1 自然環境の劣化がもたらす国際社会の不安定要因


 現在、地域紛争の頻発等を背景に、世界各地で大量の難民が発生しているといわれていますが、それに加え、近年では、環境が破壊されたことにより、従来の居住地を離れなければならなくなった「環境難民」と呼ばれる人々が約2,500万人に達すると推計されるなど、大きな問題となっています。
 こうした、環境問題を原因として発生する人口の移動や、酸性雨や国際河川の汚染等、国境を越える環境問題が国際社会における不安定さを増す要因になる事例が各地で見受けられています。

2 環境・社会・経済の安定性の確保

わが国における主要資源輸入依存度
 こうした現状を背景として、1999年(平成11年)のG8環境大臣会合の最終コミュニケに「環境と安全保障」の項目が置かれるなど、近年、環境と安全保障を関連付けて議論する場面が出てきました。世界経済のグローバル化により国境を越えた相互依存が世界全体として一層強まっている中、世界のある地域の環境破壊による不安定化が他の地域へも波及していく恐れが高まっており、地球規模での持続可能性を確保するため、環境・社会・経済の各側面からのアプローチが必要となります。資源・エネルギー、食料等を海外に大きく依存しているわが国は、その環境負荷の大きさにも鑑み、地球規模での持続可能性を確保していくため、積極的な貢献を行っていくことが重要になっています。



3 「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグサミット)の意義


 2002年(平成14年)8月末からヨハネスブルグ(南アフリカ共和国)で、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」が開催されます。この会議の意義としては、@世界の首脳が政治的決意を示すことにより、21世紀における持続可能な開発に係る国際的取組の指針を示す会議となり得ること、A国際社会が直面している新たな挑戦や機会についても検証され、今後の具体的な取組の促進について国際的合意が期待されること、B政府のみならず幅広い各界関係者が参加することで持続可能な開発の実現のための取組をさらに促進すること等が期待されています。
 世界各国の首脳が一堂に会し、持続可能な開発の実現に向け、特に開発途上国の環境問題や貧困の問題に取り組むために建設的な議論が行われることは、世界全体で持続可能性を確保するために極めて有意義であり、海外に多くを依存するわが国としても積極的な貢献を行う機会であるといえます。

4 環境分野における国際貢献


環境クズネッツ曲線
 経済成長と環境負荷の関係を分析すると、経済成長初期においては環境負荷は小さく、経済成長の進展にしたがって環境負荷を増大させ、一定程度の成長段階に至った後には、環境対策の進展により環境負荷が低減していくという研究があり、このような逆U字型カーブは、環境クズネッツ曲線と呼ばれています。持続可能な開発を達成するためには、低開発諸国が先進国と同様の発展経路をたどるのではなく、逆U字型の曲線のふくらみをできるだけなだらかなものとすることが極めて効果的です。そのためには、開発途上国自身が環境対策に積極的に取り組む必要があるとともに、すでに対策の知見を有する先進国の協力が重要です。
 特に、アジア地域は、今後急速な人口の増加と経済発展が予想されており、その結果環境負荷が高まり、そのことがひいては地域社会の不安定要因となることが危惧されていることから、環境保全のみならず、社会・経済の面でアジア地域と密接な関係にあるわが国としても、政府開発援助(ODA)の約30%を環境案件に充てるなど、アジア地域での環境・社会・経済の安定性の確保に努めているところです。


アジア地域における政府開発援助(ODA)の具体的取組事例

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