


我が国における物質フロー

 第2次循環型社会形成推進基本計画(平成20年3月閣議決定。以下「循環型社会基本計画」という。)では、発生抑制、再使用、再生利用、処分等の各対策がバランス良く進展した循環型社会の形成を図るために、この物質フロー(ものの流れ)の異なる断面である「入口」、「出口」、「循環」に関する指標に新たな目標を設定しています。

 それぞれの指標についての目標年次は平成27年度としています。

指標 資源生産性 循環利用率 最終処分量
目標 約42万円/トン 約14〜15% 約23百万トン

 各指標について、最新の達成状況をみると以下のとおりです。

 1)資源生産性(=GDP/天然資源等投入量)

 平成18年度 約34.8万円/トン(平成12年度[約26万円/トン]から約33%上昇)

 2)循環利用率(=循環利用量/(循環利用量+天然資源等投入量))

 平成18年度 約12.5%(平成12年度[約10%]から約2.6ポイント上昇)

 3)最終処分量(=廃棄物の埋立量)

 平成18年度 約29百万トン(平成12年度[約56百万トン]から約49%減)


 我が国で発生する循環資源がどのように循環利用されているか、その特徴をまとめると、

 バイオマス系循環資源は、廃棄物等発生量全体の54%を占めています。家畜排せつ物、下水道事業などで水処理の際に発生する有機性汚泥、建設現場などから発生する木くず、家庭から発生する厨芥類(生ごみ)などがあります。主な用途としては、農業でのたい肥、飼料としての利用が挙げられます。また、汚泥はレンガ等の原料、木くずは再生木質ボード等として利用する場合などがあります。

 非金属鉱物系(土石系)循環資源は、廃棄物等発生量全体の37%を占めています。建設現場から発生するがれき類や、鉄鋼業、非鉄金属業、鋳物業から発生する鉱さい、建設現場、浄水場などから発生する無機性汚泥、家庭、飲食店などから出るガラスびんなどがあります。主な用途としては、骨材、セメント原料などの建設分野での利用が挙げられます。

 金属系循環資源は、廃棄物等発生量全体の6%を占めています。建設現場から発生する解体くず、鉄鋼業、非鉄金属業から発生する金属くず及び金属缶や家電などの使用済製品などが挙げられます。用途としては、電炉による製鉄や、非鉄金属精錬に投入される金属原料としての利用等が挙げられます。

 化石系循環資源は、廃棄物等発生量全体の3%を占めています。その中身を見ると、各種製造業から発生する廃油や、プラスチック製品製造業、機械器具製造業から発生するプラスチック加工くず、家庭や各種産業などから発生する使用済プラスチック製品などが挙げられます。用途としては、建設資材や、鉄鋼業での還元剤としての利用などが挙げられます。

 また、家畜排せつ物の一部や稲わら、麦わら、もみがらといった畜産や農業に伴う副産物が排出され、肥料などとして農地等に還元され、ビールびんや牛乳びんなどのリターナブルびんやタイヤなどがリユースされています。(中古品として販売された量は含まない。)マテリアルリサイクルされたものの代表的なものとして、非金属鉱物系資源の代替原料(再生砕石、再生アスファルト合材)、同じく非金属鉱物系資源の代替原料(セメント原燃料、路盤材等)として利用される鉱さいなどが挙げられます。なお、これらのマテリアルリサイクル量の中には、廃油や廃木材などを燃料として使用する量も含まれています。


(2)廃棄物の排出量

 ア 一般廃棄物(ごみ)の処理の状況

 平成18年度におけるごみの総排出量*1は5,204万トン(前年度比1.3%減)、1人1日当たりのごみ排出量は1,116グラム(前年度比1.3%減)となっています。

 *1「ごみ総排出量」=「収集ごみ量+直接搬入ごみ量+集団回収量」


ごみ総排出量と1人1日当たりごみ排出量の推移

 イ 産業廃棄物の処理の状況

 平成18年度における全国の産業廃棄物の総排出量は約4億1,850万トンとなっています。

 そのうち再生利用量が約2億1,477万トン(全体の51%)、中間処理による減量化量が約1億8,193万トン(43%)、最終処分量が約2,180万トン(5%)となっています。再生利用量は、直接再生利用される量と中間処理された後に発生する処理残さのうち再生利用される量を足し合わせた量になります。また、最終処分量は、直接最終処分される量と中間処理後の処理残さのうち処分される量を合わせた量になります。


