むすび 地球環境の健全な一部となる経済への転換

 持続可能な社会の形成のためには、多様な主体が連携し、様々な創意工夫を凝らしていくことが重要です。また、取り組む施策は、環境対策だけに留まらず、経済的価値や社会的価値なども、併せて追求していくものでなくてはなりません。

 環境を良くする取組を着実に続けることにより、私たちの生活の質が高まるとともに、気候や生態系が健全に維持され、無駄の無い社会へと繋がっていきます。それを実現するには、あらためて地球が有限のシステムにより成り立っていることを認識し、人類の営む経済が、地球の大きな物質循環やエネルギーの流れ、健全な生態系の中で永続的に成り立つようにしていかなくてはなりません。

 経済活動の本質は、資源や製品などをそれらを求める者へ適切に配分し、万人に十分な付加価値を与える活動に他ならず、環境と共存しながらも成り立つものです。すなわち、私たちの経済活動は、厳しい環境制約の下でも活発に活動を続けることができるはずのものと言えます。一方で私たちは、地球が有限なシステムにより成り立っていることに気づきつつも、その受け皿の大きさゆえに経済活動を通じて環境に負荷を与え続けてきました。しかし、環境の価値を内在化せずに使い続ければ、やがてその価値を失うことになります。環境と共存した経済活動を実現するには、環境対策を織り込んだ新しい経済の形に移行することが重要です。

 私たちは、100年先の子どもたちからこの地球を付託されています。将来の世代が安心して地球で暮らせるように、21世紀初頭の人類の選択が正しかったと言われるように、今こそ知恵と力を結集する時です。わが国は古くから、ものを大切にする文化を育んできました。様々な物を無駄なく最後まで使い切ること、自然から得られる恵みを取り尽くさずに持続的に農林水産業を営もうとする姿勢などに見てとれます。このような哲学をあらためて認識し、環境の価値を的確に経済に反映し、環境を良くする取組を地道に続けることによって、人類は地球上で生存し続けることができると考えます。

 平成20年、世界はかつてないほどの不況に直面しました。そして、今なお厳しい状況の中にあります。しかし、100年に一度の不況は、わが国が世界でその存在感を示す千載一遇のチャンスです。環境対策、環境技術に日本の持てる知恵と人材を総動員し、いち早く環境と経済が持続的に発展する社会を作り、世界の価値観を私たちがリードしていきましょう。



前ページ 目次 次ページ