第3節 産業廃棄物


1. 産業廃棄物の発生及び処理の状況


(1) 産業廃棄物の排出量の推移
 平成2年度以降の産業廃棄物の排出量の状況を見ると、4億t前後で大きな変化はなく、バブル経済の崩壊後はほぼ横ばいとなっています(1-3-1図)。

1-3-1図 産業廃棄物の排出量の推移


(2) 産業廃棄物の中間処理施設数の推移
 産業廃棄物の中間処理施設は焼却、破砕、脱水等を行う施設で、平成14年度末の許可施設数は、全国で1万8,765施設となっており、前年度との比較では4.0%の減少となっています。中間処理施設のうち汚泥の脱水施設が34.9%、木くず又はがれき類の破砕施設が34.5%、その他の焼却施設が8.3%を占めています(1-3-2図)。

1-3-2図 産業廃棄物の中間処理施設数の推移


(3)産業廃棄物処理施設の新規許可件数の推移(焼却施設、最終処分場)
 産業廃棄物処理施設に係る新規の許可件数は焼却施設、最終処分場ともに、平成9年の廃棄物処理法の改正前と比較して激減しており、最終処分場の残余年数に影響しています(1-3-3図1-3-4図)。

1-3-3図 焼却施設の新規許可件数の推移(産業廃棄物)

1-3-4図 最終処分場の新規許可件数の推移(産業廃棄物)


2. 大都市圏における廃棄物の広域移動


 首都圏などの大都市圏では、土地利用の高度化や環境問題等に起因して、焼却炉などの中間処理施設や最終処分場を確保することが難しくなっています。そのため、廃棄物をその地域の中で処理することが難しく、一般廃棄物も産業廃棄物も、その多くが都府県域を越えて運搬され処分されています。
 平成14年度に首都圏の1都6県において排出された一般廃棄物のうち、最終処分されたものは237万tで、そのうち24万tが都県外に搬出され、さらにその6割強の16万tが首都圏外で最終処分されています。また、全国の市町村から都道府県外へ搬出された一般廃棄物の最終処分量は44万tで、首都圏はその5割強を占めていることになります。
 平成14年度に首都圏の都県において中間処理又は最終処分のために都県外に搬出された産業廃棄物の量は1,215万tで、このうち約5割の634万tが東京都から搬出されています。また、首都圏から他の圏域へ流出している量は、上記のうち165万tとなっています(1-3-5図)。

1-3-5図 首都圏の産業廃棄物の広域移動状況(平成14年度)→#604廃止


 特に中間処理目的で東京都から埼玉県、千葉県、神奈川県に移動している量が際立って多く、また、最終処分目的で移動した量としては埼玉県、神奈川県の県外搬出量が多いことから、東京都から都外に搬出された産業廃棄物は、隣接県で中間処理された後、更にほかの道府県に運搬されて最終処分されているものと考えられます。
 このような廃棄物の広域移動は、廃棄物を受け入れている地域で廃棄物が不法投棄されたり、それによる環境汚染が引き起こされたりした場合に、他の地域で発生した廃棄物を搬入することそのものに対する不安感や不公平感から、各地の地域紛争を誘発し、廃棄物の受入制限が進む結果となり、産業全般の景気回復・活性化の足かせになるとの懸念が広がっています。
 首都圏では、残余年数等の状況が示すように最終処分場の確保、特に産業廃棄物の最終処分場の確保が難しくなっており、その不足が廃棄物の地方等への広域移動の主因と考えられます。
 廃棄物の処理は、安全性や経済性を考慮すれば、できる限りその排出地域に近い所で行われることが望ましいことから、首都圏の状況にかんがみれば、減量化、リサイクルの推進等を図った上で産業廃棄物の最終処分場を確保することが重要です。特に土地利用が高度化している東京湾周辺においては、1つの都県で処理を完結することが困難であることから、2都県以上で一体的に処理することも必要です。


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