産業廃棄物の処理の流れ(平成18年度)

 ウ 廃棄物分野における温室効果ガス削減対策について

 「京都議定書目標達成計画」では廃棄物分野の温室効果ガス排出削減対策の目標を設定し、平成22年には約780万トン(二酸化炭素換算)削減することを目標としています。平成18年度の廃棄物分野における温室効果ガス排出量は4,480万トン(二酸化炭素換算)で、日本の温室効果ガス総排出量(同13億4,000万トン)の約3.3%を占めています。また、廃棄物として排出されたものの原燃料への再資源化や廃棄物発電等により削減された温室効果ガス排出量は、平成17年度は約1,500万トン(二酸化炭素換算)であり、これらの温室効果ガス排出量を差し引くと、廃棄物等を原因とした排出量は減少していると考えられます。


(3)不法投棄の件数及び投棄量

 平成19年度に新たに報告のあった産業廃棄物の不法投棄事案は、382件(前年度554件)10.2万トン(同13.1万トン)で、件数・トン数ともに前年度より減少しました。


産業廃棄物の不法投棄件数及び投棄量の推移


(4)循環型社会の形成に向けた国の取組

 循環型社会基本計画の着実な実行を確保するため、毎年、中央環境審議会は、循環型社会基本計画に基づく施策の進捗状況などを点検し、必要に応じその後の政策の方向性について政府に報告することとされており、平成20年度は第2次の循環型社会基本計画の初めての進捗状況の点検を行いました。

 容器包装リサイクル関係では、平成20年4月に改正容器包装リサイクル法が完全施行され、再商品化の合理化に寄与した市町村に対して事業者が資金を拠出する仕組みが施行されました。

 また、プラスチック製容器包装を始めとした容器包装のリサイクルについて、再資源化の流れの透明性の向上等に関する課題及び方策を検討し一定の結論を得るため、平成20年7月に「容器包装リサイクルのフローの透明化等に関する検討会」を設置しました。さらに、平成21年1月に「容器包装3R推進全国大会―レジ袋削減の取組を全国へ―」を東京都内で開催し、地域特性を活かした削減の取組等を全国へ情報発信しました。

 家電リサイクル関係では、「家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書」を受けて、対象となる機器の追加(液晶・プラズマテレビ、衣類乾燥機)や、既存の対象機器の再商品化率の引き上げなどを規定するため、平成20年12月に家電リサイクル法施行令の改正を行いました(平成21年4月1日から施行)。

 また、平成20年11月1日からエアコン、ブラウン管テレビ(15型以下)及び冷蔵庫・冷凍庫(170リットル以下)のリサイクル料金について、テレビの2011年アナログ放送停波を控えた適正排出や消費者の負担軽減等を理由に引き下げられるとともに、消費者の排出利便性を向上するため、小売業者による特定家庭用機器のリユース流通も期待されることから、「リユース・リサイクル仕分け基準の作成に係るガイドライン」の策定を行いました。


(5)国際的な取組

 2008年(平成20年)5月に、神戸でG8環境大臣会合が開催され、3Rが主要議題の一つとして取り上げられました。参加各国の大臣間での議論を通じ、2004年(平成16年)のG8サミットにおいて、「3Rイニシアティブ」が提案されて以来、3Rの国際的取組が進展していることが確認され、今後G8各国が3Rの一層の推進に向けて取り組む具体的な行動が列挙された「神戸3R行動計画」が合意されました。当計画は、同年7月に北海道洞爺湖で開催されたG8北海道洞爺湖サミットにおいて、G8各国の首脳間でも支持されました。

 この行動計画に基づき今後G8各国は、レジ袋等の使い捨て製品の削減、資源生産性を考慮した目標の設定、途上国の有害廃棄物の受け入れ、途上国の能力開発の支援などに取り組むこととなりました。特に、レジ袋削減については、日中韓がそろって対策をとることになったことから、3カ国が連携して、アジアや世界の国々に同様の取組を呼びかけることとなりました。

