環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第4章>第6節 海洋環境の保全

第6節 海洋環境の保全

1 海洋ごみ対策

美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)及び同法に基づく基本方針、その他関係法令等に基づき、マイクロプラスチックを含む海洋ごみの分布状況や生態系への影響、モニタリング方法の高度化等に関する調査研究、地方公共団体等が行う海洋ごみの回収処理・発生抑制対策への財政支援、使い捨てプラスチック容器包装等のリデュース、使用後の分別意識向上、リサイクル、不法投棄防止を含めた適正な処分の確保等について、普及啓発を含めて総合的に推進します。また、海洋中のマイクロプラスチックの供給源の一つと考えられる河川水中のマイクロプラスチックについても実態を把握するための調査に取り組みます。

海洋環境整備船を活用した漂流ごみ回収の取組を実施します。また、広域的なごみ発生抑制の推進のため複数地方公共団体連携による発生抑制対策モデル事業を実施します。さらに、外国由来の海洋ごみへの対応も含めた国際連携として、多国間の枠組みや二国間協力を通じて、マイクロプラスチックのモニタリング手法の調和や、関係国の施策等に関する情報交換、調査研究等に関する協力を進めます。

2 海洋汚染の防止等

ロンドン条約1996年議定書を国内担保する海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)に基づき、廃棄物の海洋投入処分及びCO2の海底下廃棄等に係る許可制度の適切な運用等を着実に実施するとともに、船舶バラスト水規制管理条約及び海洋汚染防止条約(MARPOL条約)等に基づくバラスト水処理装置等の審査や未査定液体物質の査定、油濁事故対策協力条約(OPRC条約)等に基づく排出油等の防除体制の整備等を適切に実施します。また、船舶事故等で発生する流出油による海洋汚染の拡散防止等を図るため、関係機関と連携し、大型浚渫(しゅんせつ)兼油回収船を活用するなど、流出油の回収を実施します。さらに、我が国周辺海域における海洋環境データ及び科学的知見の集積、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)等への参画等を通じた国際的な連携・協力体制の構築等を推進します。

3 生物多様性の確保等

海洋保護区の設定に関しては、第2章第3節を参照。

サンゴ礁については「サンゴ礁生態系保全行動計画2016-2020」及び「サンゴ大規模白化現象に関する緊急宣言」に基づき、サンゴ礁生態系の回復のための適応策やモニタリングを推進するとともに、2017年3月に公表した海洋生物レッドリストについて、レッドリストの統合等を検討しつつ、改訂に向けた作業を行います。サンゴ礁の保全の国際的取組については、第2章第6節8を参照。

4 沿岸域の総合的管理

森・里・川・海のつながりや自然災害への対応、流域全体の水循環等を意識した沿岸域の総合的管理を推進するため、総合的な土砂管理、防護・環境・利用が調和した海岸空間の保全、生態系を活用した防災・減災を推進します。閉鎖性海域に関して、環境負荷の適正管理や保全・再生に向けた施策を実施するとともに、「きれいで豊かな海」の確保に向け、水質・海水温・生物生息場の変化等と水産資源等の関係性に関する調査研究を行い、科学的知見を踏まえた対策の在り方に関する検討等を実施します。

5 気候変動・海洋酸性化への対応

海水温上昇や海洋酸性化等の海洋環境変動の実態とそれらによる海洋生態系に対する影響を的確に把握するため、海洋における観測・監視の継続的な実施とともに、観測データの充実・精緻(ち)化や効率的な観測等のための取組を行います。また、気候変動及びその影響の予測・評価に関する取組を進めるとともに、海洋における適応策に関する各種取組を実施します。

6 海洋の開発・利用と環境の保全との調和

洋上風力発電、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、海洋資源開発など海洋の開発・利用において、環境保全と開発・利用を両立させ、環境への影響の評価を適切に行う観点から、今後の沖合域や深海域における海洋の開発・利用に関して、国内外での取組状況や国際的な議論も考慮しつつ、環境への影響評価上必要となるデータを収集するとともに、環境への影響評価の在り方に関する検討を行います。洋上風力発電について、ゾーニング手法の検討結果も踏まえ、今後の導入促進の在り方を検討します。

7 海洋環境に関するモニタリング・調査研究の推進

海洋環境や海洋生態系の状況を的確に把握するため、我が国領海及び排他的経済水域における海洋環境モニタリング(観測・監視)を継続的に実施します。