くらしを深める「環境の心」

<第2章の要約>

 くらしの実践者である一人ひとりが消費者、投資家、生活者として、「環境のわざ」を作り出す事業者を支え、導き、この両者が互いに支え合って初めて「環境のわざ」を活かすことができます。本章では、こうした行動をもたらす意識である「環境の心」に着目し、社会の中での「環境の心」を考えるとともに、地域での実践例等を紹介していきます。



 日本では、環境問題に能動的に取り組まない理由として「情報不足」を挙げる者が他国より多くなっています。環境情報に関する関心は高いといえますが、その満足度を見ると、「満足している」と回答した人は、全項目についてわずかです。

環境情報への関心の高さ、満足度について
環境意識に関する国際比較
 環境情報への関心度と満足度の乖離を考えると、今後、行政、事業者、民間団体等がより一層わかりやすい情報提供の充実に努める必要があります。しかし、個別の環境情報が得られ、多少の努力で環境保全に効果があるとわかっても、「自分一人ぐらい」と考え、当面の日常生活の快適さを優先することがあります。このような社会的ジレンマを防ぐため、個人の努力がその人にとっても利益となる誘因を確保することが求められると同時に、一人ひとりが社会全体を尊重し、環境を大切にし、敬う「環境の心」を持つことも重要です。「みんなで」「お互いさま」という仲間意識と相互依存関係の理解が、社会的ジレンマの中で生じた感情を克服し、全体にとって長期的に最も良い行動を促します。関係者が問題意識を共有し、環境に良いことに向けて協力し合うように、人と人とをつないでいくことが重要です。
 日本古来の「環境の心」を振り返り、地球という共有地の持続可能性について語り合う国際的な議論に参加し、21世紀にふさわしい「環境の心」を育んでいくことが、これからの日本の役割と考えられます。



 私たちは、「環境の心」を通して、消費者や投資家として、事業者等と関わる中で、環境保全を進めることができます。
 環境に配慮された製品やサービスを選択し、購入することを「グリーン購入」と呼びます。グリーン購入は、市場を通しての消費者から事業者に対し環境負荷低減への取組を働き掛けるアプローチであると同時に、環境対策等に積極的な事業者に対する支援にもなります。
 物を買う時の環境配慮について肯定する人の割合は高くなっています。しかし、その一方で、一人ひとりのグリーン購入の実施状況は、省エネ関係の環境配慮行動などに比べて低くなっています。グリーン購入を行う上で「支障を感じることはない」(36.4%)と答えた者がいる一方で、支障を感じる場面としては、「適切な情報が足りないため、判断できない場合」(25.9%)、「一般の製品より割高な場合」(16.5%)となっており、情報上の支障と経済上の支障が阻害要因となっています。環境に配慮しているかどうかを判断するためには、行政や事業者等から消費者に対して、事業活動や製品・サービス等に関する環境情報の適切な提供が必要です。「環境ラベル」は、このような環境情報の提供手段として、重要な役割を果たしています。
物を買うときの環境への配慮意識(全体)
環境保全行動の実施状況

主な環境ラベル


 近年の環境保全に対する個人意識の高まりを受け、環境面に配慮した金融商品が注目されています。収益面といった財務的観点のみならず、環境問題や社会問題に前向きに取り組む事業者へ投資することを社会的責任投資と呼びます。社会的責任投資のうち特に環境面に着目し、環境配慮に優れていたり、優れた環境パフォーマンスを上げている事業者に積極的に投資しようとする投資信託が、エコファンドと呼ばれます。
 日本では社会的責任投資の歴史は欧米に比べると浅く、エコファンドの資産残高は、一時2,000億円を超える規模にまで拡大しましたが、その後、株式市場の低迷等も重なり、現在1,000億円を下回る金額で推移しています。
 エコファンド等の社会的責任投資を「既に購入している層」は、日本では全体のわずか0.4%にとどまっています。日本では、多くの人がエコファンドなどの社会的責任投資についての情報不足を訴えています。今後、実際の購買行動へと結びつけるためには、社会的責任投資の内容や考え方の広報、運用報告書の工夫、社会的責任投資に携わる販売員の教育や研修等が有効と考えられます。


第3節 くらしの中で環境保全

 消費者や投資家としての行動以外にも、日々のくらしの実践者である生活者として、環境負荷を低減し、豊かな環境を保全・創造する取組があります。

日常生活における環境負荷


 今日の生活は、資源を採取する段階から製造、使用、廃棄の各段階において、また衣食住を通した日常生活のあらゆる場面で、環境へ負荷を与えています。その結果、約588百万トンの廃棄物等が発生し、約404百万トンがエネルギーとして消費されています。