 また、G8環境大臣会合の際には、日本として、アジア等における循環型社会の構築に向けて進めていく国際的取組を列挙した「新・ゴミゼロ国際化行動計画」を発表しました。

 当該計画に基づき、アジア全体で3Rイニシアティブを展開するため、アジア各国における循環型社会構築の支援や地域的取組を支援しています。G8環境大臣会合に先立ち2回のアジア3R推進会議を開催するとともに、我が国の知見・経験を活用して、アジア各国における3R推進のための国別戦略の策定支援(タイ、バングラデシュ、カンボジア、フィリピン、ベトナム、インドネシア)、3Rナレッジハブなど情報・技術の拠点整備及び研究ネットワークの構築、アジア環境と保健地域フォーラムを通じた医療廃棄物管理等に関する現状分析・政策提言の検討、政策対話等を行っています。また、有害廃棄物の不法輸出入の防止に関するアジアネットワークの形成及びバーゼル条約によるアジア太平洋地域におけるE-wasteの環境上適正な管理に関するプロジェクトの支援を行っています。これらにより、3Rの推進と廃棄物の適正処理を進め、アジア全体における循環型社会の構築を目指しています。

 現在、アジアでの3Rの国際的推進のプラットフォームとして、アジア3R推進フォーラムの開催をアジア各国に対して呼びかけており、2008年10月に開催された第1回東アジアサミット環境大臣会合の閣僚声明において当フォーラム発足への賛同が得られました。当フォーラムは2009年半ばを目途に発足させる予定です。

4 化学物質の環境リスクの評価・管理

 現代の社会においては、様々な産業活動や日常生活に多種多様な化学物質が利用され、私たちの生活に利便を提供しています。また、物の焼却などに伴い非意図的に発生する化学物質もあります。化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄の各段階で適切な管理が行われない場合に環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあります。

 環境リスク、すなわち化学物質の人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれについての評価(環境リスク評価)を行うための知見を収集し、平成20年度に環境リスク初期評価等について第7次取りまとめを行いました。その結果、4物質が、相対的にリスクが高い可能性があり「詳細な評価を行う候補」と判定されました。

 化学物質審査規制法に基づき、平成20年度は、新規化学物質の製造・輸入について676件(うち低生産量新規化学物質については298件)の届出があり、事前審査を行いました。また、化学物質審査規制法の見直しに関する検討を厚生科学審議会、産業構造審議会及び中央環境審議会の合同会合において行い、平成20年12月に報告書がとりまとめられたことを踏まえ、化学物質審査規制法の一部を改正する法律案が平成21年2月に閣議決定され、通常国会へ提出されました。


化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律のポイント

 化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)については、第7回目の届出が実施され、届出された個別事業所のデータ、その集計結果及び国が行った届出対象外の排出源からの排出量の推計結果を、平成21年2月に公表しました。


届出排出量・届出外排出量上位10物質とその排出量(平成19年度分)

 ダイオキシン類対策は、平成17年に国の削減計画を変更し、新たな目標値として22年までに15年に比べて約15%の削減をすることとしました。20年12月に公表した排出量の目録(排出インベントリー)では、19年の排出総量の推計は、15年から約23%の削減がなされており、順調に削減が進んでいます。


ダイオキシン類の排出総量の推移

 近年、小児に対する環境リスクが増大しているのではないかとの懸念があり、国際的にも小児の環境保健に関心が払われています。環境リスク(化学物質、生活環境等)が子どもの発育に与える影響を明らかにするためには、人の集団を観察する疫学的なアプローチも重要です。今後、子どもを胎児期から12歳まで追いかける出生コホート(追跡)調査を新たに実施するため、「小児環境保健の疫学調査に関する検討会・ワーキンググループ」(http://www.env.go.jp/chemi/ceh/examination/index.html)を設置し、準備を進めています。

 国内における毒ガス弾等に係る対策については、平成15年6月の閣議了解及び12月の閣議決定を踏まえ、毒ガス弾等による被害の未然防止の観点からの環境調査等を実施しています。また、環境省に設置した毒ガス情報センターにおいて情報を収集するとともに、ホームページやパンフレット(http://www.env.go.jp/chemi/gas_inform/pamph/)等を通じて被害の未然防止について周知を図っています。

5 生物多様性の保全及び持続可能な利用 〜 私たちのいのちと暮らしを支える生物多様性 〜

 平成20年6月に生物多様性基本法が施行されたほか、生物多様性の保全及び持続可能な利用に向けたさまざまな取組が行われています。


(1)世界の生物多様性の状況

 地球上には、様々な生態系が存在し、これらの生態系に支えられた多様な生物が存在しています。全世界の既知の総種数は約175万種ですが、まだ知られていない生物も含めた地球上の総種数はおよそ500万〜3,000万種といわれています。

 国際自然保護連合(IUCN)の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト(レッドリスト)によると、評価対象種の約4割に絶滅のおそれがあるとされています。

 平成18年の生物多様性条約第8回締約国会議(COP8)で、生物多様性条約事務局が公表した地球規模生物多様性概況第2版(GBO2)では、15の指標により地球規模の生物多様性の状況を評価した結果、保護地域の指定範囲等を除く12の指標が悪化傾向となるなど、生物多様性が依然として失われつつあることが示されました。


地球規模生物多様性概況第2版(GBO2)による生物多様性の状況に関する評価結果

 平成20年のCOP9の閣僚級会合において中間報告が行われた生態系と生物多様性の経済学(TEEB)では、早ければ2030年までにサンゴ礁の60%が漁業、汚染、気候変動等により消滅するとされました。また、2000年から2050年までの50年間に、自然地域の11%が農地への転換や気候変動等により失われるといった深刻な結果を招くおそれがあるとされました。さらに、森林生態系の劣化による経済的な損失は2050年には1兆3,500億ユーロ(約220兆円)〜3兆1,000億ユーロ(約500兆円)に及ぶ可能性が指摘されました。


生態系と生物多様性の経済学(TEEB)の中間報告の概要


(2)日本の生物多様性の状況

 環境省レッドリストによると、日本の絶滅のおそれのある野生生物は3,155種で、日本に生息・生育する爬虫類、両生類、汽水・淡水魚類の3割強、哺乳類、維管束植物の2割強、鳥類の1割強に当たる種が、絶滅のおそれのある種に分類されています。


(3)生物多様性条約COP10に向けた取組

 わが国への招致に向けて取り組んできた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)及び同条約カルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5)については、平成20年5月に開催されたCOP9(ドイツ・ボン)において、平成22年10月に愛知県名古屋市で開催されることが決定しました。

 これを受けて、平成20年9月にCOP10及びMOP5のわが国開催に関する関係省庁連絡会議を設置し、開催地の関係者との連携のもとに準備を開始しました。また、準備の過程から多様な主体が参画できるよう情報共有のための円卓会議を設置しました。


(4)生物多様性を社会に浸透させる取組

 広く国民への生物多様性に関する普及・広報を推進するため、有識者等からなる「生物多様性広報・参画推進委員会」を設置しました。委員会での検討をもとに、生物多様性をより端的にわかりやすい言葉で表現したコミュニケーションワードを「地球のいのち、つないでいこう」に決定し、著名人による広報組織「地球いきもの応援団」を発足させるとともに、国民一人ひとりが生物多様性に取り組む際のヒントとなる「国民の行動リスト」を公表しました。

 地域における生物多様性の保全・再生に資する取組を支援するため、「生物多様性保全推進支援事業」を開始し、野生生物の保護管理や外来種対策等、全国の19の取組を交付対象として採択しました。

 エコツーリズム推進法が平成20年4月に施行され、政府の基本方針「エコツーリズム推進基本方針」が同年6月に閣議決定されました。

 温泉法等の温泉に関する制度については、平成20年5月に改正温泉法施行令等関係政省令が公布され、同年10月1日から、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止することを目的として19年11月に公布された改正温泉法が施行されました。


(5)地域における人と自然の関係を再構築する取組

 鳥獣保護管理の担い手の育成及び確保が求められていることから、狩猟者等現場における鳥獣保護管理の担い手の育成のための研修事業を実施するとともに、鳥獣保護管理に係る人材登録制度を開始しました。

 平成20年春の十和田湖等における高病原性鳥インフルエンザの発生を受けて「野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る都道府県鳥獣行政担当部局等の対応技術マニュアル」を整備するとともに、全国における高病原性鳥インフルエンザウイルスに係るサーベイランス体制を構築しました。 