わが国における物質フロー


 家電製品等のグリーン購入以外でも、こまめな消灯や、主電源を切って待機電力を抑える等、使い方を工夫することによっても省エネは可能です。例えば、「エアコンをつけっぱなしにしない」等機器の使い方に気をつける行動は、比較的負担感が少なく、大きな節約効果をあげることができます。また、洗濯や冷蔵庫の開閉等をまとめて行うことで、環境負荷低減効果をあげるものもあります。

省エネにおける実施のしやすさと年間節約額の散布図


 最近は、加温したビニールハウス等の施設栽培率の増加等により、季節に関わりなく、さまざまな食品を手に入れることができます。しかし、加温栽培は多くのエネルギーを要し、二酸化炭素の排出量を増やしています。旬の時期に旬のものを食べることは、失われつつある季節感を回復するとともに、環境保全にも貢献します。
 今日、各家庭での冷暖房兼用エアコンの普及率は100%を超えますが、エアコン一台当たり、夏場に設定温度を27℃から1℃上げるだけで年間5.9sの、また冬場に設定温度を21℃から1℃下げるだけで年間25.7kgの二酸化炭素排出量削減が可能です。まずは衣服によって温度調節することが、二酸化炭素の排出量減少につながります。「夏の軽装は相手にとって失礼ではなく、省エネで環境にやさしく、四季のある日本の良識である」という発想の転換を図り、職場での夏季の適正冷房と軽装に取り組む職場もあります。
 屋上・壁面緑化は、夏季の室温上昇を抑制し、冷房の省エネに貢献します。また、騒音の低減や建築物の保護、空気の浄化や都市気象の改善にも役立ちます。
 生活排水中の環境負荷を示す生物化学的酸素要求量(BOD)を個別に見てみると、台所から発生する負荷量が4割以上と大きな割合を占めています。家庭での発生源対策としては、生活排水処理施設の整備による削減だけでなく、発生源を減らす工夫も大切です。例えば、みそ汁など食べ残しのない分量だけ調理することや、食用油の適正な処理などの家庭からの負荷をなるべく減らす工夫が、川や海や湖沼の水質保全につながります。
きゅうりへの投入エネルギー量(1990年)
生活用水使用量の推移

どんなものに、どのくらいBODがあるか



 環境の視点に立って、地域の特色を生かした地域づくりやまちづくりが注目されています。本節では、本章で述べられた「環境の心」が活かされ、連携した地域での取組を見ていきます。
 梼原町では、風力発電によるCO2削減に貢献するだけでなく、売電収益を環境基金とし、住宅用太陽光発電の設置や間伐による健全な森林づくりへの活用等、風力発電を中心とした環境保全の取組(「風をおこし、町をおこす」)が進められています。さらに、千枚田オーナー制度などコミュニティに根ざした環境保全の取組も行われています。
http://www.town.yusuhara.kochi.jp/
2章4節 梼原町
 豊岡市では、「コウノトリと共生するまちづくり」を目指し、「15の元気メニュー」を市民・事業者・行政等の協働により展開し、農家による「田んぼビオトープ」づくりや「無農薬によるアイガモ農法」、市民による「コウノトリ感謝祭」などを、全市一体となって取り組んでいます。また、平成12年4月には、「豊岡市コウノトリ基金」が設立され、田んぼをコウノトリの生息地にするためなどに活用されています。14年には、こうした取組が功を奏してか、大陸から1羽のコウノトリが飛来し、住みつきました。
http://www.city.toyooka.hyogo.jp/
2章4節 豊岡市
 日野市では、直接請求による環境基本条例の提案、公募市民等による環境基本計画の策定をはじめとして、市民と行政がパートナーシップを組んで身近な環境問題に取り組んでいます。平成12年には、市民と共に「ゴミゼロのまちづくり」を目指して、約3万人の市民に「ごみ改革」の必要性を説明し、分別ごみの戸別収集、ダストボックスの全面撤去を行いました。これらの活動の結果、1年後にはごみの約50%減量を達成し、さらに最終処分場の延命化にも貢献するなど効果を上げています。
http://www.city.hino.tokyo.jp/info/
2章4節 日野市
 このような環境を良くすることが経済を発展させ、経済の活性化が環境を改善するという関係(環境と経済の好循環)を地域発で築いていくため、環境省では平成16年度から「環境と経済の好循環のまちモデル事業(「平成のまほろば」まちづくり事業)」を行うことになりました。これは、全国の市町村から二酸化炭素排出の削減等の環境保全と経済活性化を実現するアイデアを募集し、地域発の創意工夫を生かし住民や事業者などの幅広い参加を得た優れた事業に対し、環境保全のソフト事業を委託し、施設設置等の交付金を交付します。このようなモデルが成功し、環境と経済の好循環に向けたまちづくりが広がることが期待されます。(http://www.chie-no-wa.com/



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