 種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に9種の追加、1種の削除を行い、国内希少野生動植物は、哺乳類4種、鳥類38種、爬虫類1種、両生類1種、汽水・淡水魚類4種、昆虫類10種、植物23種の81種となりました。新たに9種の国内希少野生動植物種について保護増殖事業計画を策定し、計47種に対し、個体の繁殖や生息地の整備等の保護増殖事業を行っています。平成20年9月には、佐渡島においてトキ10羽の試験放鳥を実施しました。

 平成19年3月以降、アメリカで有害な原料を含むペットフードに起因する犬や猫の死亡事故が発生したこと等を受け、第169回通常国会に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」案を提出し、平成20年6月に成立しました。


(6)森・里・川・海のつながりを確保する取組

 平成20年10月、中央環境審議会に対し「自然公園法の施行状況等を踏まえた必要な措置について」諮問を行い、検討を重ねた結果、国立・国定公園や自然環境保全地域等における生物多様性保全の充実等の方策がとりまとめられ、平成21年2月に環境大臣に対して答申がなされました。これを受けて、自然公園法の一部を改正する法律案を第171回通常国会に提出しました。

 吉野熊野国立公園の西大台地区を、全国で初めてとなる利用調整地区に指定し、一定のルールのもとで優れた自然環境の持続的な利用を図る取組を行っています。


(7)地球規模の視点を持って行動する取組

 世界の自然共生の智慧や伝統等を収集・調査し、日本の取組と合わせて、地球全体での自然共生社会実現のために活用することを「SATOYAMAイニシアティブ」として世界に提案することとしており、生物多様性条約COP9で、環境大臣がその取組の促進を国際社会に表明し、さらに平成20年5月に開催されたG8環境大臣会合でその国際的な推進が合意されるなど、SATOYAMAイニシアティブ推進のための取組を進めました。

 地球温暖化等の影響を受けやすい身近な生きものや自然現象(昆虫の分布や植物の開花等)について、平成20年7月から市民参加による調査(愛称「いきものみっけ」)を開始しました。

 ラムサール条約については、東南アジア諸国に対する国際的に重要な湿地の特定に向けた協力、ベトナムにおけるアジア湿地シンポジウムの開催支援、第10回締約国会議への水田に関する決議案の韓国との共同提出等を行いました。

 平成20年11月に、東京で「国際サンゴ礁保護区ネットワーク会議/第4回ICRI東アジア地域会合」を開催し、平成22年度を目途に東アジアを中心とした海域におけるサンゴ礁保護区ネットワーク戦略を策定するための作業計画を作成しました。

 平成17年に世界自然遺産に登録された知床については、平成20年7月の第32回世界遺産委員会において保全状況の審査が行われ、地域社会の参画と科学委員会を通じて科学的知見を活用した管理が高く評価されました。

6 各種施策の基盤、各主体の参加及び国際協力に係る施策

(1)環境保全経費

 平成21年度予算における環境保全経費の総額は、2兆1,168億円となっています。


(2)政府の対策

 第三次環境基本計画の第2回目の点検は、環境基本計画の10の重点分野のうち、「地球温暖化問題に対する取組」などの5分野を重点点検分野として実施されました。


(3)環境影響評価等

 事業の位置・規模等の検討段階における戦略的環境アセスメントの取組を推進するため、「戦略的環境アセスメント導入ガイドライン」に関する情報提供を行うとともに、具体的な事例に取り組みました。

 環境影響評価法に基づく環境影響評価手続の実施状況等に関する総合的な調査研究を実施し、環境影響評価に係る技術手法の向上、改善のための検討を行うとともに、平成18年に改正された事業の種類ごとの主務省令について確実な運用の実施に努めました。

 さらに、国・地方公共団体等の環境影響評価事例や制度及び技術の基礎的知識の提供による環境影響評価の質及び信頼性の確保を目的として、これらの情報等を集積し、インターネット等を活用した国民や地方公共団体等への情報支援体制の整備を進めました。


(4)水俣病、アスベスト健康被害の救済

 ア 水俣病

 水俣病の認定は、現在、公健法に基づき行われており、平成21年3月末までの被認定者は、2,962人(熊本県1,778人、鹿児島県491人、新潟県693人)で、このうち生存者は、820人(熊本県426人、鹿児島県169人、新潟県225人)となっています。

 平成4年から医療費の自己負担分等を支給する医療事業等を内容とする水俣病総合対策事業が実施されました。また、7年の政治解決を受け、医療事業の申請受付の再開等の施策を実施しました。

 国及び関係県のこのような施策が実行に移されたことを受けて、関西訴訟を除いた国家賠償請求訴訟については、平成8年2月及び5月に原告が訴えを取り下げました。関西訴訟については、16年10月に、最高裁判決が出され、国及び熊本県には、昭和35年1月以降、水質二法・県漁業調整規則の規制権限を行使せず、水俣病の発生拡大を防止しなかった責任があるとして、賠償を命じた大阪高裁判決が是認されました。

 平成18年に水俣病公式確認から50年という節目を迎えるに当たり、17年4月に「今後の水俣病対策について」を発表し、医療事業については高齢化の進展等を踏まえた拡充、胎児性患者を始めとする水俣病被害者に対する社会活動支援、地域の再生・振興等の地域づくりの対策に取り組んでいます。

 また新たな救済を求める者の増加を受け、与党に設置された水俣病問題に関するプロジェクトチームにおける検討を踏まえ、21年3月には、水俣病被害者の早期救済を図るための法案が提出されています。国においても、与党のプロジェクトチームと連携して、関係地方公共団体とも協力しながら取組を進めています。

 イ アスベスト(石綿)健康被害

 石綿による健康被害の救済に関する法律は、施行後2年余りが経過し、概ね順調に施行されてきましたが、中皮腫の診断の困難さにより、発症後相当期間経ってからの申請例や生前に申請できない例が存在するなど、制定当時には想定していなかった課題が明らかとなり、また特別遺族弔慰金等の請求期限も迫るなど救済の観点から対応が必要と考えられるようになりました。与党アスベスト対策プロジェクトチームの取りまとめた与党案及び民主党案の提出、その後の修正協議による一本化を経て、平成20年6月5日参院本会議で可決、成立した改正法は、同月18日に公布され、同年12月1日に施行されました。

 石綿による健康被害の救済に関する法律による救済給付に係る申請等については、20年度末時点で7,424件を受け付け、うち4,552件が認定、987件が不認定とされています。


(5)環境教育・環境学習の推進

 環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律及び同法に基づく基本方針に基づき、人材認定等事業の登録を行い、登録した事業についてインターネットによる情報提供を行うとともに「21世紀環境教育プラン〜いつでも(Anytime)、どこでも(Anywhere)、誰でも(Anyone)環境教育AAAプラン〜」として、関係府省が連携して、家庭、学校、地域、企業等における生涯にわたる質の高い環境教育の機会を提供することが重要であり、環境教育・環境学習に関する各種施策を実施しました。

 また、韓国のソウルにおいて開催された第9回日中韓環境教育ワークショップ・シンポジウムに参加し、「三カ国間の環境教育に関する交流を活発化する方法」及び「高等教育における若手環境教育リーダー」をテーマに意見交換を行いました。


(6)社会経済のグリーン化の推進に向けた取組

 環境への負荷の低減を図るために経済的負担を課す措置については、その具体的措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、廃棄物の発生抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響及び諸外国の活用事例等につき、調査・研究を進めました。

 グリーン購入法に基づき、国等の各機関では、基本方針に即して平成20年度の環境物品等の調達方針を定め、これに基づいて環境物品等の調達を推進しました。また、グリーン購入の取組を更に促すため、基本方針の変更について、国の地方支分部局、地方公共団体、事業者等を対象とした説明会を全国10か所において開催しました。

 企業の社会的責任という観点から環境への取組をとらえる傾向が高まっていることを受けて、金融のグリーン化の促進を目的として、環境に配慮した投融資の実態を把握すべく調査を行い、有識者による検討会を開催し、今後の環境に配慮した投融資の普及のための検討を行いました。

 我が国の環境ビジネスの市場・雇用規模については、OECDの環境分類に基づき調査、推計が行われています。省エネ家電やエコファンドなど、環境保全を考えた消費者の行動が需要を誘発する環境誘発型ビジネスも加えた市場・雇用規模については、環境省の調査によれば、平成19年の市場規模は約69兆円、雇用規模は約130万人となっています。


環境ビジネス(環境誘発型ビジネスを含む)の市場規模及び雇用規模の現状


(7)国際的取組に係る施策

 地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。



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